板橋さとし

ただのSF読者。架空団体日本SF読者クラブ会員1号。ハゲ、デブ、アブラギッシュの三重苦…

板橋さとし

ただのSF読者。架空団体日本SF読者クラブ会員1号。ハゲ、デブ、アブラギッシュの三重苦。糖尿病。肝機能障害。高血圧。貧乏性。宇宙放射線病。遊星爆弾症候群。もうすぐ死ぬ。地球だ、わしは帰ってきた。何もかもみな懐かしい…ガクッ。

記事一覧

いたばしさとし文学賞2023

長編部門 「オーグメンテッド・スカイ」藤井太洋 藤井太洋のちょっと珍しい青春小説。優等生の高校生たちが国際的なVR大会への参加を通して、広い世界に触れ、鼻っ柱をおら…

板橋さとし
4か月前
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いたばしさとし賞文学賞2022

長編部門  プロトコル・オブ…ヒューマニティ 長谷敏司 前半は、主人公とAI義足の関係構築の物語がすすみ、人身体の意義を再発見した思いで読んでいた。中盤から父の介護…

板橋さとし
4か月前
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建国記念の日に思ったことをツラツラと…

ああ、今日は「建国記念の日」か… 神武神話ではイワレヒコがスメラミコトを名乗ったのは1月1日だったのだが、明治政府が新暦への移行を理由に勝手に2月11日にしてしまっ…

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いたばしさとし文学賞2022候補

長編部門  オーラリメイカー 春暮康一 蟻の物語 ラリーン・ポール 大日本帝国の銀河 林譲治 神々の歩法 宮澤伊織 プロトコル・オブ・ヒューマニティ 長谷敏司 第二開…

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日本語を仮名表記することは、実はとても難しい。

 高橋文樹「アウレリャーノがやってくる」を密林で注文した。  微妙に岩手である。  何って主人公が岩手出身の美少年ということになっているのだ。  主人公は姉と上京…

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かつて日本の山が禿山で、今の山は近代の植林事業の結果であることを振り返って、人間と自然の在り方についてちょっと考えてみた…

 現代日本人が知っている故郷の山は近代の植林事業で作られたもので、大半は太平洋戦争後に形になった。 それ以前、日本の故郷の山は「禿山」か「草原」が普通だった。 藩…

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いたばしさとし文学賞2021

 いたばしさとし文学賞2021発表です。 今年はコロナ禍で引きこもっていたことが多い一年でした。 今年は先ず話題の作品「サハリン島」を読み始め、その後「三体3」が出て…

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いたばしさとし文学賞2021 候補

長編部門候補 平谷美樹「原敬」 カズオ・イシグロ「クララとおひさま」 荒牧義雄「もはや宇宙は迷宮の鏡のように」 劉慈欣「三体(全編)」 柏葉幸子「亜ノ国ヘ 水…

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いたばしさとし文学賞2020

 この賞は一年に読んだものから、何となく面白かったものを選んで顕彰するものです。自分の単なる遊びであり、何の権威も有り難みもなく、誰にも何の利益もないと言う世間…

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いたばしさとし文学賞2020 候補

いたばし賞は私がこの一年で読んだり見たりした作品で特に印象に残ったものを勝手に顕彰する遊びです。 自分自身の読書を振り返る機会であり、賞と言うのは洒落です。何の…

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いたばしさとし文学賞2019 候補作品。

 この賞は板橋哲の遊びであり、一片の権威も有り難みもなく、受賞者には何の利益もない世間的にはどうでも良いものですが、私が楽しいから良いのです。 それでは候補作品…

いたばしさとし文学賞2019

「いたばしさとし文学賞2019」 この賞は一年に読んだものから、何となく面白かったものを選んで顕彰するものです。自分の単なる遊びであり、何の権威も有り難みもなく、誰…

プーチンの動員令が発せられたので、ロシアとモンゴル(タタール)についてちょっと考えてみた。

 モンゴル国のエルベグドルジ元大統領が、英語でプーチンに対して戦争停止を呼びかけ、同時にロシア国内のモンゴル系民族に向かって戦争と総動員を逃れてくるならば、モン…

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英国エリザベス女王の崩御の報に触れ、スコットランドについて思ったこと

 先日、うちの老母が亡くなりました。お悔やみをいただいたみなさん、ありがとうございました。  うちのお袋は何故だかロイヤル何とかの話題が好きで、96年の生涯の自慢…

