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#297 『「ジョブ型」の誤解を正す』を読んで

本日の日経新聞朝刊25面、『「ジョブ型」の誤解を正す』という記事を読んで、いろいろ頭が整理できたので、メモ。


1、どんな記事?

慶應大学の鶴光太郎教授(2013年にジョブ型雇用が最初に話題になるきっかけとなった、規制改革会議委員・雇用ワーキンググループ座長を務めた人物)が寄稿した記事で、ポイントは以下の3つです。

☑️ ジョブ型=解雇自由や成果主義ではない
☑️ 本質は職務明記の採用と社内公募の異動
☑️ 従来型の職場は仮想空間でも実現できる

と、これだけではよくわかりませんので、簡単にご紹介します。

まず、「ジョブ型」の誤解の例を以下のように挙げています。

☑️ ジョブ型とは職務、勤務地、労働時間いずれかが限定された正社員の雇用形態を示す言葉であり単に「職務記述書があるのがジョブ型雇用」というのは誤解。
☑️ ジョブ型雇用は「成果主義」も誤解。ジョブ型は基本、賃金が職務に結び付いているだけで、成果主義が内在している訳ではないから。
☑️ ジョブ型の対義語をメンバーシップ型とし、メンバーシップ型を日本的雇用システムの同義語とするのも誤り。ジョブ型=就職、メンバーシップ型=就社という違いで対義語ではないから。
☑️ テレワークを推進するためには自己完結、成果が事後的に測りやすいジョブ型雇用にしなければならないというのも誤解。現在のテクノロジーを活用すれば現在の職場環境と同等のコミュニケーションをWeb上に再現することは可能だから。

その上で、鶴教授は、日本でテレワークを阻害している本質的な要因は雇用形態ではなく、組織内における情報処理システムであると指摘しています。

欧米では役員等の上位組織のみが情報処理を行い、下位組織はその命令を実行するだけで、分業が徹底しています。
日本企業の情報処理システムは、組織の上下でも左右でも部門間の調整を行いながら情報処理を行うような「すり合わせ」が行われます。

これらを踏まえ、以下のように述べています。

このように考えると、メンバーシップ型雇用=「就職」ではなく「就社」が重要な場合、従業員は新卒一括採用で場所・時間を長く共にする、つまり「同じ釜の飯を食う」ことで、明示的なコミュニケーションをとらなくても「あうんの呼吸」「空気を読む」ことを身に着け、暗黙知を徹底活用してきたといえる。

その一方で、メンバーシップ型雇用では、同じ場所で同じ時間を共有することの利点を説く「大部屋主義」「対面主義」があまりにも強調され、絶対視されてきたことも否めない。その傾向は経営を担う中高年世代ほど強いし、それがテレワークへの不信感につながっている。


2、まとめ(所感)

いかがでしたでしょうか?

ジョブ型が話題になっていますが、その捉え方はいまだにバラバラな気がしています。

その点、鶴教授の「ジョブ型は社内外両方から公募をするから職務を明示する必要があり、その説明のために職務記述書がある。ジョブ型の本質は公募だ」というのは明確です。

そして、日本でテレワークが進まないのは、単にジョブ型ではないから、ということではなく、より本質的な、これまでの日本企業の、縦とも横とも「すり合わせ」をしながら進める仕事のやり方そのものが、同じ空間にいることを必要とするからだ、という分析も一定の納得感があるものです。

ただ、こうした仕事の進め方は、すでにずいぶん前から、「決定にスピード感がない」、「あちこちすり合わせた結果、特徴のない事業計画になる」、「決定しても責任の所在が明確でない」、「中途採用者など多様な人材が活躍しにくい」など多くの問題点が指摘されていました。

こんな状況にならなくても、変わるところは変わり始めていましたから、これも、感染症で動きが速くなったことの1つ、なのかもしれません。

そう考えると、この機会に変革できなければ、この先変われる機会はないでしょうから、文字通り「ピンチをチャンスに」しなければ、感染症というピンチが終わった後に、企業として生き残りのピンチを迎えることになるのでしょう。


最後までお読みいただきありがとうございました。

記事の紹介でしたがどこかお役に立つところがあれば嬉しいです。

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