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Art & Culture

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#アート

アルゼンチン画家キンケラ・マルティンが船に馳せた想いとは何か(#68)

アルゼンチン画家キンケラ・マルティンが船に馳せた想いとは何か(#68)

アルゼンチン・ブエノスアイレス/ボカ地区という場所

皆さんは「ボカ・ジュニアーズ」というサッカークラブをご存知でしょうか。
1905年に創設されたアルゼンチンのサッカークラブで、数多くの熱狂的なサポーターに今なお愛され、これまでアルゼンチン国内で獲得したタイトルは数知れず、国際大会でも名を馳せた強豪クラブで、かつてはマラドーナなど有名選手も多数在籍していました。
“ボカの若者たち”という意味のチ

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料理ではない貝の楽しみ方~貝は英語でShellという(#66)

料理ではない貝の楽しみ方~貝は英語でShellという(#66)

上の絵はルネサンス期に活躍したサンドロ・ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』である。

ヴィーナスは貝殻の上に立っていて、ヴィーナスは海から誕生したことを象徴的に表した絵だ。

そういえば1989年に武田久美子さんの写真集『My Dear STEPHANIE』で披露されたホタテの貝殻で出来た“貝殻ビキニ”が当時大きな反響を呼んだ。

そんな縁と番組の企画もあって2014年ノーギャラで北海道紋別市の

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北朝鮮の“ゴミ”が近隣国にとって“宝”になる可能性を秘めているわけ(#62)

北朝鮮の“ゴミ”が近隣国にとって“宝”になる可能性を秘めているわけ(#62)

アートとデザインの間にある違いは平たくいえば「用途があるかどうか」である。

後者はそれがあるものを指す。

ところで浮世絵はアートなのだろうか、それともデザインだろうか。

今ではアートかもしれない。

ただ、元々はその枠に当てはまらなかった。

アートやデザインといった概念は西欧由来のもので、江戸時代にはそんな概念がなかったからである。

そもそも浮世絵は何だったのか?

新聞だった。

そし

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方干民(方幹民)はなぜ晩年に風景画を描いたのか(#61)

方干民(方幹民)はなぜ晩年に風景画を描いたのか(#61)

今度はモネの絵画に赤い塗料が塗られたというニュースが舞い込んできました。

この手のニュースについては以下で記事にしてみましたが、最近は別のことが気になり始めています。

少し想像してみてください。

もし作品が突発的に汚されたらどうなるでしょう。

すぐに捕まえられる気がしませんか。

なにせ器物損壊、つまり犯罪ですから。

その後すぐに警備員が来たのかはニュースを見る限りではわかりませんが、わ

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“環境活動家の芸術作品への攻撃”が、ただの自己満どころか「確実に失敗だ」と確信するいくつかの根拠(#60)

“環境活動家の芸術作品への攻撃”が、ただの自己満どころか「確実に失敗だ」と確信するいくつかの根拠(#60)

4月末日、アメリカの首都ワシントンにある国立美術館にて環境活動家二人がエドガー・ドガのワックス製彫刻作品『14歳の小さな踊り子(La petite danseuse de quatorze ans)』にペンキが塗られるという事件がありました。

北米では初めてですが、英語圏で最近頻発している環境保護団体の抗議スタイルのひとつです。

彼らの主目的は「環境保護」に関するものであるはずなのに、その目的

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看书:『美術の経済学』(#57)

看书:『美術の経済学』(#57)


あなたには“どんな名前”があるか美術市場で作品が流通する手段は2種類あるといわれています。
ひとつがプライマリー・マーケット(一次流通)で、もうひとつがセカンダリー・マーケット(二次流通)、その違いは「流通しやすさ」であり、その基準はアーティストの「名がどのくらい知られているか」が肝です。
たとえばギャラリーの方がアーティストより知られた存在ならばギャラリーで流通させた方が効率的ですし、逆にアー

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“異性がよく分からない”と“アートは分からない”はほぼ同義な件(#51)

“異性がよく分からない”と“アートは分からない”はほぼ同義な件(#51)

「アート」というジャンルでnote内の記事見出しを斜め読みしていたら、やはり「アートってよく分からない」といった内容について書かれているものが多い印象を受けました。
実は私も以前自発的にそのテーマで書いたのですが、「難しいのかな」とも感じております。

他人と自分の理解レベルをどう調整するかは何もこうした記事作りに限ったことではありませんが、どのくらい噛み砕くべきか、中々客観視し難く課題が付き纏い

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モナ・リザはなぜ“マドンナ”的存在から、彼女自身の想像を遥かに超えた存在になったのか(#50)

