執念のスピッツ全アルバムレビュー

中学生の時にひょんなことからスピッツに出会い、虜になってはや10年以上。アルバムはほぼ持っているのですが、このたびめでたく新アルバム発売そしてサブスク解禁!ということで、シングルコレクション等ベスト盤を除くアルバムを、あらためてリリース順に聴いてみました。

……という感じで当時書いたメモ帳データを発見したのであった。
こうしてnoteの編集画面で見てみると曲名抜きにしても1万文字越えてたんで、せっかくだしということで公開します。本当にただの個人的な感想ですので、途中「は!?」って人もいると思うけど、お暇でしたら宜しくどうぞ。

※原曲と大きく変わらないアルバムバージョンについては、独断で表記を省略しています。
太字は特にお気に入りの曲。


スピッツ

1.ニノウデの世界 2.海とピンク 3.ビー玉 4.五千光年の夢 5.月に帰る 6.テレビ 7.タンポポ 8.死神の岬へ 9.トンビ飛べなかった 10.夏の魔物 11.うめぼし 12.ヒバリのこころ

最初のアルバム!ド初期!若い!トガっている!ふしぎ!声がちょっと違う!サウンドがどうとかアレンジが楽器がとかは素人なので全然なんですが、この時代にレコーディングされた曲って音がクリアじゃないというか、全体的にぼやっとしてて味があるよね。歌詞はというと近年に比べればバリバリにファンタジー。たとえば深読みや考察が大好きな類の方は首を傾げすぎて180度回るんではと思うぐらいですが、マサムネ氏はボーカルも楽器のひとつだから歌詞は響きを重視しているとかなんとかどっかで言っていたようなそんな気がする。(ソースを調べろ)あと解釈についてもリスナー各々に委ねているとのことで、『これはこういう意図で作った曲です』と詳細を明かしていることもほとんどありません。
しかしこれらを前提にしても、「夏の魔物」での歌詞から推測される“それ”を魔物と呼ぶセンス、いきなりエグられる。生活感が漂う曲ってドキっとしますよね。やや投げやりな感じがいい「トンビ飛べなかった」、すべてを諦め世界の果てへドライブするような「死神の岬へ」など、どこを聴いても灰色の海へ静かに沈んでいく退廃的な世界。「ヒバリのこころ」は口ずさむとスラスラ歌える気持ちいいメロディ。でもずっと曇り空なんだよね。『ここにいれば大丈夫だと信じてた』『僕が僕でいられないような気がしてたのに』とか、変化を恐れてるところ、好きだなあ。ただまあ霧が濃~くかかったアルバムなので、スピッツが気に入ってちょっとしてから聴くのがよさそう。入門として聴くにはやや重め。いろいろ聴いたうえで戻ってくると、ここが原点なのか…と見据えてしまうような一枚。


名前をつけてやる

1.ウサギのバイク 2.日曜日 3.名前をつけてやる 4.鈴虫を飼う 5.ミーコとギター 6.プール 7.胸に咲いた黄色い花 8.待ちあわせ 9.あわ 10.恋のうた 11.魔女旅に出る

前作からはちょっと彩度が上がった、ファンの中で人気の高い一枚。雰囲気になんとなく触れるなら、基本的に恋は叶わないし微笑みながらも行き先は確実に死、後ろ向き全力疾走みたいな、そんなアルバム。君がそう言うならそれでいいよと言ってしまいそうな男の子をイメージします。どこかわだかまりのある幸せが舞う「ウサギのバイク」はなんとも耳にやさしい、秋の哀愁に甘みをひとさじ入れた曲。タイトルナンバー「名前をつけてやる」の絶妙なエロさとダサさもいい。『ふくらんだシャツのボタンを引きちぎるスキなど探しながら』なんて性欲にまみれたフレーズがさらっと聴けちゃうのも、スピッツの魅力です。「鈴虫を飼う」では誰も自分を知ることのない都会での孤独がすごく鮮明に思い描けてしまって怖い。子どもの頃、知らない人であふれる駅前の雑踏が苦手だったことを思い出した。楽しかった記憶と突きつけられる寂しさの対比にゾっとする「プール」も最高。あと「胸に咲いた黄色い花」がいいですね。君とふたりで生きていこうとするラブソングのような空気でありながら、そこはかとなく合意の上じゃないような、救済をもとめているような匂いがするんだよなあ。ラストを飾る「魔女旅に出る」は初期スピッツの中でも頭ひとつ抜けたファンタジーたっぷり、屈指の名曲です。『いつでもここにいるからね』の一言にどれくらいの星空が詰まっているのだろう、旅立ちを見送るときのぽっかり穴が開くあの気持ちは、こんなにも綺麗な歌になるのです。


