エッセイ『バイト先の会社が倒産して、まさかの現物支給?』
最後まで読めるようにしておきますが、100円ください。よろしくお願いします。
その宇宙人のバックパックには、取り外しのできる可愛い宇宙人のランチボックスが付いている。皆は、私が誰かにあげるつもりで買ったと思ったらしく、私がこれを背負っているところを見て笑われた。
会社がぶっ潰れて、世間を知っている私とか店長とかは、多分給料を貰えないだろう、という予測をしているけども、若い子達は危機感を持っていない。店長によると、給料が出るにしても半年や一年は掛かるだろう、と。
それで、そこはバッグ屋だ。今月末予定の閉店前に今ある商品を売りさばかないといけない。しかし全部売ってしまうと早く店が閉まって、早く失業する。それでは我々は困るから、なるだけ商品を売るな、という指令が出た。カスタマーサービス歴の長い私でも、売るな、と言われたことは流石にない。売るな、というのはかえって難しい。つい客に親切にしたがる。
昨日もお客さんに、つい、このブランドはここまで値段が下がることは滅多にないですよ、と言ってしまい、買われてしまった。
たった数か月だったけど、仕事は凄く楽しかった。店長がパリから来たという、ぼーっとしたお兄さんで、あんなに穏やかな人が世の中にいるんだな、と感心した。まあ、ああいう人を雇う会社だから潰れたんだろうけど。
給料が出ないと分かっていても、シフトは入っているから時間通りに行っているけども、なぜなら、もしかしたら、給料が貰えるかも知れないから。倒産したのが先月末で、八月二日の給料はちゃんと振り込まれた。今度の金曜が給料日だけど、はらはらどきどきですね。
その会社はカナダのフランス語圏にあって、倒産したという通知の手紙がフランス語と英語で来て、うざくて頭にきたから、見もしないでフランス語のページをゴミ箱に捨ててやった。
タダみたいな金額で商品を売ってくれる。それが最後の福利厚生のつもりなんだろうけど。まあ、バックパックフェチの私には堪らない。まず買ったのは、カッコいいSamsoniteのバックパック。これの気に入っているところは、ジッパーが途中で止まらないで、ずっと下まで開けられるところ。おまけに、かなり軽い。
こういうディテールが堪らない。
真ん中が書類入れになっている。
ここがラップトップを入れる場所。
それから、カッコいいSwiss Gearのキャスター付きバッグを買った。このディテールが堪らない。
ほんとはキャリーオンのスーツケースが欲しかったんだけど、これでも大きさは十分だし、普段も使えるからこれにした。
このSwiss Gearに、Samsoniteのバックパックを引っ掛けて乗せて転がせるから、もし万が一また日本に行くことがあれば、そんな感じで旅をする。大きいメインのスーツケースをチェックインした後に空港でこれがあると便利なんだよね。
今日、わざわざこのバッグを使いたいが為に、珍しくPCを外に持ち出した。そこは魔法の様にいつも客が少ないスタバで、自分の小説を読み返したり、YouTubeの自動キャプションの間違いを直したり、そういうことをしていた。キャスターが360度回らないということに慣れないとちょっと大変。その後銀行の人と会うことになっていて、あのバッグを転がしていたら、そこにいた人全部に見られた。
店長はどうせなんだからもっと買え、と言うけれども、たとえ福利厚生の為にタダ同然で買えるとは言え、お金は出さないといけないから考え中。黒い本革のバックパックがあって、非常にエレガントなデザインでそいつを狙っている。
まあまあ、こういう体験はあんまりできることじゃないし、面白いと言えば面白い。いつもお世話になったいる友達も呼んでバッグを買わせた。凄く喜ばれて、私も嬉しい。
この体験を小説にしようと思うんだよね。まあ、メインのテーマにはならなくても、エピソードの一つにはなるよね。あんまり売れ、売れ、と言われて来た我々にとって、売ってはいけない、というのが大変で面白い。
なんでこんなにでっかいセールをするのか、もしかして店を閉めるのか、と聞かれて、そうそう私達も仕事を探しているんだよ、とかうっかり言っちゃって、同情されてまた物が売れる……。困ったことに。
こないだお客さんに、きっともっといい仕事が見付かるから、と励まされた。そういうのって嬉しいよね。しかし、仕事を見付けるのは非常に大変。
夕べなんか、閉店間際に男の人が来て、スーツケースを探しているから、私はこの会社は倒産したから、これからどんなサービスが受けられるか分からないから、ハウスブランドじゃなくて他のブランドにした方がいいよ、と正直にアドバイスしたけど、その人はまあ安いし、これでいいや、と言ってハウスブランドを買って行った。
姉に言わせると、日本は人手不足で、選ばなければ仕事はいくらでもあるそう。日本へ出稼ぎに行くとしたらどうなるだろう? 今、ちょっと調べてみたけど、全然分からないね。海外在住だと、法律的に日本の求職サイトに登録できないから、ひとつひとつの企業に問い合わせをする必要があって、それが面倒。東京で、英語を活かせて、ちゃらちゃらした服屋とかで働きたい。