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小学生がランドセルを引きずって歩くことを提案したことについて

 何やらどこかの小学生がランドセルをキャリーバッグのように運ぶパーツを考案したらしい。  今時の小学校にはそういう授業があるのか、あるいは昔の図工の時間が高度化…

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憲法記念日に思ったこと

 プーチンのロシアを見れば、立憲体制を強化することはあっても緩めてはならないことは、誰が見ても明らかだ。 ところが日本で改憲を主張する人々の求めるところはその正…

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いたばしさとし文学賞2023

長編部門
「オーグメンテッド・スカイ」藤井太洋
藤井太洋のちょっと珍しい青春小説。優等生の高校生たちが国際的なVR大会への参加を通して、広い世界に触れ、鼻っ柱をおられながらも成長していく姿に胸が踊る。
難題に対して安易に結論を出すことをやめた主人公たちが、大会の趣旨から脱して自分たちの多様な声を発信する結末は、いかにも自己形成の最中にある高校生にふさわしく、爽やかだった。
読んでいる途中で何度も自

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いたばしさとし賞文学賞2022

長編部門 
プロトコル・オブ…ヒューマニティ 長谷敏司
前半は、主人公とAI義足の関係構築の物語がすすみ、人身体の意義を再発見した思いで読んでいた。中盤から父の介護が織り込まれ、認知症で父の人間性崩壊に直面する主人公の様子は真に迫っていた。父の介護に挫折しつつもAI義足をとおした身体性の再構築にいどむ主人公の強い思いに奮い立たされた。文句なしの今年のベスト長編だった。

短編部門
主観者(「法治の

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建国記念の日に思ったことをツラツラと…

建国記念の日に思ったことをツラツラと…

ああ、今日は「建国記念の日」か…
神武神話ではイワレヒコがスメラミコトを名乗ったのは1月1日だったのだが、明治政府が新暦への移行を理由に勝手に2月11日にしてしまったのだった。(何故新暦1月1日にしなかった!)
9世紀に力づくで征服された岩手には、実は神武神話などどうでも良い話なのだが、岩手の場合神武神話より「裏神話」のほうが重要で、裏神話ではイワレヒコに倒された畿内の王ナガスネヒコには兄アビヒコ

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いたばしさとし文学賞2022候補

いたばしさとし文学賞2022候補

長編部門 
オーラリメイカー 春暮康一
蟻の物語 ラリーン・ポール
大日本帝国の銀河 林譲治
神々の歩法 宮澤伊織
プロトコル・オブ・ヒューマニティ 長谷敏司
第二開国 藤井太洋
同志少女よ、敵を撃て 逢坂冬馬

短編部門
主観者(「法治の獣」収録) 春暮康一
老人と人魚(「獣たちの海」収録) 上田早夕里
火星環境下における宗教性原虫の適応と分布(「異常論文」収録) 柴田勝家
目覚めよ眠れ(「20

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日本語を仮名表記することは、実はとても難しい。

日本語を仮名表記することは、実はとても難しい。

 高橋文樹「アウレリャーノがやってくる」を密林で注文した。
 微妙に岩手である。
 何って主人公が岩手出身の美少年ということになっているのだ。
 主人公は姉と上京し、岩手の日本語を使って暮らしている。
 作品中の岩手日本語の表記は、不完全だがなかなか頑張っている。
 ちゃんとした文法書を読んで勉強したのではなさそうだが、おそらく岩手県民の話者を知っているか、岩手県民に監修してもらっと思われる。
 

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かつて日本の山が禿山で、今の山は近代の植林事業の結果であることを振り返って、人間と自然の在り方についてちょっと考えてみた。

かつて日本の山が禿山で、今の山は近代の植林事業の結果であることを振り返って、人間と自然の在り方についてちょっと考えてみた。

 現代日本人が知っている故郷の山は近代の植林事業で作られたもので、大半は太平洋戦争後に形になった。 それ以前、日本の故郷の山は「禿山」か「草原」が普通だった。 藩閥政府によって、一旦人々は里山から締め出され、植林政策によって現在の姿の山が増えたが、太平洋戦争中の切り出しで再び禿山になった。