オーロラになれなかった人のために

1.魔法 2.田舎の生活 3.ナイフ 4.海ねこ 5.涙

5曲のミニアルバムです。聴いていただくとこちら、なんと、救いがどこにもねえ………なんだこれは…なんなんだ…5曲しか入ってないのにあまりに重すぎないか……なんなんだ……なんなんだよ……歌い終わったあとガラリと変わるメロディも不穏な「魔法」からはじまり…いやぜ~んぶ救いナシ!とりあえず、透明感あるアルペジオとまばゆい音にうっとりする「田舎の生活」を…これを絶対に聴いてみてほしい…まるで今そこにいて噛み締めているんじゃないかってほど憧れと希望に満ちた、あたたかく明るい未来の光景が語られる曲。すらすらと流れる幸せでさきほどの不穏が浄化されると思いきや、『かならず届くと信じてた幻』『あの日のたわごと』だなんて。いやいや、胸が苦しすぎる。でもそこも含めて本当に美しい。「ナイフ」では声のやさしさが逆に怖い。たぶん目が笑ってない。『君がこのナイフを握りしめるイメージを毎日毎日浮かべながら過ごしてるよ』それ本当にナイフか?ちなみに彼らの曲の中で演奏時間が最も長い曲でもあります(7分ぐらいある)「海ねこ」はいきなり『はじめからこうなるとわかってたのに』だよ。ジャンルの分類で言うなら確実にセカイ系な一枚。ややオーケストラ調の風味もあり、どう考えてもテンション上がる代物ではなく、このアルバムをドライブミュージックにしようもんならこれから心中ですか?と捉えられても否定できない。だいぶディープなのでスピッツ好きだなあって思ってから聴いてみてください。間違っても『スピッツ聴いてみよ!曲少ないし最初はこれでええか!』で手に取るのはおすすめしません。伝わる人にだけ伝わればいいという気持ちで言いますが、ムジュラの仮面で言うなら3日目最後の朝に聴くやつ。どうあがいてもクリアできない前提で。


惑星のかけら

1.惑星のかけら 2.ハニーハニー 3.僕の天使マリ 4.オーバードライブ 5.アパート 6.シュラフ 7.白い炎 8.波のり 9.日なたの窓に憧れて 10.ローランダー、空へ 11.リコシェ号

ギュイィーーンギャリギャリギャリッッ!!ひずみのあるギターサウンド満載!!ロック!!!ロック最高!!と思いきや実はいろんなテイストの曲が入ってるんだけど、軸はズレていないのでご安心を。ひとつひとつの演奏時間がやや長い曲と短い曲で構成されてます。とりあえずボーっと車で流すのがいい。先ほどのオーロラ(略)と違いドライブにピッタリ。行き先も樹海じゃなく海沿いのラブホとかでしょう。
タイトルナンバー「惑星のかけら」(惑星は“ほし”と読む)は初っ端からなかなかの重力!この時期のスピッツでは珍しい英詞混じりの「ハニーハニー」にテンションが上がり、カントリー調で胸にチクリと刺さるキュートな「僕の天使マリ」へ。さらっと5曲目に入ってる「アパート」はめちゃくちゃ良曲。『そう 恋をしてたのは僕のほうだよ』って、あまりにエモが過ぎませんか、推しカプ新刊のタイトルにしたい。「シュラフ」は異国情緒の笛の音がまるで催眠術にかけられているみたいな妖しい一品。しかしシングルでもある「日なたの窓に憧れて」がやっぱダントツで好きですね。後ろでシンセがずっとテッテレピコピコ鳴ってるんだけど、これが永遠の象徴というか、回り続けるメリーゴーランド、抜け出せないループのような、なんなら別に抜け出せなくてもいいような…。どんな気持ちでつくった曲なのかものすごく気になる。醒めたくない夢のような曲。


Crispy!

1.クリスピー 2.夏が終わる 3.裸のままで 4.君が思い出になる前に 5.ドルフィン・ラブ 6.夢じゃない 7.君だけを 8.タイムトラベラー 9.多摩川 10.黒い翼

売れ筋意識!ポップにいこう!ドン!みたいなコンセプトで作られたアルバムらしい。なおジャケットはマサムネ氏本人のドアップです。(かわいい)シングルは「裸のままで」「夢じゃない」のほか大ヒットした「君が思い出になる前に」が収録されているんだけど、アメリカンだったり王道バラードだったり、ぶっちゃけ色々ちぐはぐなアルバムだなって気持ちが強くてあまり好みではなく、いつも終盤で飽きてしまうんだよね。めちゃくちゃスピッツが好きって人と出会った回数そんなに多くないけど、アルバムの中でCrispy!がいちばん好きって人、まだ見たことない。管楽器というかシンセというかバンドサウンド以外のところがこれでもかというほど主張してくるんでそこが気に入らなかったポイントかもしれません。…が、すべてが気に入らんとかそういうわけではないです。アルバム曲でいうと、カラフルでウキウキしちゃうタイトルナンバー「クリスピー」、サビよりAメロが気持ちいい「タイムトラベラー」推しかなあ。申し訳ないけどやっぱいつ聴いても「君だけを」で寝そうになる。時間を切り替えたり区切ったりせずにゆるゆるだらりと流れる感じはスピッツ感満載なんだけどね。すまんやで。


空の飛び方

1.たまご 2.スパイダー 3.空も飛べるはず 4.迷子の兵隊 5.恋は夕暮れ 6.不死身のビーナス 7.ラズベリー 8.ヘチマの花 9.ベビーフェイス 10.青い車 11.サンシャイン

