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[書評]奈加靖子『緑の国の物語』

[書評]奈加靖子『緑の国の物語』

奈加靖子『緑の国の物語』(愛育出版、2021)

アイルランド歌集。12曲の解説、手書きの楽譜、訳詞に絵 (柏木リエ) がついた大型の本。原語で唄った CD が附属する。CD の歌とハープは奈加靖子、ピアノは永田雅代、録音は塙一郎。

本は3章に分かれ、各章に4曲が配される。

第1章は「季節はめぐり たどりついた愛のかたち」の題で、Thomas Moore (1779-1852) の〈夏の名残り

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ナンシー・グリフィスを偲んで

ナンシー・グリフィスを偲んで

先月なかばにナンシー・グリフィスの訃報があった。ナンシー・グリフィスは米国テキサス州出身のミュージシャン。カントリーウェスタン畑からのスタートだったけど、もっとフォークよりの音楽をやっていた。本人はカントリー歌手として扱われるのを嫌っていたなんて話がある。享年68歳とのこと。

ふだん音楽雑誌はチェックしていないのだけど、ここ1ヶ月はナンシーの訃報と彼女の業績をふりかえった特集記事などがあるかもし

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ノーサンバランドの民俗音楽の歴史

ノーサンバランドの民俗音楽の歴史

ローマ時代の遺跡ハドリアヌス長城や、映画ハリーポッターのロケにも使われたアルニック城(Alnwick Catsle)は、イングランドとスコットランドが国境をめぐって争っていた中世を代表する城です。そのような古城が点在するイギリス北東部はノーサンバランドと呼ばれ、独特の景観と、豊かな伝統が残る地域です。そんなボーダー(国境)の音楽をさっそく見ていきましょう。

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アイルランド音楽は誰のもの?

アイルランド音楽は誰のもの?

以前、アイルランド音楽はアイルランド人のものだから、日本人はどんなに頑張ったって蚊帳の外だよ、ということを日本の人から言われたことがあります。「アイルランド人の伝統」、というのがなかなか説得力があって、そのときは、そうなのかなと思いましたが、日本人だからダメなんだ、というのに引っかかりました。考えてみたいと思います。

アイルランド人とは、どんな人を指す?

「アイルランド音楽はアイルランド人のも

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アメリカンオールドタイムの音楽の歴史

アメリカンオールドタイムの音楽の歴史

アメリカの建国の歴史にノスタルジーなつながりを想起させる音楽が、アメリカンオールドタイムです。農民の実直で勤勉な生活に根差した音楽の歴史を見ていきましょう。アメリカンオールドタイムの歴史を読む前に、彼らのルーツであるアイルランドとイングランドの音楽史をぜひ、ご一読ください。音楽のつながりがより深く理解できるでしょう。

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Aug 15, 2019

台風10号とNick Lowe @ Billboard Live Osaka (1st & 2nd)

Aug 15, 2019 台風10号とNick Lowe @ Billboard Live Osaka (1st & 2nd)

●<まえがき> 毎年恒例、Nick先生の来日公演へ。昨年に引き続き、連休に合わせての(今回はお盆休み)Billboard公演でしたが、ばっちり台風接近にぶち当たり、開催されるか否かも心配な感じでしたが、前日に無事開催のアナウンスメント。私は当日朝の特急電車で大阪へ到着したので、無事会場まで来れましたが、交通機関運休のため来れなかった人には、キャンセル&払い戻し対応もしていたようです。

●Twit

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山下達郎 の『FOR YOU』を聴いてみた編

こんばんは、内山結愛です。

今回は 山下達郎 の『FOR YOU』を聴いてみた編をお届けします。

夏という季節の眩しさ、ジリジリ照らす太陽、太陽を反射したキラキラの海。

夏を感じさせる要素全て詰まっているのに暑苦しいどころか爽やか!

聴き終わる頃には夏だと錯覚してしまうかもしれません…

これから来る夏を想って、読んでみて聴いてみて下さい!

