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【ショートショート】ラストデニム
彼はデニムスーツで登場した。
ご自慢のリーバイスの〈ファースト〉のジャケットと〈ダブルエックス〉のパンツの上下だ。
式場の入り口にいた受付スタッフは、彼を見るなりすぐにどこかへ走っていった。
彼は周りの視線を尻目に、胸ポケットに入っていたシルクのハンカチーフを2本の指で取り出すと革靴の先を拭いた。コードバン製のその革靴はシャンデリアの光を受け、漆黒の輝きを放つ。
彼は睥睨する。みっともない
もぐもぐ探検記 自炊素人編
豚肉とオクラをフライパンに並べていく。
重ならないように丁寧に。
オリーブオイルにクレイジーソルトで炒める。
なぜ オリーブオイルなのか?
サラダ油が無かったのだ。どこにも見当たらない。いつの間に使い切ったのだろう。
失態だ。今週初めの職場での失態から、失態に続く失態。見事な失態劇。
おやおや、少々、イライラとしてしまったようだ。僕を1番イラつかせるのは、物を忘れる事と、それから靴下
【ショートショート】君はレジ☆スター
僕は手を止め、君を見る。
今日の仕事を悠然とこなす君。その顔はいつでも明朗だった。
君を月曜日に見た。
君を火曜日に見た。
君を水曜日に見た。
君を木曜日に見た。
君を金曜日に見た。
多分、土曜日にも見たはずだ。
課せられた単純な連続作業。永遠のスパイラルに没頭する君。
傲慢な店長に対する君。その華麗なる作り笑い。
幼稚な先輩に対する君。相手の急所をつく見事なご機嫌取り。
不機嫌な客は
【ショートショート】魔太郎のもぐもぐ冒険記
居酒屋にしろ、カフェーにしろ、自分にとってしっくりとくる場所を見つけるにはやはり足を使うしかありません。
美味しいとか、お安いとか、そのようなお店は数多くありますが、座っていてしっくりこなければ、やはりどうしても足が遠のくものでございます。
このお店は私めが2年、3年と都下を廻る中で見つけました素敵なお店の1つでございます。小洒落ているわけでも、愛想の良い店員さんがいるわけでもございません。