はい。全人類、聴いてくれ~~~!!!!!けっ、傑作、第一弾、です。スピッツのテーマである『セックスと死』を濃縮還元1500%でまとめた一枚。収録シングルは「スパイダー」「空も飛べるはず」「青い車」など、前作に引き続き世間的にヒットしたものがばんばん飛び込んできます。「空も飛べるはず」なんて単体で聴いたときはあ~学校で歌ったわ~って感じの青春ソングイメージだったのに、このオシャレな棺みたいなアルバムに放り込んでいいのだろうか? サビの清潔さで霞んでいるが『幼い微熱を下げられないまま 神様の影を恐れて』なんて出だしからわりかし難解だと思う。さておき、拗らせた妄想がこれでもかと詰まった「ラズベリー」はしばしばスピッツの裏側として名を馳せる曲。『おかしいよと言われてもいい ただ君のヌードをちゃんと見るまでは僕は死ねない』本当にすごい歌詞だ。こんな詩的なヤりたいはなかなかお目にかかれないし、ラズベリーって何?って考え始めたらもう… ギターがのっけからアダルトチックな「不死身のビーナス」にも注目。未練たらしい捨て台詞で出来たような激しい曲なんだけど、気持ちがぐっちゃぐちゃになって泣けてくる。『最低の君を忘れない おもちゃの指輪もはずさない』なんて、風を切るみたいにこっちの感情かっさらっていくフレーズじゃないですか。本当の意味での別れを明るく夜空に描いた「ベビーフェイス」もいい、残された側へ寄り添う素敵な曲です。そして夕暮れに切なさを透かすような、最後というより最期に君臨するのにふさわしいラストナンバー「サンシャイン」は必聴。イントロからもう釘付けなんですが、照りつける西日を想起させる美しいメロディに乗せられた声、2番サビが終わった後の半音ずつ上がっていくギター、ほんとうに昂りすぎてどうしようもない。はじめて聴いた時の衝撃は10年以上経った今でも忘れません。生きてきて他のアーティストも含めいい曲や好きな曲にはたくさん出会ってきましたが、こんなにも射抜かれて心ごともっていかれたのは後にも先にもこの曲だけです。できるなら記憶を消してもう一度惚れたい。私がいつか記憶喪失になったらこれ聴かせてください。「青い車」がすでにエンディングみたいな感じなのに、その奥で待ち構えているこの曲。どうか飛ばさず混ぜず、この曲順で聴いてほしい一枚。


ハチミツ

1.ハチミツ 2.涙がキラリ☆ 3.歩き出せ、クローバー 4.ルナルナ 5.愛のことば 6.トンガリ'95 7.あじさい通り 8.ロビンソン 9.Y 10.グラスホッパー 11.君と暮らせたら

はい、玄関マットでございます。「スピッツなんかいいアルバムない?」と聞かれたとき真っ先に思い当たるド直球文句なし名盤ハチミツ先輩のおでましだ!!シングルコレクションは肉料理しか入ってない弁当みたいなもんなので、ファンとしては栄養バランス満点かつおまけで唐揚げも入った幕の内弁当的なやつをまず食べてほしいわけです。スピッツは世間的にどうしてもピュア…純情…健全…みたいなイメージを抱いてる人がまだまだいると思う、だがそうじゃない部分もぜひ知って頂きたい!といってもいきなりオーロラになれな以下略みたいな黒色無双だと人離れまっしぐらなので、ここはひとつハチミツでいかが?ということです。収録シングルも「涙がキラリ☆」「ロビンソン」が揃ってるので後悔はさせません。この2曲に関しては大げさに言っても今の20~30代で聴いたことない人いないんじゃないか。どうでもいい情報ですが母親によると当時は「スピッツのロビンソンかロビンソンのスピッツかわからんかった」とのこと。世代も時代も超えて愛され、単純に飽きない色褪せないアルバム。ピックアップしたいのはタイトルの甘い響きから想像もつかない無国籍ファンタジーが滲む「愛のことば」。たった数分にこれほど奥行きのある世界を圧縮できるのは天才としか言いようがない。ド陰キャの片思いを描く「あじさい通り」なんて梅雨のじめっとした不快さと雨上がりの眩しさがちゃんと音で聞こえてくる。『愛というよりずっとまじめなジョークでもっと軽々と渡っていけたなら』のとこキレッキレで大好きです。そして終盤、マサムネ氏の声がきらめく儚いバラードナンバー「Y」の良さはもう絶品で、月明かりに照らされ舞い散る羽根の質感まで伝わってくる繊細な情景。続く「グラスホッパー」はドドドアッパーチューン、こっちまでジャンプしたくなっちゃう!!とりあえず聴いてください、しっとり雨の日にワイパーで水滴はじきながら。繰り返すけどスピッツで一枚アルバム聴きたいって人は、まずハチミツ。サイクルヒット(ベスト盤)よりハチミツを聴いてくれ。


