マガジンのカバー画像

路地裏で揺らぐ -内在性解離の当事者研究-

62
精神的虐待サバイバーであり、内在性解離を持って生きる僕たちを記録するエッセイを集めたマガジン。10人のパーツたちがそのときどきで思ったこと、考えたことをまとめている。
運営しているクリエイター

#パーツ

どうして顔は1個しかないんだろう……

どうして顔は1個しかないんだろう……

亜麻です。

このあいだ本を読んでいたら、「解離性同一性障害を持つ人の中には、鏡を見た時にそれぞれの人格の顔が映る」っていう話を見つけました。

つまり、何人もいる人格たちは、表に出ている時、それぞれ「これが自分の顔だ」と思う顔が鏡で見えるらしいのです。

え!!!!すご!!!!!

うらやましい!!!!!!

と、私たちは思っちゃいました。

人間の脳って不思議ですね。

私たちには主さんの顔し

もっとみる
名前と自己の境界線【僕とパーツの人生紀行】

名前と自己の境界線【僕とパーツの人生紀行】

こんにちは。亜麻です。

人間だれしもがそうであるように、私たちも矛盾を抱えていると思います。

私たちが抱えている矛盾は主に「名前」に関するものです。

私たちは主さん(本名)ではなく、パーツ(人格)それぞれの名前を持っています。

でも滅多にその名前を声に出すことはありません。

思ったり、書いたりするだけ。

「ああ、今直也が昼寝しに行こうとしてるな」とか、「賢也(監理者くん)があれこれ計画

もっとみる
近況と、エッセイが書けない話

近況と、エッセイが書けない話

「エッセイが書けない」という文章が「書けている」、矛盾と不思議。

しかし、本当に書けなくなってしまったのである。

ほら、今だって画面の前に頬杖をついて思考する数分間。

2行目と3行目の間には、行間には現れない思考と手元の空白がある。

そしてまた空白。

けれど書き進められないからと言って、せっかく作ったこの記事を消してしまうのも惜しくて私は困ってしまう。

実はここ1ヵ月くらい、また新しい

もっとみる
生まれた理由が自分への優しさをくれる

生まれた理由が自分への優しさをくれる

どうも。直也です。

ジェニーナ・フィッシャー著『トラウマによる解離からの回復』に、印象的な記述があった。

パーツ(解離人格)たちはなぜ生まれるのかという話だ。

ジェニーナさんは、主人格を守るためだと書いている。

「自分」を守るため、過去あるいは現在の過酷な状況を生き延びるための手段として、自分を分裂させる。

振る舞いや特性、場合によっては記憶までをも分担する。

自衛のためという、シンプ

もっとみる
「やるべきこと」と「やりたいこと」のバランス

「やるべきこと」と「やりたいこと」のバランス

こんにちは。「パニック少年」です。
「無気力」にてつだってもらいながら書きます。

「やりたいこと」の前に「やるべきこと」を挟むくせがあります。

「本を読みたい、でも、その前にお皿洗わなきゃ」みたいな感じで。

これは良い習慣なんだろうか。もしかしたら、そうかもしれない。

バランスさえ見失わなければ。

ぼくは容易にバランスを見失う。

ぼくが「やるべきこと」を優先させるのは、自分のためじゃな

もっとみる
ども、翔です。【僕とパーツの人生紀行】

ども、翔です。【僕とパーツの人生紀行】

ども、翔です。「しょう」って読みます。

17歳。

パーツたちの中での役回りで言うと、玄関みたいなことをしてます。

つまり、外に出て人と話すことが仕事ってことね。

主さんがはきはき話してて、自信に溢れてそうだったら、その時表に出てるのは大体、俺。

主さんは高校で應援團をやっていたんだけど、その時、学ラン着て学校通ったり、前に立って演説したりしてたのは基本的に俺。演舞は別の、もっと覚えの良い

もっとみる
私なりのミニマリズム

私なりのミニマリズム

こんにちは、亜麻(ああさ)です。

私についての紹介はこちらの記事をどうぞ。

私にとっての理想のミニマリズムとは私は、「少ないもので豊かに暮らす」のが好き。

いわゆるミニマリストだと思います。

理想は、クラシカルなスーツケースひとつで、どこにでも身軽に歩いて行けること。

エリサさんの著書『トランクひとつのモノで暮らす』は私の好きな本のひとつです。