まあ、しかし無理だな。私は所謂、空気の読めない派だから。言ってはいけないことを言ってしまう。東京に住んでいた時、ちゃらついた仕事ばかりをしてきた私が、カナダへ行こうと思って金を貯めるため、派遣で生まれて初めて普通のオフィスで働いていたら、そこの社員がみんなで会社の悪口を言っていて、あんまり可哀そうになったから、そんなに嫌だったら辞めればいいじゃないですか、と、つい言ってしまって、それは言ってはいけないことだったらしい。
外国人がいっぱいいるコンビニとかで働いたら楽しそう。こないだ六年振りに日本に行った時、友達にコンビニから宅急便が送れるという話を聞いて、行ってみたら、中東系の顔をして、名札にマイケルと書かれた若者に親切にしてもらった。
それから、一流だと正社員になるし、堅苦しいから、二流くらいのホテルで働きたい。昔こっちでフロントで働いたことがあるけど、そこは電話が掛かってきたら予約を取ることになっていて、電話だし、あっちの言ってることはさっぱり分からなかったから、これから予約番号を言うから、それだけは忘れないで持って来てね、と言って、本人達が到着して、なんで名前とか住所の綴りがこんなに間違っているのかと驚かれ、周りのスタッフはそれはYukiが予約を取ったからだよ、と笑っていた。予約番号さえあればチェックインできるという事実を利用する。そういう要領の良さが私のいいところ。
余談だけど、いつか私の働いていたのと同じホテルで働いていたという、日本人女性が留学関係のお洒落な雑誌に載っているのを見た。こんなホテルでこんな風にお洒落に働いていました、みたいな記事だった。それでその女性のことを同僚に聞いてみたら、ああ、その人と働くのは本当に大変だった、最初は頑張って電話を取ろうとしていたけど、ある時それをすっかり諦めてしまって、彼女が電話を取らないから他の人が取らないと駄目で、忙しい時は本当に苦労したのだそうだ。
そんなもんなんだな。もしかしたらその女性は私より英語ができたのかも知れない。だから要領の良さというのは生きて行く上で大事だ。
それから、原宿とか表参道の流行りのちゃらちゃらしたブティックで働きたい。外国人に売りつける。私の英語はカジュアルで楽しいから、きっと売り上げになる。
英会話教室とかでは、教えられるとは思うけど、なにか聞かれたらきっと正確には答えられない。
観光案内所では英語は分かるけど、東京の地理や、電車のことやなんかが分からない。
こないだ渋谷にいて、凄く疲れていたからマクドナルドに入って、気付かずにずっと英語で喋っていたら、あっちは少し日本人っぽい顔をした若いおねえさんで、私の言っていることをちゃんと理解してくれた。そういう時は嬉しい。
東京に行ったらなんかしら仕事はあると思うし、日本のパスポートを持っているから部屋も借りられると思う。
だけど、こないだ羽田空港からバスに乗る時、ICカードはお持ちですか? と聞かれ、それってなんですか? と聞いてしまった私。果たして日本で生活できるのか。
まあ、無理だな。今日ちょっといいことがあって、知り合いの働いている店で募集があったから出したよ、と言ったら上司のメールアドレスをやるから、そこに直接レジメを送れ、と言われた。上手くいくといいな。その店は、ちなみにこのnote記事の表紙写真の照明を買ったところ。
まあ、職を失って落ち込むけれども、給料は貰えないのが分かっていても時間通りに出勤するとか、売ってはいけないと言われているのに、ついついいつものセールストークが出て売ってしまうとか、そういうのは人生いろいろっぽくて小説のネタになる。
今、200ページを目標に書いている小説があって、主人公はブライダルのデザイナーの男性で、彼の夢は自分の創ったウエディングドレスを着て王子様とロマンティックな結婚式を挙げること。いつも必ず出て来る警察官はまだいないな。実家の隣が交番という設定にしよう。
YouTube「百年経っても読まれる小説の書き方」
今日の三位
219、『歯車』芥川龍之介。誰も言わない感想と文章の分析。
今日の二位
78、『雪国』川端康成の必殺技 その一、言葉を逆にする。ダイジェスト小説。
なぜかリンクが貼れない。すいません。
今日の一位
250、『金閣寺』三島由紀夫。誰も言わない感想と文章の分析。
『金閣寺』返り咲く! ちょっとびっくり。それに三島由紀夫が一個だけというのも相当珍しい。芥川龍之介と川端康成が久々に登場。『雪国』のダイジェスト版のリンクが貼れないから、本編のリンクを貼るので、面白いから観てください。
239、『雪国』川端康成の必殺技!誰も言わない感想と文章の分析。
まあ、そんなことろだな。
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