インディゴ地平線

1.花泥棒 2.初恋クレイジー 3.インディゴ地平線 4.渚 5.ハヤテ 6.ナナヘの気持ち 7.虹を越えて 8.バニーガール 9.ほうき星 10.マフラーマン 11.夕陽が笑う、君も笑う 12.チェリー

収録シングルが国民的大ヒット「チェリー」&ポッキーのCMでバカほど売れた「渚」というのもあり、一応ミリオンヒット作品なのですが…これは完ッ全に好みが二分化されると思ってます。(インディゴ最高!って言ってる人も結構見るので)自分はというと後半に退屈な印象が拭えずそこまで胸に残らない一枚ではあるんだけど、海と空がどこまでも広がっているような雄大さと、閉じ込められた気持ちの窮屈さが同居したふしぎなアルバムだなとは思います。中でも輝いているのは「初恋クレイジー」かなあ。『君のせいで大きくなった未来』とか、むずがゆくなる甘酸っぱさがいいね。「渚」はシングル曲の中でもかなり好きです。神秘的。擦り切れるほど聴いてるからこんなストレートな感想しか出てこない。「インディゴ地平線」はいわゆるスルメ曲。ガツンと来ないけど気づいたら首まで浸かってる。「ハヤテ」はかわいらしい女の子に歌ってほしいラブソング。流していくとちょっと異色な曲も入っているけど(スピッツの曲はほぼ作詞作曲ともにボーカル草野なんですがこのアルバムはベース田村・ギター三輪作曲のものが収録されています。敬称略)なんというか、とりあえず翼たたんで地上歩くかー、みたいなアルバム。あとチェリーがマジで浮いている。浮いているので最後に収録されたんでは?ってぐらい浮いている気がする。ボーナストラックかと思った。(※チェリー自体はいい曲)


フェイクファー

1.エトランゼ 2.センチメンタル 3.冷たい頬 4.運命の人(Album Version) 5.仲良し 6.楓 7.スーパーノヴァ 8.ただ春を待つ 9.謝々! 10.ウィリー 11.スカーレット 12.フェイクファー

一言でいうなら、春と秋の風。とにかく風を感じる、超さわやかな一枚。収録シングルがやや多いながらもアルバムの中へうまく溶け込んでまとまっている。なんなら世間が思うスピッツのイメージに近い雰囲気のアルバムかもしれない。開幕の「エトランゼ」にそっと耳を澄ませていたらアタマへ直接響くような「センチメンタル」の温度差でひっくり返されちゃう、そんなニクさもご愛嬌。人生を前向きに見つめ直す「謝々!」の歓喜と祝福にあふれた華やかさもいい。私のイチオシは甘く切ない片恋の歌「仲良し」これです。このメロディ響かん人おるか?ってぐらいの泣きメロ。月並みな感想なのは承知の上ですがす〜ごく良い。『サンダル履きの足指に見とれた』の愛らしさ…あとシングルの中でも「楓」は、もう言うことなしじゃないですか。サビの「さよなら」も、声が伸びているあいだ後ろで鳴ってる旋律も、情緒を揺さぶられる。「運命の人」はキー半音下げバージョンなのでシングルと明確に違います。原曲が聴きたい人はベスト盤のほうをどうぞ。ラストの「フェイクファー」は思わず大声で歌いたくなる解放感!全編気持ちいい風が吹いています。晴れた休日にバイクで駆け回る感じかなあ。歌詞カードの文字はマサムネ氏手書きなので、CDで手に取る機会があれば覗いてみてください。(字がかわいい)


花鳥風月

1.流れ星 2.愛のしるし 3.スピカ 4.旅人 5.俺のすべて 6.猫になりたい 7.心の底から 8.マーメイド 9.コスモス 10.野生のチューリップ 11.鳥になって 12.おっぱい 13.トゲトゲの木

アルバムに入りそびれた曲、シングルのカップリング曲、他アーティストへの提供曲セルフカバーなどが収録されたスペシャルアルバムです。いきなり始まる「流れ星」は浮遊感の心地よい名曲。なんでこんな宇宙感出るんだろう、楽器ってすごいなあ…(IQ3の感想)そしてPUFFYが歌って大ヒットした「愛のしるし」はこう聴けばああ確かにスピッツの曲だ!ヤワなハートがシビれる!これ実はPVも良くて、みんな警官や医者などいろんなコスプレをしてくれるので興味ある人はつべの公式アカにあるんで見てください。近年のPVは演奏を映したシンプルなものが多いので、またこんな遊び心を入れてほしいなあとひそかに期待している。そして特筆したいのは「スピカ」かな、『幸せは途切れながらも続くのです』のフレーズには真正面から貫かれました。これを聴いてから私の人生、挫折の瞬間において何度も励まされ、心のどこかにいつも留めている座右の銘みたいなものになっています。出会えてよかったなと思える曲。「俺のすべて」はライブで盛り上がるやつ、いかにも「僕」な草野マサムネが見せる「俺」、全人類が恋に落ちる!いいぞ!遊佐未森への提供曲「野生のチューリップ」もお気に入り。終わりのない寂しさが綺麗な夜空にどこまでも響いていく、なんとも胸にくる曲。若干のメリバ感。あとタイトル一覧見てたら「おっぱい」は目を引くよね。これはラブソングです、怖がらないでください。君のおっぱいは世界一。



