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素敵なコンテンツの集い

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素敵な記事を勝手ながら集めさせていただきます! いつも心が揺れるような投稿をありがとうございます(´∀`*) 迷惑でしたらお手数ですがお声がけいただけると幸いです🙇‍♂️
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記事一覧

【掌編小説】ボクたちはナンバーワンでもオンリーワンでもなかった

【掌編小説】ボクたちはナンバーワンでもオンリーワンでもなかった

 晩秋の夕方は短い。
 ボクが下宿先に帰ろうと大学を出た頃には、既に空は暗くなっていた。
 駅までの道程では、昔から学生向けに営業をしている喫茶店や古本屋が、チェーンの牛丼屋やカレー屋と軒先を並べている。店先で明るいオレンジ色や赤色が目立っているのは、ハロウィーンやクリスマスに向けての装飾のようだ。
 楽しそうに大声で笑いながら数人の男たちが居酒屋に入っていく。アルコールを呑む前から意気揚々の様子

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わさび

「またぁ? 何人めよ、もう」

 いい加減うざい、という顔で、晴菜がこちらを見た。ちらりと横目で確認しつつ、今日二つ目の玉子をレーンから取る。

「でも、合わなかったんだもん」

 醤油にわさびをたっぷりと溶かして(さっきも溶かしていたのに辛くないのだろうか)、玉子に巻かれた海苔を丁寧に箸で剥がす。まず海苔を醤油に浸す。それから玉子の内側も。またやってるよ、とじろじろ見ながら、あたしは言う。

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エッセイ)DB攻略マニュアル

エッセイ)DB攻略マニュアル

たまには、お役立ち記事を書こうと思います。
世の中には、太っている男性(以降DB)と仲良くなりたいけど、なかなか扱いが難しくて悩んでいる女性も多いんではないでしょうか?そんな悩める女性の助けになればと今回の記事を書く事にしました。

コンパなんかで、気になるDBに
『彼女いるんですか?』って聞くと
『俺、太ってるからモテないんだよねぇ』って
返ってきたりしませんか?
これに対して多くの人は、

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羽を描き、空に踏み出し、いざ転職。

羽を描き、空に踏み出し、いざ転職。

こんばんわ、キリイチです。

今日は料理や小説ではなく、私の本業についてお話させて頂こうと思います。
なぜ本業を記事にしたかと申しますと、私が27歳にして、初めての転職に踏み出すからです。
退職届が受理され、8月末をもって現在の仕事辞めることとなりました。
これまでの仕事の経緯とこれからの展望についてを私自身の備忘録として書いていきますので、興味のある方はどうぞ覗いていってください。

①就活時の

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『大人だって読みたい!少女小説ガイド』嵯峨担当作品リスト

『大人だって読みたい!少女小説ガイド』嵯峨担当作品リスト

嵯峨景子・三村美衣・七木香枝編『大人だって読みたい!少女小説ガイド』(時事通信出版局)告知第二弾です。私がレビューを担当した作品リストを一足先に公開します。諸々調整の結果、最終的には当初の予定よりかなり増え、93作品担当することになりました。私は「少女小説の人気作ヒット作を取り上げる」、「最新の作品を入れる」、「偏愛作品を紹介する」を柱に作品を選んでいます。数が多いので、レーベルごとにわけてご紹介

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【詩】ヨルとヒカリとキミとボクと

【詩】ヨルとヒカリとキミとボクと

高台から見下ろした夜の街は 
月星が輝く夜空を地上に移したかのようだ
綺麗だねと君は無邪気に喜ぶけど
自分が消えてしまうようで僕は怖くなるんだ

光を放つことができるのは 君のような人だ
自分の中に輝きを持つ 恒星のような人だ
輝きを持たない僕が あの街に一人でいたとしても
きっと黒く塗りつぶされた部分のどこかにだろう

