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兵士のために開かれた『戦地の図書館』/モリー・グプティル・マニング

 こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

 本好きのあなたへ。

 想像してみてください。

 銃声が轟き、爆弾が投下される戦場。

 兵士たちは、恐怖と不安、そして孤独に苛まれながら、明日をも知れぬ日々を過ごしています……。

 そんな極限状態の中で、彼らを支えたものの一つが、なんと「本」だったのです。

『戦地の図書館』は、第二次世界大戦中にアメリカで行われた、兵士たちへ本を届ける一大プロジェクト「勝利図書キャンペーン」の真実の物語です。

 図書館員たちは、本の収集、選別、梱包、発送という地道な作業を続け、1億4千万冊もの本を戦地に送り届けました。

 戦地では、兵士たちが図書館で本を借り、読書に没頭する姿が見られました。

 なぜ、戦場で本が求められたのでしょうか?


背景

 1940年代、ナチス・ドイツは検閲や焚書によって書籍を排除し、思想統制を強めていた。これに対抗し、アメリカでは「知識こそが自由への鍵である」という信念のもと、図書館員たちが中心となって、兵士たちに本を届ける「勝利図書キャンペーン」という一大プロジェクトを立ち上げた

勝利図書キャンペーンはこんなものだった!

  • 本の収集 全国各地の図書館や家庭から、1,800万冊もの本が寄付された。図書館員たちは、これらの本を選別し、戦地に送る準備をした

  • 兵隊文庫の誕生: 軍と出版業界は協力し、軽量で安価なペーパーバック「兵隊文庫」を発行。これは、戦地での読書環境を考慮し、持ち運びやすく、耐久性に優れた軍事用文庫

  • 本の輸送 寄付された本や兵隊文庫は、船や飛行機で世界中の戦地に届けられた。図書館員たちは、輸送中の本の紛失や破損を防ぐため、梱包方法や輸送ルートの工夫を重ねた

  • 戦地での図書館サービス 前線基地や病院船には、図書館が設置され、兵士たちは自由に本を借りることができた。図書館員たちは、兵士たちの読書相談に応じたり、読書会を開催したりと、心のケアにも貢献

 本のなかでは、戦時下で兵士たちの心の支えとなった本が、どのようにして戦地に届けられたのか、その裏側にある図書館員たちの情熱や苦労、そして本が兵士たちにもたらした影響などを、詳細な資料やインタビューを基に描いています。

 本書では、戦時下の図書館員たちの奮闘や、本を待ち望む兵士たちの声が生き生きと描かれています。爆撃の合間を縫って本を読む兵士、病院船で慰問図書館を開く図書館員、そして、最前線で兵士たちを励ますために自らも危険を顧みず本を届ける人々。彼らの物語は、本の持つ力を改めて認識させ、戦争という極限状態にあっても希望を失わない人間の強さを教えてくれます。

 戦地で読まれた本の種類も実に多岐にわたりました。古典文学、歴史書、哲学書、詩集、ミステリー、西部劇、恋愛小説、漫画、雑誌など、あらゆるジャンルの本が兵士たちの手に渡りました。兵士たちは、本を通じて故郷を思い出し、知識や教養を深め、明日への希望を見出しました。

「勝利図書キャンペーン」は、第二次世界大戦中に約1億4千万冊もの本を戦地に送り届けた、史上最大の図書作戦となりました。この取り組みは、戦後アメリカ社会における図書館の重要性を高め、読書文化の普及に大きく貢献しました。

 これ、本が持つ力を改めて認識させ、図書館の役割や読書の重要性を再考させてくれる一冊です。

 戦争という悲惨な状況下で、本が人々に与えた希望と勇気を伝える感動的なノンフィクション作品として、ぜひ多くの人に読んでいただきたいと思っています。

感想

 戦争という過酷な状況下で、本が兵士たちにとってどれほど大きな意味を持っていたのかを深く実感しました。

 戦地での生活は、想像を絶する過酷さだったと思います。

 しかし、そんな中でも兵士たちは本を求め、読み、そして心の支えとしていました。それは、本が単なる娯楽ではなく、知識や教養、癒し、そして希望を与える存在だったからでしょう。

 図書館員たちの献身的な活動にも心を打たれました。彼らは、本の収集から選定、梱包、発送まで、あらゆる面で尽力し、兵士たちに本を届け続けました。その情熱と行動力には、ただただ頭が下がる思いです。

 また、兵隊文庫という、戦地での読書環境を考慮して作られた軽量で安価なペーパーバックの存在も印象的でした。戦時下という厳しい状況下でも、本を届けるための工夫が凝らされていたことに感銘を受けました。

 この本を読んで、改めて本の持つ力を再認識しました。

 本は、知識や情報だけでなく、感情や思考を豊かにし、生きる力を与えてくれる存在です。そして、図書館は、そんな本との出会いを提供してくれる貴重な場所であることを改めて感じました。

『戦地の図書館』は本が持っているポジティヴな力の展開ですが、戦時下の日本において士気高揚のための国策文学(火野葦平や丹羽文雄、林芙美子)が作られたのも事実……。アルチュセールの翻訳者で知られる西川長夫は、本も文学も作家も全て国家のイデオロギー装置だと指弾しました。

 一方で、スーザン・ソンタグのように包囲されたサラエボでベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』を上演させた好例もあり、文学と戦争は近い磁場にあることを改めて認識させられました。

 戦争という悲惨な出来事を通して、本の持つ力を浮き彫りにしたこの本は、本好きの方にはもちろん、歴史や戦争に興味のある方、そして困難な状況下で希望を見出す物語を求める方にもぜひ読んでいただきたい一冊です。

読書は心の癒し、戦地で証明された本の力について書かれています

【編集後記】
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