ハヤブサ

1.今 2.放浪カモメはどこまでも 3.いろは 4.さらばユニヴァース 5.甘い手 6.HOLIDAY 7.8823 8.宇宙虫 9.ハートが帰らない 10.ホタル 11.メモリーズ・カスタム 12.俺の赤い星 13.ジュテーム? 14.アカネ

はいはいはい再び全人類聴け!!!傑作第二弾のお通りじゃ~~~!!!!すっかり行き渡ってしまったスピッツ=ポップでさわやかというイメージを底の底からひっくり返す、とにかくスピッツはロックバンドであるという事実を全身が震え上がるほど叩きつけた名名名ー名・名ー名盤。『俺の秘密を知ったからには ただじゃ済まさぬ メロメロに』ってなもんですよ。シングルだけに焦点を当てても原点回帰のように尖った「放浪カモメはどこまでも」、ギターリフの哀愁がたまらない名曲「ホタル」、お遊び感満載「メモリーズ・カスタム」とびっくり粒ぞろい。全体的に見ると90年代邦楽という印象からはずいぶん進化してきたラインナップ。聴いても歌っても最&高に盛り上がれるメインディッシュなタイトルナンバー「8823」はもちろんのこと、奥手なくせに強気な「さらばユニヴァース」、切なさの真綿で首を絞め殺しにかかってくる「HOLIDAY」、純愛(?)ストーカーソングと言わしめた「甘い手」とどこを見ても魅力的。なかでも夕日に照らされる影の輪郭がくっきりと映える「俺の赤い星」はめっちゃくちゃカッコイイ、たまらん・オブ・たまらん。幽遊白書を読みだすとどこから読もうが結局最終巻まで読んでしまうかのごとく、このハヤブサというアルバムもまるっと通して全部聴きたくなる一枚なのです。なんせ捨て曲と分類されるようなものがまったくないんだもの。ただしよーく見ると歌詞はそこそこ、いやものすごく女々しい。ただそのバランスが絶妙で、これカッコよさがなかったら普通にめちゃくちゃ気持ち悪いだけなんですよね。たまらんな。もう一度言いますがこれは文句なしの傑作。カッコイイとスピッツが結びつかないあなた、どうぞ最後まで聴いてください。骨抜きにされるぞ。


三日月ロック

1.夜を駆ける 2.水色の街 3.さわって・変わって 4.ミカンズのテーマ 5.ババロア 6.ローテク・ロマンティカ 7.ハネモノ 8.海を見に行こう 9.エスカルゴ 10.遥か 11.ガーベラ 12.旅の途中 13.けもの道

ちょっと前に「スピッツなんかいいアルバムない?と聞かれてオススメするのはハチミツ」と言いましたが、同時に2~3枚目としてオススメしたいのがこの「三日月ロック」です。内容を五角形のレーダーで表すとしたらバランスの良いきれいな五角形でしょう。もちろん平坦でつまらないという意味でなく、いわばスピッツの世界観、ロック、ポップ、バラード、全要素美味しいとこどりなアルバム。ショートフィルムのような物語性に胸がざわつく「夜を駆ける」で幕を開け、想いびとへ会いに行くのにどうしてこんなに仄暗いのか、でもそこがいい「水色の街」。なんとも人間くさくうんうん頷きながら聴いてしまう「ミカンズのテーマ」……『「まぁいいか」なんて言うな 言わないで』の張った意地をほぐしてくれるようなフレーズ、しんみりするなあ。ちなみにミカンズは架空のバンド名らしい。よろけながらも諦められない想いがこもった「エスカルゴ」、そしてかわいらしさと裏腹に胸が張り裂けるダンスビートの「ババロア」…『輝くためのニセモノさ だから俺は飛べる』なんて、こんな鋭利なことも歌ってしまうスピッツ。推せる。個人的なお気に入りは「ガーベラ」です。タンポポやコスモスもそうなんだけど、スピッツにおいて花の名前がついた曲はどれも独特の喪失感があって、もの悲しい餞のような曲が多いんですよね。「けもの道」はスカッとした応援歌!たとえば球場とか、野外で聴きたいやつだ!どんな気分のときも聴ける、安定感ある一枚。


色色衣

1.スターゲイザー 2.ハイファイ・ローファイ 3.稲穂 4.魚 5.ムーンライト 6.メモリーズ 7.青春生き残りゲーム 8.SUGINAMI MELODY 9.船乗り 10.春夏ロケット 11.孫悟空 12.大宮サンセット 13.夢追い虫 14.僕はジェット