……が、そう簡単に「トランクひとつ」にま

もっとみる
最近、「監理者」と仲が良い。

最近、「監理者」と仲が良い。

こんにちは、「繊細」です。

なんか最近、「監理者」くんと仲良くできている自分にびっくり。

前は絶対相容れない相手かと思ってた。

これも「パーツ」という概念が私たちの中に導入されて、主さんの認識や印象が整理されていった結果なのかな。

前はお互いの顔が見えなくて、闇雲に批判し合っていたようなのが、どんな相手か見えるようになって、分かるようになって、共通点も見えるようになってきたというか。

もっとみる
高さの変えられる机が、僕たちには合っている【僕とパーツの人生紀行】

高さの変えられる机が、僕たちには合っている【僕とパーツの人生紀行】

僕たちの机の好みはまちまちだ。

僕はこだわりが薄く、ごく一般的な学習机でも、ダイニングテーブルで作業しても一向に構わない。

一方「繊細」は、木目が優しいダイニングセットを机代わりにする暮らし方に憧れているし、

「監理者」は、飴色の木目の天板に、黒い金属製の脚がついたような、ス〇バにありそうなワークスペースがお気に入りだ。

「パニック少年」はかわいらしいサイズのテーブルと椅子を、部屋の一角に

もっとみる
【パニック少年】ぼくたちは中途半端だ。

【パニック少年】ぼくたちは中途半端だ。

ぼくたちは「解離性同一性障害」にがい当するのだろうか。

ぼくは自分のことを発達障害的な特性をたくさん持っている人だとおもっている。

でも、そう診断されたことはない。

うつ病も、適応障害も、全部そう。

ぼくはこの症状を持っていて、ある程度困っているのに、診断基準に届いていないから、診断名がつくことがない。

これは、とても中途半端でもやもやする。

ぼくたちは自己分析というか、自分の内面を見

もっとみる
泣いたあと、お風呂に入りたくなかったあの時の理由【僕とパーツの人生紀行】

泣いたあと、お風呂に入りたくなかったあの時の理由【僕とパーツの人生紀行】

どうも。直也です。

いろんなところでいろんなことを書いているうちに名乗る必要性が生まれて、定型文めいたあいさつが使えるようになった。

それはそうと、今日はふと思い出したことの話。

不思議な現象子どもはよく泣く。例にもれず、主もよく泣く子どもだった。

今、当時を振り返れば、泣いていたのは「パニック少年」や「たたかうパーツ」の方だったのかもしれないけど。

感情をふりみだしてわあわあ泣いたその

もっとみる
引き金はなくならない【僕とパーツの人生紀行】

引き金はなくならない【僕とパーツの人生紀行】

僕の趣味図書館で、子育ての本を借りてきた。

僕は子育て系の本を読むのが好きだ。

これは「より良い過去の可能性」を探求したいがために生まれた好みなのかもしれない。

「もしも、違う育てられ方をしていたら」

「もしも、より良い対応の仕方があったのなら」

本を通して、(主の、ではなく概念的な)親の目線で子育てを知ることで、やり直せない過去の記憶と折り合いをつけようとしたのが始まりだったのかも。

もっとみる
小さな遠足【僕とパーツの人生紀行】

小さな遠足【僕とパーツの人生紀行】

この間、僕たちはみんなで図書館に行った。

体はひとつしかなく、代表して歩いていたのは主だが、心の面では、僕たちはみんなで一緒に外出していた。

みんなで嬉々として出かける場所は図書館くらいではないだろうか。

「繊細」と「監理者」はカフェで読書や作業をするのが好きだが、「パニック少年」にとっては刺激でしかないから留守番を選ぶし、僕は部屋にこもって書いているのが主な役割みたいなものだから。

話を

もっとみる
僕の興味関心は、誰かの無関心【僕とパーツの人生紀行】

僕の興味関心は、誰かの無関心【僕とパーツの人生紀行】

僕たちパーツはひとつの体に同居していながら、性別も性格も興味関心の方向も、まったくもって違っている。

例えば僕は、育児や保育系の本を読むことが好きだ。インテリアに大したこだわりはなく、無難なデザインで、問題なく使えればそれでいい。

一方「パニック少年」は僕と同じ本を、子ども目線や、主が子どもだった頃の記憶と比較しながら読む。ままごとセットを中心に、おもちゃも好きだ。いつか和室の隅におもちゃを飾

もっとみる