ネムキリスペクト

Under Dawn, Over Night

Under Dawn, Over Night

「先生ー! 先生ー!」  まだ声変わりしていない、神経に響く高さの声で喚き散らしながらこちらにやってくるのは、サヌキであった。声は興奮で上ずっているのに、足取りはいやに慎重だ。マルガは書き物の手をとめ、履物をつっかけて外に出ると、サヌキの方に近付いていった。 「なんだなんだ。いつもならすっ飛んでくるのに」 「先生、大発見ですってば」  サヌキは紙の束のようなものを両手に乗せていた。村で飼っている鶏の卵を運ぶ時のように大事そうにしている。 「お前、また遺跡に行ってきた

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白い糸

白い糸

絹のようになめらかで 透き通っていながら 弱さを見せない君 みずうみはどこまでも深く青い 流れる糸を 辿る   さらさらと 白くこぼれて  涙が落ちたら かき乱れて   芯があるのに滑らかで すべてを拒むことはない しなかやな強さのあなた 海は空をうつしこむ鏡 流れる糸を 辿る  さらさらと 白くこぼれて  涙が落ちたら ひとつになれる 約束しよう  源は同じ 水は沢をひたすらに進む 細く太くうねりながら 数多の熱と冷たさをくぐり抜けて いつかまたきっと 固く結び合える

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Go to hell.【BL短編小説】

Go to hell.【BL短編小説】

 地元密着型のウチのイタリアンが、一日の中で一番、混雑するランチの時間帯。  店のウェイターとして、初めてフロアに立ち、客を捌く若い男の姿はなぜか人の目を惹いた。ひょろりと痩せていて短髪、肘まで捲った白い長袖シャツと黒パンツにギャルソンエプロンを纏い、胸には「畑中(ハタナカ)」と手書きの名札が留めてある。調理師兼ウェイターとして雇うことにしたのだが、ウェイターとしては充分な実力がありそうだ。  主な客は近所の常連という店だけれど、お試しにメニューに加えたカレーうどんが大当たり

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【懐中電灯】眠れぬ夜の奇妙なコメント師と次回テーマ
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【懐中電灯】眠れぬ夜の奇妙なコメント師と次回テーマ

NEMURENU40th【懐中電灯】には多くの方がご参加下さりありがとうございました。眠れぬ夜に集まる魑魅魍魎。眠れぬ夜の奇妙なコメント師。この度もまとまりました。コメント師の皆様ありがとうございます! NEMURENU40th【懐中電灯】解題はこちら 眠れぬ夜の奇妙なコメント師とは・・・ 「偏れ!」 愛は独善。愛は独断。愛に理論も方法論もない。理屈抜き大いに語れ。愛に日和見など無い! (批判はだめです。) それでは今月の眠れぬ夜の奇妙なコメント師、暗夜のエンターテイ

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【懐中電灯】NEMURENU40th解題

【懐中電灯】NEMURENU40th解題

とうとうNEMURENUも40回!つまり40ヶ月ですよ! 40ヶ月前はまだ髪の毛もございましたし、動けば体重も減りましたし。生命の活力に満ちておりましたねえ。最近はあちこち白髪も生え始めまして。目も霞む。40ヶ月かあ…。 そんな40ヶ月の年月に光を当てる懐中電灯。隠れていたものが涌いてくる。部屋の隅に蟠る魑魅魍魎は出ておいで! 世の中を明るく照らす20作品をお楽しみ下さい!NEMURENU第40集。テーマは懐中電灯でお送り致します! 目次00 A-KANJI-UN y.

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短編小説 『田舎はこんなもん』
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短編小説 『田舎はこんなもん』

 集落を囲む山々の稜線に、細長い建物がへばりつくように建っている。建物は尾根伝いに長く延びて、ちょうど集落のある盆地を縁取るように一周している。一見すると万里の長城みたいな壮大さもあるから、これはきっと重要な文化遺産だとか宗教的な建造物じゃないかと思われる。でも実際は、バブル末期に着工して一応は完成したが運営会社の倒産によって営業を開始する事もないままに朽ちていく、やたら長大なホテルの廃墟だった。 「もったいない……」 その長大な廃虚を間近にして私が思わずつぶやくと、すこし

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14 冥界魂沈め素描

14 冥界魂沈め素描

ふと気がつくと、ひっそりと闇に沈んだ、どことも知れぬ街の夜道をわたしは歩いておりました。 人気のない細く曲がりくねった道の両側には、古びた町家がぽつぽつと並んでおるのが闇夜なのになぜかはっきりと分かり、そうして、月も星も見えぬ夜半特有の、ねっとりとした暗がりの気配が肌に絡みついてくるものですから、胸の奥がうずくような、心細い気持ちが湧き上がってきたのでございます。 怖じけづいて、思わず駆け出したくなるような心を諌めながら、わたしは一歩一歩足を進めました。 すると、どこと

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心の懐中電灯

心の懐中電灯

ある所に、雨の妖精さんがいました 彼女は雲の上に座りながら ぼんやりと浮かない顔をしています 心配になった雲の妖精さんが 彼女の顔を見上げながら聞きました 「雨の妖精さん、どうしたの? 浮かない顔をしているね」 雨の妖精さんは、椅子だと思っていた雲が 雲の妖精さんだった事と、急に声をかけられた事で 少し驚きましたが、おもむろに口を開きました 「あのね、わたし、嫌われてるみたいなの。。」 雲の妖精さんは驚きました 「え!?そうなの!? 誰が、そんなひどい事をするん

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短編小説「複眼」

短編小説「複眼」

浜辺で金草履を片方見つけたと聞いた。懐中電灯が海を向けて置かれていたから間違いないと久我は言った。 久我は、日曜のミサを終えると司に手を引かれて僕の家へとやって来る。今日は、漁師の信徒からもらったマグロの目玉をジップロックに詰めてやってきた。茹でこぼしてから、生姜と砂糖と醤油で煮て冷やし、自分に煮凝りを食べさせろということらしい。夕食まで間に合うように、持っていってやろうとは思う。 司は、春に小学校へ上がるタイミングで僕が引き取った。仕事には困らなかった。地元の水産高校の

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眠れぬ夜の奇妙なエスキース
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眠れぬ夜の奇妙なエスキース

 盆過ぎの、渡る夜風に笹の匂い、綿あめの匂い、綿あめの、は潰れた銀杏の実の匂い、腐臭は甘い、からみ、つく。 ――月なんか無くなったって、あなたは、この地上でいのちがありそうだ。  愛の告白と分かったので、つい照れる。 ――太陽じゃなくて? ――それはさすがにあなたも死ぬよ。人間だもの。  もっともだ。  変に誠実に理屈っぽいのは、子どもの頃からの私であったはずなのに、彼といる私は女になる。 ――信じないと思うけど。胸をつららが貫いてるみたいで。冷たいんだ、俺は……

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