遡れば花鳥風月と同じ、アルバムに収録されなかった曲たちで構成されたスペシャルアルバム。シングルのカップリング曲だったり、ちょっと実験的な曲だったり。シングルは「夢追い虫」「メモリーズ」(カスタムじゃないほう)そして某大ヒット恋愛番組のタイアップで話題になった「スターゲイザー」…当然ながらサビがよく流れるので印象に残りがちだけど、Cメロの『ありふれた言葉が 身体中を巡って翼になる』のとこが真髄なので、どうかここまで聴いてください。(めんどくさいオタク)アコースティックギターの風が吹く「稲穂」にくすぐられたのもつかの間、「魚」では冬の冷ややかで重い海がまんま夕日に照らされている、歌詞もそうだけど音だけでもこんなに情景が見えるのは何故なんだ。楽器ってすごいなあ……(また来た!IQ3の感想)「大宮サンセット」は弾き語りで際立つ声にそそられるし、恋人の前で歌いたくなりそうな曲。こんなんで口説かれたら一発ノックアウトでは。あとスピッツAメロウルトラスーパーカッコイイ選手権優勝の「孫悟空」!!こういうギラギラした曲、大好き!!最後のボーナストラック的な扱いである「僕はジェット」はインディーズ時代のもの。スピッツはかつてあのブルーハーツを目指していたとのことですがその片鱗がチラリと見えるアップテンポな曲。コンセプトはバラバラなのに寄せてみればそこそこうまい鍋だね。そりゃそうだ、なんてったって具材がいいから!よし次!


スーベニア

1.春の歌 2.ありふれた人生 3.甘ったれクリーチャー 4.優しくなりたいな 5.ナンプラー日和 6.正夢 7.ほのほ 8.ワタリ 9.恋のはじまり 10.自転車 11.テイタム・オニール 12.会いに行くよ 13.みそか

チェリーやロビンソンらへんから時代をぶっ飛ばしてテレビで流れることが多い「春の歌」と「正夢」が収録されたアルバム。どーうかーマサムネーって頭の中で歌ったことあるやつだいたい友達。最初に聴いた当時は彼らのテーマである『セックスと死』の匂いが強いアルバムを好んでいたので、あまり聴き込んでいなかったわけですが…改めていま聴くと、もう若さだけで尖っているわけじゃないというか、バンドとしての旅路を振り返り、つま先が前へ向いた曲にシフトチェンジしていく一歩目だったんだな~と腑に落ちます。「ありふれた人生」なんかはかなりストレートな表現が多くて、『もうこれ以上待てない 会いたい』とか、まあまあよくある言葉でもこの声に乗せられると心臓が跳ねて世界一周クルーズ旅行ってなもんです。キラリと光るのは「甘ったれクリーチャー」。ノイズがかったボーカルから始まり、2番から景色が一気にぶわっと広がるんだけど、『何ひとつ残さずに飛びたい』のところね、身体の全細胞が震えます。あとお気に入りとして「テイタム・オニール」も挙げたい。『懲りずに君は僕の憧れ』からひしひし伝わるでかすぎる感情、こんな激しい曲でも高音がホントに綺麗。それから『ほのほ』のAメロ、こういうのに弱いです。したたかに燃えていて、なんとなくだけど人外×人間の恋を浮かべてしまう。沖縄民謡チックな「ナンプラー日和」やレゲエ調の「自転車」は新鮮でフフッとなりました。少年や青年からすっかり大人の男になったんだなみたいな、うまく言えないけどそういう感じのアルバム。私の中では「三日月ロック」と「スーベニア」の間でひとつの時代が切り替わったふうに思っています。ここから先は近代スピッツ(?)


さざなみCD

1.僕のギタ- 2.桃 3.群青 4.Na・de・Na・de ボ-イ 5.ルキンフォ- 6.不思議 7.点と点 8.P 9.魔法のコトバ 10.トビウオ 11.ネズミの進化 12.漣 13.砂漠の花

これは私がスピッツと出会いそれまでは遡るだけだった人生のなかで、ついにリアタイでのリリースを心待ちにしたアルバム。収録曲リストが公開された当時、Na・de・Na・de・ボーイってなんだよ!ときっと誰もが思った。シングルは「魔法のコトバ」「群青」PVがスピッツ学期末試験チックな「ルキンフォー」を収録。現在のスタイルへ大きく架かる橋が完成し、あまりブレなくなった。前項でも書いたけど新たな時代のスピッツ。(個人的にね)「僕のギター」はいきなりアレな暗喩かと思ったら普通にええ曲でした(ミーコのギターを引きずるな)……と思ったら「点と点」はもっと直接的にエロかったのでたいへん興奮しましたありがとうございます。儚い幻のようにとろけそうな「桃」や見返す勇気がわきあがる下克上ソング「ネズミの進化」、サビとハイトーンボイスが癖になる「不思議」に、壮大でいて抜群のスルメ曲「漣」…と、かなり聴きごたえ抜群です。歌詞で韻を踏んだりやや方言混じりだったりするおもしろい曲が多くなってきた。落ち着いたテンションで書いていますが全アルバムの中では殿堂入りな空の飛び方とハヤブサに次いでベスト3に入ります。墓場へ持ってくどころかなんなら戒名に入れてくれ。しても本当完成度が高すぎる。思春期ど真ん中の思い出もついでによみがえってウッとなるけど、心優しくなりたいときいつも聴く。何にも代えがたい、みずみずしい力が湧いてくる一枚。


