いつだって最先端
カレッタ汐留の展望台から地上に降りると、高層ビルが再びウサギとカメを取り囲み、その高さから二人を見下ろしていた。
「未来的な景色が目を引くけれど、このあたりには歴史の息吹も感じられるんだよ」と、カメは穏やかに話し始めた。
「たとえば、1872年に日本初の鉄道が走った新橋駅が復元されているんだ」と彼は続け、
二人は旧新橋停車場に向かって歩き出した。
「当時は西洋建築が珍しくて、日本初の鉄道ターミナルは時代の最先端だったんだ。そう考えると、この街は常に最先端を歩んでいるんだね」と彼は続けた。
「でもね、今日はもっと過去に遡ろうと思って」と、カメは意味ありげに微笑んだ。彼がウサギを誘ったのは、パナソニック汐留美術館で開催中の「テルマエ展」だった。
館内には、紀元前にローマ人によって作られた「テルマエ」に関する貴重な資料がズラリと並べられていた。
「これって2000年前のお風呂よね?思ったよりも古代人の生活って、今の私たちと変わらないのね。テルマエは今で言うならスーパー銭湯みたいだわ」とウサギは囁いた。
「図書館があるなんて羨ましいわ。お風呂と本さえあれば、一日中でもいられるもの」
彼女はテルマエの再現模型を見つめながら、その中で過ごす自分を想像してみた。
「テルマエは美術品を間近に見ることができる場所でもあったから、美術館付きとも言えるね」と、カメが静かに語った。
「テルマエには何でも揃っていたのね。でも一つ足りないものを見つけたわ。それはスイーツね!」ウサギは声を弾ませた。
「今日のお土産は何にしようかな?」
ウサギは、小川軒のレーズン・ウイッチを思い浮かべていた。
「洋酒の染み込んだレーズンと、たっぷり入ったクリームの組み合わせはまさに神だわ。お風呂上がりにいただいたら最高ね」
今日のウサギもとても幸せだった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?