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「助ける」つもりが、逆効果かも? 『人を助けるとはどういうことか 』

 あなたは、誰かを「助ける」とき、どんな気持ちでいますか?

 困っている人を放っておけない、力になりたい、そんな純粋な気持ちから手を差し伸べることもあれば、「私がいないとこの人はダメだ」という優越感や、「感謝されたい」「役に立ちたい」という承認欲求が心の奥底に潜んでいることもあるかもしれません。

 しかし、そんな「助ける」という行為が、実は相手を傷つけ、関係を悪化させているとしたら……?

 あなたは、良かれと思ってかけた言葉や取った行動が、実は相手の成長を阻害し、自立心を奪い、最終的には「あなたなしでは何もできない」という状態に追い込んでしまっているかもしれない、という可能性について考えたことはありますか?

 もし、心当たりがあるのなら、ぜひ『人を助けるとはどういうことか ―― 本当の「協力関係」をつくる7つの原則――』を読んでみてください。


依存を生む「偽りの親切」から脱却し、真の協力関係へ

 本書は、私たちが日常的に行っている「助ける」という行為の本当の意味を問い直し、真の協力関係を築くための具体的な方法論を提示してくれる一冊です。

 著者のエドガー・H・シャインは、MITスローン経営大学院の名誉教授であり、組織心理学の分野で世界的に著名な研究者です。彼は、長年にわたる研究と実践を通じて「助ける」という行為が、実は非常に複雑で繊細なものであることを明らかにしました。

 シャインに曰く「助ける」という行為は、時に「依存」という思わぬ落とし穴を招く、と書かれています。良かれと思って与えたアドバイスや過剰なサポートは、一見すると親切に見えますが、実は相手の自立心を奪い、問題解決能力を低下させてしまう可能性があるのです。

 例えば、子供が宿題で困っているときに、すぐに答えを教えてしまう親。それは一見、子供の助けになっているように見えますが、実は子供が自分で考える力を奪い、親への依存心を高める結果につながるかもしれません。

 また、職場で部下がミスをしたときに、上司が代わりに問題を解決してしまう。それは一見、部下を助けているように見えますが、実は部下が自分でミスに向き合い、そこから学ぶ機会を奪っているのかもしれません。

 このように「助ける」という行為は、時として「依存」という負の連鎖を生み出し、相手を弱くしてしまう可能性があるのです。

真の「助ける」とは、相手を信じること

 では、真の「助ける」とは一体どういうことなのでしょうか?

 シャインは、それを「相手を信じ、その人が持つ可能性を引き出すこと」だと定義しています。それは、相手に寄り添い、共に考え、共に成長していくプロセスであり、決して一方的な「施し」ではありません。

 真の「助ける」は、相手を尊重し、その人の自立を促すものであり、結果として、より強固な信頼関係を築くことにつながるのです。

7つの原則で、あなたの「助ける」が変わる!

 本書では、真の協力関係を築くための7つの原則が、具体的な事例を交えながら詳しく解説されています。

  1. 両者の準備ができていること 相手も自分も、本当に助けを求め、助けたいと思っているのか? お互いのニーズや状況を理解し、協力関係を築く準備ができているかを確認することが重要である

  2. 支援関係が公平であること どちらか一方が優位に立つのではなく、対等な関係を築けているか? 互いに尊重し合い、意見交換ができる関係であることが大切である

  3. 支援者が適切な役割を果たしていること アドバイスをする「専門家」ではなく、共に歩む「伴走者」としての意識を持っているか? 相手の話をじっくり聴き、共感し、励ますことが重要である

  4. 言動が人間関係の将来に影響を与えること 何気ない一言が、相手の人生を大きく左右する可能性があることを自覚しているか? 相手の心に寄り添い、言葉を選びながらコミュニケーションをとることが大切である

  5. 純粋な問いかけがスタート 「なぜ?」「どのように?」と、相手の考えや気持ちを深く理解しようとしているか? 一方的なアドバイスではなく、対話を通じて共に解決策を探ることが重要である

  6. 問題を抱えているのは当事者 問題の解決策は、相手自身の中にあることを尊重しているか? 相手の力を信じ、解決に向けて主体的に行動するよう促すことが大切である

  7. すべての答えを得られない 支援者も完璧ではないことを認め、共に答えを探求する姿勢を持っているか? 謙虚な姿勢で、相手と一緒に学び、成長していくことが重要である

 これらの原則は、一見するとシンプルですが、実践するのは容易ではありません。なぜなら、私たちは無意識のうちに、相手をコントロールしようとしたり、自分の価値観を押し付けようとしたりしてしまうことがあるからです。

 しかし、本書を読むことで、あなたは「助ける」という行為の本当の意味を理解し、これらの原則を意識的に実践できるようになるでしょう。そして、それは、あなたの人間関係をより豊かで実りあるものに変えるきっかけとなるはずです。

この本が、あなたの人生を変えるかもしれない

『人を助けるとはどういうことか』は、ビジネスリーダーやマネージャーだけでなく、教育者、医療従事者、家族や友人との関係に悩むすべての人にとって、必読の書と言えるでしょう。

 この本は、単なるハウツー本ではありません。それは、あなたの人生を豊かにし、より良い人間関係を築くための、一生の宝物となるはずです。

 ぜひ、この本を手に取って、あなたの「助ける」を、そしてあなた自身を、変えてみませんか?
 この一冊が、あなたの成長と変化のきっかけとなることを願っています。

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