とげまる

1.ビギナー 2.探検隊 3.シロクマ 4.恋する凡人 5.つぐみ 6.新月 7.花の写真 8.幻のドラゴン 9.TRABANT 10.聞かせてよ 11.えにし 12.若葉 13.どんどどん 14.君は太陽

とがっているけどどこかまるい。スピッツそのもののようなタイトル。偏見ですけど、スピッツが響くのは学生時代とかにうまく目立つことが出来なかった人、まあ容赦なく言うと陰キャが多いと思うんですよ。私も例に漏れず。澄んでいるのにちょっとひねくれているスピッツらしさは褪せることなくそのまま、だけど新しい光を探ってちゃんと輝きへ辿り着いているアルバム。ひととおり聴いたとき爪痕を残すのはやはり「恋する凡人」かな。『そのまなざしに刺さりたい』『これ以上は歌詞にできない』なんて、キラーフレーズすぎるでしょう。活動の長い彼らがまだこんなに泥くさい曲を歌ってくれるんだと予想の斜め上をビュンと飛んでいく感じ、いい!! 異色なのは「TRABANT」でしょうか。なんとLUNA SEAを意識して作ったというこの曲、わかるわかるぞ大人の色気だ。(余談ですが私はLUNA SEAも大好きなので二度美味しい) 「シロクマ」はくたびれた社会人に染み入るね。疲れてるときにしゃべりたい人がいる恋愛のあの感じをそのまま曲にしたような…。スピッツの歌詞は自分の記憶・感情とある日突然リンクすることがあって、えっ私のこと歌ってんの!?って見透かされた気分になるたびああやっぱり好きだなと実感する。「君は太陽」の『ごめんなさい 理想の世界じゃないけど 大丈夫そうなんで』って着地点、当時は肩の荷をすうっと降ろされたような衝撃だったな……。繰り返し聴くほどぴったり馴染んでくる、じんわり浸透させてくる、味わい深いアルバムです。想い慕うほどでもなく気に掛けて、ささやかなエールを贈りたい人がいる、そんなことを思い出す眩しい一枚。


おるたな

1.リコリス 2.さすらい(奥田民生) 3.ラクガキ王国 4.14番目の月(荒井由実) 5.三日月ロック その3 6.タイム・トラベル(原田真二) 7.夕焼け 8.まもるさん 9.初恋に捧ぐ(初恋の嵐) 10.テクテク 11.シャララ 12.12月の雨の日(はっぴいえんど) 13.さよなら大好きな人(花*花) 14.オケラ

シングルのカップリング+カバー曲というちょっと特殊なアルバム。()内はオリジナルアーティスト。さて、カバー曲の中で輝いてるのは「タイムトラベル」。原曲を知らないまま聴いたので不思議な気持ちだけど、マサムネ氏の声にとても合っているな(ちゃんと聴いた原曲も楽しめた)と思った。「初恋に捧ぐ」は明るい、だけど切ないロック。全編サビみたいな雰囲気がふしぎ。繋がりでいうと「リコリス」はサビの音階が全部同じというなかなか斬新な曲。森の息吹がこだまするようで好きだった「テクテク」もやっと収録されました。PVの話だけどこういう人外キャラと世界観合うよなあスピッツ。「三日月ロック その3」もようやくここでアルバムに収まった。恋わずらいをこんなふうに描けるなんて、嫉妬すら覚えるよね。で、このアルバムで何をいちばん聴いてほしいかというと、最後の「オケラ」、これです。めちゃくちゃカッコいい。『凡人の自覚なんて無さそうにふるまって派手にコケたりするけれど』 ここ!これ!エグっ!こういう「俺はお前らとは違うからな(黒笑)」って感じで盛り上がる輪を横目にクールぶってたやつの表現が那由多パターンあるから、心当たりある奴はとりあえず全員スピッツ聴いてくれよ。やっぱ草野マサムネは俺たち厨二引きずり陰キャのヒーローだな、ハッハー!ハア~…カッコイ……はあ…シビれるう……


小さな生き物

1.未来コオロギ 2.小さな生き物 3.りありてぃ 4.ランプ 5.オパビニア 6.さらさら 7.野生のポルカ 8.scat 9.エンドロールには早すぎる 10.遠吠えシャッフル 11.スワン 12.潮騒ちゃん 13.僕はきっと旅に出る

