小説『雨が降ったってもう泣かない』
携帯が鳴った瞬間、雷が落ちた。猛烈な雨が花壇の土をえぐる。
「誰……? ばあちゃん!」
「真澄? あんたなの?」
よく聞こえない。俺は電話に怒鳴る。
「そう! 俺!」
もう一度、雷が落ちる。大地が揺れるほどの。雷は近い。俺は窓を離れて、病室を抜け、廊下に走る。
「あんた、まだ入院してるの?」
「そう、大分いいけど」
俺はうつ病持ちで、もう二ヵ月ここにいる。入院した頃は毎日ずっと泣いていた。今でも泣いてるけど。俺、よく泣くんだ。いい年の男にしては。
「ばあちゃんね、コロナウイ