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モナ・リザはなぜ“マドンナ”的存在から、彼女自身の想像を遥かに超えた存在になったのか(#50)

ひょんなことからモナ・リザについて調べていたところ面白いジャケットをみつけました。

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この作品はアメリカのラップミュージックでジャケットの見た目通り、タイトルは『Mona Lisa』です。
普段ラップを好んで聴きませんが、古レコード店で見つけたならきっと“ジャケ買い”していたと思います。
観光地で観光スポットに飽きることがあるのですが、そのときよく足を運ぶ場所がローカルの古書店、古レコード店、古着屋です。
そこで「宝」を探します。
一時的な滞在先でそんな「宝」をみつけたら、一層深い「縁」のようなものを感じるからです。

そんな具合でモナ・リザ調べに勤しんでいたら、存外発見があることに気づかされました。

“二人”のモナ・リザ

madonnaを省略するとmonnaになるそうですが、この絵画ではmonaという綴りが一般的だそうです。
madonnaはカタカナの「マドンナ」ですが、「ミセス」のニュアンスも込められています。
モデルの名前はリザ・デル・ジョコンド(Lisa del Giocondo)ため、彼女の名字からラ・ジョコンダ (la Gioconda)と称される場合もあるようです。
※Laは女性名詞の冠詞

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“モナ・リザ”

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“アイルワースのモナ・リザ”

モナ・リザは一番有名な上の絵以外にもいくつかあります。
アイルワースのモナ・リザもそのひとつですが、実はそれ以外にもダ・ヴィンチの弟子が絵描いたものなども残っており、現在でも多方面から議論が進行中です。
いずれにしても、リザ女史も当時、自分の肖像画が後世にこれほどまで人々を惑わしている続けることなど想像だにしていなかったのでしょう。

“既存芸術”の象徴としてのモナ・リザ

「芸術とは何か?」そう問われたとき、「○○なもの」のように具体的な答えがあることは、逆をいえば「○○なもの」のようでなければ芸術ではない(芸術とは「○○なもの」のようでなければいけない)とも言い換えが可能です。
これはやや抽象度が高いので、図解してみます。

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木(=tree)で例えてみます。
ヒノキもサクラも共に「木」です。
しかし、”芸術”も本来「木」同様のヒノキでもサクラでもいいはずだったのに、比較的狭い定義で縛られていました。
そのため19世紀後半から“Anti”という概念と結び付けて既存概念を打ち破る試みが出てきたのです。
哲学を少し御存知の方であれば、ヘーゲルの弁証法的なものと察しがつくかもしれませんが、芸術と反芸術が昇華して“芸術”になっているから分かり難いのかもしれません。
特に20世紀、第二次世界大戦後にはその広い”芸術(Art)”に対して”○○アート”といった”○○”という形容詞をつけ細分化して表現したため、各々何か特殊な感じがあるような錯覚を生じさせてしまいました。
しかしながらそれは錯覚で、「何でも芸術(芸術品、アート作品)になれる」というのが本質です。
日本での美術の授業等で時々、「○○でなければならない」といった指導者の声が上がるのは、上図の青丸と紫丸の間で理解が混乱しているからでもあります。
そもそも画家(アーティスト)が作りたいのは作品であり、個人的見解なのです。
要するに定義より意見を尊重しようということかもしれません。
これは様々な問題と共通です。

そんな「芸術とは何か?」に対する青丸の答え(定義)、この既存芸術の象徴的存在として活用されたのが『モナ・リザ』でした。

その先駆け的作品が1883年の“Sapeck”ことウジェーヌ・バタイユの『微笑』です。
彼はモナリザにパイプをふかせました。

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Le Rire/Eugene Bataille(1883)

その後も同様に題材として使われ続けました。
デュシャンは既製の絵はがきに髭を書き加え、作品として発表します。
その後、1965年版を最後に、同題名で発表したのは合計8回です。
ダリはより明確的に「モナリザ」に扮しました。
作品の中でその手に握られせたのはお金です。
これは芸術が資本主義に呑み込まれているのを皮肉ったようにもみえます。

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L.H.O.O.Q./Marcel Duchamp(1919)

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A Paragon of Beauty/Salvador Dali(Photo by Philippe Halsman)(1954)

またボテロに至っては、モナ・リザの構図に画風に当てはめるという、デュシャンやダリとも違う面白い試みです。

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Mona Lisa/Botero(1978)

バスキアもダリと同様、「お金」と関連させていますが、背面の文字「FEDERAL RESERVE NOTE(=連邦準備債、つまりお札)」の通り、お札の象徴としてモナ・リザを描いています。

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Mona Lisa/Jean-Michel Basquiat(1983)


その他も様々な角度から『モナ・リザ』を活用した作品がありました。
比較的一般的なものばかり取り上げてしまいましたが、やはりどれもリザ女史の想像を遥かに超えた広がりをみせたのではないでしょうか。

彼女は我々を魅了し続ける、素敵な女性です。

きっとその“片想い”はますます募り、我々を悩ませるのかもしれません。

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