モナ・リザはなぜ“マドンナ”的存在から、彼女自身の想像を遥かに超えた存在になったのか(#50)

ひょんなことからモナ・リザについて調べていたところ面白いジャケットをみつけました。

この作品はアメリカのラップミュージックでジャケットの見た目通り、タイトルは『Mona Lisa』です。
普段ラップを好んで聴きませんが、古レコード店で見つけたならきっと“ジャケ買い”していたと思います。
観光地で観光スポットに飽きることがあるのですが、そのときよく足を運ぶ場所がローカルの古書店、古レコード店、古着

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ブラジル人画家イスマエル・ネリが“それでも”人物画をモチーフにし続けた理由(#49)

ブラジル人画家イスマエル・ネリが“それでも”人物画をモチーフにし続けた理由(#49)

下の絵に描かれている人物が誰であるか、御存知な方は多いのではないでしょうか。
トレードマークであるざんぐり頭に丸眼鏡、鼻下のちょび髭で装ったのは御馴染み、藤田嗣治(レオナール・フジタ)です。

”教授”こと、作曲家坂本龍一の風貌はどこか藤田を彷彿とさせると感じるのは私だけでしょうか。
しかしながら、藤田の装いを再現できる人はそれだけで何かセンスのようなものを感じさせます。

閑話休題、この絵を描い

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“Pitaya”はなぜ“ドラゴンフルーツ”と呼ばれるようになったのか?(#48)

“Pitaya”はなぜ“ドラゴンフルーツ”と呼ばれるようになったのか?(#48)

フリーダ・カーロ『Pitahayas』から抱いたある疑問前回#47の記事でフリーダ・カーロが描いた静物画について触れました。
そのひとつが作品名『Pitahayas』です。

“Pitahayas” by Frida Kahlo

“Pitahayas”はスペイン語で、英語の“Pitaya”の複数形に当たります。
このフルーツは日本でも沖縄や奄美大島などで栽培されていますが、流通する多くは輸入品で

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フリーダ・カーロはどうして最期に“スイカの絵”を描いたか(#47)

フリーダ・カーロはどうして最期に“スイカの絵”を描いたか(#47)

みなさんが「海外」と聞いたとき、初めにどの場所を思い浮かべますか?
アメリカ西海岸、パリのエッフェル塔や凱旋門、あるいは雲一つない地中海気候のバカンス風景といった洒脱な景観か、それともモンゴルの大草原、アフリカのサバンナやブラジルのアマゾンといった大自然でしょうか。
多くがアメリカやヨーロッパなどの白人文化圏を想像する傾向が強く、また言わずとも文脈から暗示的にその地域を示唆しているケースが多い気が

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影法師でありながら著名なバンクシーと日の目をみた朝倉未来(#45)

影法師でありながら著名なバンクシーと日の目をみた朝倉未来(#45)

RIZIN28の記事を作成してから、ひと月近く経ってしまいました。
特別朝倉未来選手のファンではないのですが、彼の言動には興味を持っています。
事実、日本格闘技界において発言力のある一人であります。
そのためか味方だけでなく敵も多いようです。

皆、彼の何に惹き付けられているのでしょうか。

彼はいわゆる「不良」でしたが、正義感の強さだったり、義理を重んじるタイプだったりすると同時に、どこかしら発

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格闘技と芸術が兄弟だった件について(#42)

格闘技と芸術が兄弟だった件について(#42)

昨日元K1チャンピオンの魔裟斗さんと前RIZINバンタム級チャンピオンの朝倉海選手がコラボレーションした動画がYouTube上に双方のチャンネルよりアップされていました。
その魔裟斗さん側のチャンネルで縄跳びをしている部分がありました。

このシーンで魔裟斗さんはこのような趣旨の発言をしていました。

ロープ(=縄跳び)はリングのステップワークに繋がる。

確かに古くから行われている練習法で、実際

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“絵画が分かる”とは“『裸の王様』の服が分かる”と言っているようなもの(#42)

“絵画が分かる”とは“『裸の王様』の服が分かる”と言っているようなもの(#42)

先頃、ふと思い出したかのようにこのようなツイートをしてみました。

きっかけはとある抽象画を制作するアーティストの呟きからでした。

簡単にまとめるとこんな感じです。

都内某所で貸し画廊(アーティスト自身がお金を払ってイベントスペースに作品を展示するビジネスモデルを持つ画廊)に出展している作品を観に来た「美術品愛好家風」のおじさまが(おそらく)アーティスト本人に向けて、こう言ったそうです。

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