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過去記事の中から、写真や文章の気に入っているものを紹介します。取っ掛かりとしてココを見て頂けるといいかもしれません。
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#写真日記

水槽の金魚の見えない壁

水槽の金魚の見えない壁

ぼくが喘息で通っている内科の病院には、水槽があって、魚が泳いでいる。

きれいだなぁ、といつも思う。ぼくにもまだ、きれいなものを素直にきれいだと思う心がある。

・以前、“水槽に入っている金魚”についての話を聞いた。
金魚たちが自由に泳いでいる水槽の真ん中に、透明の仕切りをつけて、向こう側に行けないようにしてしまう。
金魚たちは、透明の壁に気付かずに、何度も何度も壁にぶつかるそうだ。

その環境で

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いぬとぼくと幼稚園

いぬとぼくと幼稚園

小さい頃から犬と過ごしていた。
好きとか苦手とか思う暇もなく、犬のいる生活が普通だった。

僕は幼稚園が苦手で行きたくなかった。
今でもそうなんだけど、無秩序に大人数がワーッとなってる場所が当時から苦手で、特に誰かから嫌がらせをされたとか、意地悪をされているとかじゃなかったのに、行きたくなかった。

・幼稚園に行かない間、僕は何をしていたかというと、ウルトラマンのビデオを見ながら怪獣図鑑を眺めたり

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埃のかぶった思い出と

埃のかぶった思い出と

「そういえばアイツ、どうしてるのかなぁ」と、古い友達の顔を思い浮かべることがあります。

僕が思い出せる彼ら彼女らはまだ中学生や高校生で、アラサーになった姿を知りません。

・「そういえばアイツ、どうしてるのかなぁ」と、僕も思い出されたりしているのだろうか。

そんなことを考えてしまいます。

8月の後半から9月にかけて、人と会う機会がグンと増えました。

それはイベントだったり、撮影だったり、た

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『結局 雨が降る』

『結局 雨が降る』

・日が明けると、台風は僕の住む町から逸れた。

けれど、今回の台風は少し様子が違っていたみたいで、すぐにいつものような台風一過の晴天とはならず、しばらく不安定な天気が続いて、晴れたと思ったらまた強い雨が降ったりした。

・僕の地元、山梨県は山が多い。甲府盆地が有名だけれど、僕の住んでいる町も、見渡す限り四方に山がある。

こうして山に囲まれた町で生活をしていると、時々出会す「広い空」に惹かれる。

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『犬がいなくなってから』

『犬がいなくなってから』

・犬がいなくなったら、働こうと決めていた。

心身のバランスを崩して途方に暮れていた頃、愛犬の老いが目立つようになった。

もう、いつどうなるかわからない時期に入ったことを理解したら、僕は離れるのが寂しくなってしまって、一度全てを休んで、犬と過ごすことにした。

その生活をしているうちに、心に決めたことが一つだけあった。

お別れをしたら、外に出て働くこと。

犬はしあわせになるために我が家に来て

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5月の別れ

5月の別れ

“心配事や悲しいことがあった日はーー
子供の頃を思い出して心を慰めてきた
今夜もそうしよう"

映画“野いちご”のラストシーンで語られる台詞だ。

僕は今でも、小中学校の野球のことや、高校のハンドボールのことを思い出す。

良かったことも、悪かったことも。




カメラを買ったのが去年の9月だから、今はどの季節もカメラを持って迎えるのは初めてだ。

いい匂いのする季節、根拠のない期待に胸を

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自殺願望

自殺願望

不思議な夢を見た。

卒業式の当日、好きだった子が自殺したことを知らされる夢だった。

「死にたい死にたい」と思っていた僕はのうのうと生きて卒業式を迎え、病と闘いながら「生きたい」と願っていた彼女が遂に闘いに敗れ、自ら命を経ったという夢だ。




ーー実は、限りなく現実に近い夢だ。

現実には彼女は自殺なんかしていないし、卒業できなかったのは僕の方だった。




夢の中で、僕は

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野いちご

野いちご

昨日から体調が優れない。

心が疲弊している。よくあることだ。

こういうときには決まって学生時代の夢を見る。

小学校の先生が出てきて、僕は友達と野球をやっていた。

友達には“お迎え"の車が来て、一人、また一人と去っていき、ついに僕は独りでグラウンドに残される。




僕は今でも昔のことを鮮明に思い出す。

そんなとき、自分の“生"が惰性によるもののように感じられ、“今"に心が伴わない

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タクティクスってどんな匂い?

タクティクスってどんな匂い?

中学生の頃、氣志團にハマりはじめていた僕に、
ある日、母が「タクティクスってどんな匂いか知ってる?」と言ってタクティクスを買って来てくれた。
(氣志團・One Night Carnivalの一節に「風に香るTacticsが 俺の胸を締め付ける」という歌詞がある)




僕は好きな人のルーツを辿るのが好きなのだけど、キッカケはこのタクティクスだったような気がする。

疑問の持ち方をその時初め

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空のビン

空のビン

池の上陽水というアーティストがいた。

僕が大槻ケンヂさんのエッセイを読んで池の上陽水さんのことを知ったときには、既に亡くなられた後だった。

今にも消えてしまいそうな、弱々しくて暗い歌が多い。歌詞の世界も暗いけれど、ユーモアや皮肉やシュールさがあり、“井上陽水”っぽい。僕は池の上陽水というアーティストのファンになった。

「よろこびとカラスミ」というアルバムの中に、「空のビン」という曲がある。

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