純粋で透明だと言われた昔の僕は
今では濁って不透明になったみたいだ
これまで

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【掌編小説】僕が知らなかったことと知っていること

【掌編小説】僕が知らなかったことと知っていること

 僕は知らなかった。
 一目惚れというものが、本当に存在することを。

 一目惚れなんて、実際にはあるはずがない。そりゃ、女の子を見て「可愛いな」と思うことはあるかもしれないけど、相手の性格や趣味なんかをよく知りもしないのに、突然恋に落ちるなんてあるはずがないじゃないか。それは、登校時に曲がり角でぶつかった美少女が実は自分のクラスの転校生だったとか、自分が知らないうちに親が決めていた許嫁が前触れも

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青いキャンバス

青いキャンバス

 砂利道には、薄いスニーカーで歩くとときどき足裏が痛い程度に石ころが転がっていた。行く手の地平線の先に眩しい太陽が光っていて、帽子を目深に被り直す。走って横を追い越していくひと、同じ速さで歩いていくひと、しゃがんで沿道の小さな花を見つめているひと。そこまで見て初めて、沿道に花が咲いていることに気がつく。

 世の中、見えていないことばっかりだなあ。

 わたしはのんびりと歩く。風が気持ちいい。どこ

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生き方をデザインする。

生き方をデザインする。

子供の頃、1度はこんな妄想に耽ったことはないだろうか。

「もし、魔法が使えたのなら」
「もし、私に秘められた才能があったなら」
「もし、白馬の王子様に求愛されたなら」

恥ずかしながら、私も幾度となくそんな事を妄想していた時期はある。
そんな思春期を乗り越え、一旦落ち着いたかと思いきや、社会人になって大多数の大人がこの妄想病を再発させるのだ。

自分の思い描いた理想とは程遠い生活、淡々と過ぎてい

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深夜の独り言 23

深夜の独り言 23

大学で、対面授業が始まりました。初めて会うひとたちと肩を並べて授業を受けることはとても新鮮で、でもそうだ、学校ってこういうところだったなと思い出します。一緒に勉強する仲間がいて、教えあって。毎日のように、他人とご飯を食べる。朝起きたら支度をして、今日一日頑張るぞ、と思いながら家を出る。帰ってきたら、こんなことがあった、あれが楽しかったと思い出す。

夜眠る前に、今日を振り返ると、ああ疲れた、でも楽

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月夜の口紅 エピローグ

月夜の口紅 エピローグ

月夜の口紅 1/4

 冬場は日が暮れるのが早い。住野くんが小さなあくびをして、もう外真っ暗じゃん、と呟いた。交換ノートを閉じて立ち上がる。

「そろそろ昇降口閉まるから早く帰りなよ」

 嫌がる住野くんを急かす。ボールペンを、かち、かち、かち。

「わかったよ、帰ればいいんでしょ。帰るから怒らないでくださいよ」

 住野くんは出していた筆箱と裏紙の束を鞄に詰め込んで、きいと音を立てながら椅子を引

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【詩】コントラディクション

【詩】コントラディクション

死んでしまいたいとは思わないけど

誰ともかかわりたくはない

できる限り世界に触れぬよう

僕が透明な球となったら

君は「朝露のように綺麗だ」と言ってくれるだろうか

アリガトウを音にし続けること

アリガトウを音にし続けること

                                                                              

大切だから

無関心ではいられず

                                                                              

大切だから

より強く痛み

       

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【短編小説】塩を入れる。そして砂糖をぶち撒ける。

【短編小説】塩を入れる。そして砂糖をぶち撒ける。

 
 カタン。

 紅音は塩を煮物に入れ、それを元の場所に戻す。
 それが運悪く、隣に置いてあった砂糖に指が当たった。
 その拍子に、塩と砂糖の入れ物がガシャンと床へ落ちる。

 キッチンに敷かれたカーペットが真白くなり、私は慌てて腰をおろした。
 紅音はしゃがみこんだまま、「えっとえっと」と戸惑うように呟く。

 口はあわあわと忙しなく動くが、目はじっとその白くなった床をじっと見つめている。
 

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