水しぶきと夏の涼
静かな図書館の閲覧席で、ウサギが夢中になってページをめくっていた。時折、手を止めては、うっとりとため息を漏らしている。
「今読んでいるのはスイーツの本か、それとも涼しくなれる本だよね?」と、正面に座っていたカメが静かに声をかけた。
ウサギはびっくりして顔を上げた。
「どうしてそんなことが分かるの?当たりなんだけど…」彼女の手には水族館の本がしっかりと握られていた。
カメはそっと彼女の手を取ると、二人は図書館を抜け出し、そのまま電車に飛び乗った。気がつけば、二人はアクアパーク品川にたどり着いていた。
「見て!メリーゴーランドがあるわ」
館内に入るとウサギは目を輝かせて叫んだ。彼女の顔には、まるで子どもに戻ったかのような無邪気な笑みが浮かんでいた。
「足元まで花火だわ。素敵ね!」ウサギは声を弾ませながら言った。色鮮やかな花火が部屋中に煌めき、まるで二人の特別な瞬間を包み込むようだった。
「お魚と一緒に屋台を歩いているみたいね」彼女は水槽と花火に視線を向けながら、声を小さく弾ませた。
「ここはクラゲの世界ね。こんなに色が変わる水槽でクラゲは平気なのかしらね?」
夏祭りの余韻に浸りながら歩いていると、二人は水のトンネルにたどり着いた。
「見て!大きなマンタやサメがいるわ」
ウサギは笑みを浮かべながら、いたずらっぽく魚たちに挨拶を送った。
長いエスカレーターを登りきると、イルカショーが始まっていた。「一番前の席が空いているわよ」と、ウサギが嬉しそうに駆け出そうとすると、カメが慌てて止めた。
次の瞬間、イルカが元気よく着水すると、前の席はまるで豪雨の後のように水浸しになっていた。
ショーが終わり、ウサギは魚たちが泳ぐ水槽の前で、綿あめの入ったサンデーを楽しんでいた。「あの水しぶきを見ているだけで涼しくなったわ」と、彼女はカメを見つめて満足げに笑った。
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