1.SPARKLE
音が楽しそうに弾けていて、

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今こそはじめる、シャンノース 【コネマラステップ編】 #土曜夜にアイルランドを語る

今こそはじめる、シャンノース 【コネマラステップ編】 #土曜夜にアイルランドを語る

土曜の夜にこんばんは!
毎週土曜、19時の投稿、楽しみにしてくれているかな?気分はラジオだぜ。

先週は音楽の話題でしたが、今週はダンスです!
ダンスホリックな君たち!
お待たせ!!!

はじめに
この記事は僕、城拓と長野のダンサー、飯井大智の動画協力で構成されています。

想定する読者は以下。

・シャンノース・ダンシングを始めたい方
・セットダンスの経験者でコネマラステップを練習したい方
・セ

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3.fieldアイリッシュセッションの始まり Part3

3.fieldアイリッシュセッションの始まり Part3

 現在、Irish PUB fieldが休業を余儀なくされている中で、1987年の”field”創業以来の、過去の様々な資料や記事に触れる機会がありました。そこで、過去にfield オーナー洲崎一彦が、ライターのおおしまゆたか氏と共に編集発行していたメールマガジン、「クラン・コラCran Coille:アイルランド音楽の森」に寄稿していた記事を、このnoteにご紹介していきたいと思います。

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【補足.2】終わりなき旅。音源を通じた音楽との出会い方、探し方 ~伴奏者編~

【補足.2】終わりなき旅。音源を通じた音楽との出会い方、探し方 ~伴奏者編~

こんにちは。ご覧いただきありがとうございます。みぞやすと申します。
本稿は、”終わりなき旅。音源を通じた音楽との出会い方、探し方”の続編です。
未読の方は、こちらをご覧いただければ幸いです。

今回は「伴奏者」に焦点をあて、筆者流の出会い方、探し方を振り返ってみました。

伴奏者音源探索の苦労「アイルランド音楽は旋律*の音楽です。」旋律と伴奏について筆者が問うと、異口同音に言われてきました。それく

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Apple MusicがSpotifyより大きく優れている3つの点

Apple MusicがSpotifyより大きく優れている3つの点

音楽ストリーミングサービスといえばSpotifyとApple Musicの二強状態だ。
僕の肌感覚だと特にこだわりがない人がiPhone使ってる流れでApple Musicで、音楽好きはSpotifyを選んでいる印象だ。

ただ、僕が今回言いたいのは音楽好きこそApple Musicを使い、Spotifyの無料版をうまく併用するのが最強だというのを唱えたい。

Apple MusicがSpotif

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仕事中の音楽は有効?

仕事中の音楽は有効?

どんな“音環境”で仕事してる?これ、自分自身の興味関心に近いんですが、
皆さんの職場にBGMって流れていますか?

飲食店や小売店で働く方なら、お客様用としてのBGMをいつも耳にしているかも知れませんね。逆にオフィス勤めの方なら、BGMが流れている会社の方が珍しいのかしら。

私は音楽好きで、常に自分の気分に合わせた音楽を流しておきたいタイプです。今の職場では完全に1人営業の時間が増えたので、好き

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執念のスピッツ全アルバムレビュー

中学生の時にひょんなことからスピッツに出会い、虜になってはや10年以上。アルバムはほぼ持っているのですが、このたびめでたく新アルバム発売そしてサブスク解禁!ということで、シングルコレクション等ベスト盤を除くアルバムを、あらためてリリース順に聴いてみました。

……という感じで当時書いたメモ帳データを発見したのであった。
こうしてnoteの編集画面で見てみると曲名抜きにしても1万文字越えてたんで、せ

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なぜ僕はレコードが好きなのか、と渋谷のレコード屋のこと

僕がブラジルの中古レコードを手に入れて、一番心が躍るのはレコードのジャケットに「書き込み」を見つけた瞬間です。

例えば1960年にプレスされたジョアン・ジルベルトのレコードに「ジョルジへ 誕生日おめでとう。愛してるわ。たくさんのキスを。マリア」なんて書いてあるわけです。

このレコードをマリアがジョルジにプレゼントしたの、50年以上も前なんです。その二人が当時20歳くらいだったと考えて、今はもう

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