「未来コオロギ」のこのイントロ、ズルくないですか。『いきなりで 驚かせたかも』って本当にそうだよ。全体を通して、とても前向きな一枚。さざなみCDの頃よりも前向いて上見てる。東日本大震災を区切りにするとはじめて発生後に製作・リリースされたアルバムでもあり(おるたなはカップリング&カバー集なのでノーカン)この震災は草野さんにとって心へ大きくダメージを受けてしまう出来事だったため、改めて感じたことや想いが強く込められております。(「ランプ」が顕著にそんな感じ)シングルの「さらさら」は、こういう一言で表せない関係性を歌わせたら宇宙イチなんじゃないかってぐらいスピッツ節でおなかいっぱい。私はこの曲が刺さる人、ろくな恋してないと思います。「りありてぃ」も高音が効いてて気持ちいい!避けられない経年で高い声が出なくなるアーティストもいるなか、この人は本当にすごい…。「潮騒ちゃん」とか「エンドロールには早すぎる」とかいかにも引っかかりそうな釣り餌もあるけど、個人的に最高なのが「野生のポルカ」。スピッツの歌う空はどっちかといえば夜空や夕暮れのイメージが強いんですが、時代が進むにつれ増えてきたのがこのどこまでも晴れ渡った空、それも心が浮き立って走り出してしまいそうな空。はあなんてワクワクする曲なんだ。こういうのもっと聴きたい~!!「僕はきっと旅に出る」はもうタイトルまんまの曲。最後にちょっと背中押してくれる、勇気のおすそわけ。


醒めない

1.醒めない 2.みなと 3.子グマ!子グマ! 4.コメット 5.ナサケモノ 6.グリーン 7.SJ 8.ハチの針 9.モニャモニャ 10.ガラクタ 11.ヒビスクス 12.ブチ 13.雪風 14.こんにちは

2016年発売。ちょっと自分語りになるけど、この時期の自分は振り返れば人生でいちばん忙しくて余裕がなくて、実を言うと発売当初にゲットしたにも関わらず聴いた記憶がまったくない。子グマって何?って思ったのは間違いないんですが、初耳ぐらいのノリでとりあえず聴いてみた。「醒めない」はこれからのスピッツのテーマ曲みたいだ。アニメなら第3期OP。『任せろ』が貫録あっていいぞ。「みなと」もシングル、『君ともう一度会うために作った歌さ』…ああ、響くねえ……この2曲は明らかに聴き手を意識した急にメタい歌詞。ドラマの主題歌みたいだなと思ってたら本当にそうだった「コメット」に何やらかわいい音がする(キッチンタイマーらしい)「ナサケモノ」…と色々あるけど、ちょっと飛ばして「ヒビスクス」。誰かに今作をすすめるならこれを聴いてほしいかな。雰囲気的には三日月ロックのあたりまで遡るかも。そして最後の「こんにちは」…、なんだろう、やっと求めていたものが聴けた。すごく良い!長さ2分ちょいとエンディングにしては短いんだけど、人混みの中で緩む頬を隠し切れずにスキップしてしまいそうな、等身大の希望をまとったような曲です。『怖いから無難な演技もしたけれど 勝手なやり方でお茶を濁そうぜ』とか、そのままでいいと言われているみたいで嬉しい。前作ラストの「僕はきっと旅に出る」は背中をそっと押す感じだったけどこっちは思いっきりバン!と叩いて気合入れてくれるやつだな。


見っけ

1.見っけ 2.優しいあの子 3.ありがとさん 4.ラジオデイズ 5.花と虫 6.ブービー 7.快速 8.YM71D 9.はぐれ狼 10.まがった僕のしっぽ 11.初夏の日 12.ヤマブキ

最新作。初期の、言葉を選ばずに言えば、キモい男成分が9割方抜けたなあとはっきり思ったアルバム。前々作の「小さな生き物」らへんからだいぶクリーンになってきたのはわかってたけど、私はあの絶妙なキモさが好きだったので、いささか健全すぎて削がれるのも本音。そもそもバンド活動を30年もやってたら変わらないほうがおかしいんですがあまりに刺激が少なくて、世界にのめり込んで聴くよりも日常の傍らにあるような音楽になってきたな、という感じでしょうか。「優しいあの子」の澄んだ空気には救われたけども、世間でしょっちゅう流れてたのもあって新鮮さは感じにくかったかな、ただまごうことないスピッツの曲。アルバム曲に焦点を当てるなら初っ端の「見っけ」と「YM71D」(やめないでと読むのかな)ですね。『演じてた君に恋して 素の君に惚れ直して』の素直さがいい。「まがった僕のしっぽ」は急に人格が変わったような転調に驚かされた。「初夏の日」はかつての「田舎の生活」をそのまま大人にした感じがする、ただ冒頭で言ったとおり不穏さがもうどこにもないのです。曇らず濁らずきれいな風景だ。曲名を見てもすっと歌うことができない、メロディが出てこない、引っかかる場所がなくする~っと流し聴いてしまう曲がかなり増えてきた。自分の生活環境の変化なんかもあると思うので、歳を重ねていくとまた違った角度から染みてくるのかなあと期待しておいてみる。この一枚、個人的には全アルバムの中でいちばん、パッとしないかも? 良く言えば穏やかだけど、味が薄くて物足りない。「スピッツはずっと変わってない!」っていう声も多いけど、私は結構変わっていってると思う。ひとまずそっと心にしまっておきます。ぜ~んぶ日なた、影がない一枚でした。


以上。いや、最後!後味!でも正直に書いとく。
次にアルバム出るなら2022年ぐらいかなあ。なんだかんだ生きてるうちはずっと聴き続けるバンドだと思うので、どうか健やかに活動してほしいです。

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