 明治から昭和にかけての里山から締め出しと近代植林事業の開始は、日本列島の生態系の大改造でもあった。 もっ

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いたばしさとし文学賞2021

 いたばしさとし文学賞2021発表です。 今年はコロナ禍で引きこもっていたことが多い一年でした。 今年は先ず話題の作品「サハリン島」を読み始め、その後「三体3」が出て、「クララとおひさま」が出ました。なにこれ、楽しすぎでしょ?
 これらを同時進行で読んでいたら、今度は短編集のラッシュが来ました。4月に出た「ポストコロナのSF」がいきなり傑作揃いで何度も読み返しました。
 NOVA2021夏号も傑作

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いたばしさとし文学賞2021 候補

長編部門候補

平谷美樹「原敬」
カズオ・イシグロ「クララとおひさま」
荒牧義雄「もはや宇宙は迷宮の鏡のように」
劉慈欣「三体(全編)」
柏葉幸子「亜ノ国ヘ 水と竜の娘たち」

短編部門候補

津原泰水 カタル、ハナル、キユ
柴田勝家 クランツマンの秘仏
樋口恭介 愛の夢
坂永雄一 無脊椎動物の想像力と創造性について
高野史緒 百万本の薔薇
…むむむダメだ。今年は良い短編集が何

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いたばしさとし文学賞2020

 この賞は一年に読んだものから、何となく面白かったものを選んで顕彰するものです。自分の単なる遊びであり、何の権威も有り難みもなく、誰にも何の利益もないと言う世間的にはどうでも良いものですが、まぁ自分が楽しいから良いのです。 それでは、受賞作品の発表です。

長編部門① 林譲治「星系出雲の兵站(全編)」

 異星人との不幸な紛争に際し、軍人たちが英雄志向を排除して紛争の拡大防止と異星人理解に取り組

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いたばしさとし文学賞2020 候補

いたばし賞は私がこの一年で読んだり見たりした作品で特に印象に残ったものを勝手に顕彰する遊びです。
自分自身の読書を振り返る機会であり、賞と言うのは洒落です。何の権威もなく、受賞者に特典もありません。

でも、まぁ自分が面白いから良いの❤️

長編部門

藤井太洋「ワン・モア・ヌーク」
飛浩隆「零號琴」
劉慈欣「三体」
劉慈欣「三体2 黒闇森林」
林譲治「星系出雲の兵站(全編)」
菅浩江「博物館惑星

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いたばしさとし文学賞2019 候補作品。

 この賞は板橋哲の遊びであり、一片の権威も有り難みもなく、受賞者には何の利益もない世間的にはどうでも良いものですが、私が楽しいから良いのです。 それでは候補作品をおさらいしましょう。

長編部門賞候補

星系出雲の兵站 林譲治  
宿借りの星 酉島伝法  
不見の月 菅浩江  
東京の子 藤井太洋  
雪降る夏空にきみと眠る ジャスパー・フォード  
プロジェクト・ネメシス ジェレミー・ロビンソン

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いたばしさとし文学賞2019

「いたばしさとし文学賞2019」 この賞は一年に読んだものから、何となく面白かったものを選んで顕彰するものです。自分の単なる遊びであり、何の権威も有り難みもなく、誰にも何の利益もないと言う世間的にはどうでも良いものですが、まぁ自分が楽しいから良いのです。 それでは、受賞作品の発表です。

長編部門賞 藤井太洋「東京の子」  極近未来の青春ストーリー。多文化化した東京に暮らす青年を主人公に、既存の日

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プーチンの動員令が発せられたので、ロシアとモンゴル(タタール)についてちょっと考えてみた。

プーチンの動員令が発せられたので、ロシアとモンゴル(タタール)についてちょっと考えてみた。

 モンゴル国のエルベグドルジ元大統領が、英語でプーチンに対して戦争停止を呼びかけ、同時にロシア国内のモンゴル系民族に向かって戦争と総動員を逃れてくるならば、モンゴルは受け入れると表明した。

Message from Elbegdorj Tsakhia, President of the World Mongol Federation
https://www.youtube.com/watch?v

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英国エリザベス女王の崩御の報に触れ、スコットランドについて思ったこと

英国エリザベス女王の崩御の報に触れ、スコットランドについて思ったこと

 先日、うちの老母が亡くなりました。お悔やみをいただいたみなさん、ありがとうございました。
 うちのお袋は何故だかロイヤル何とかの話題が好きで、96年の生涯の自慢は現在の明仁上皇さまと美智子上皇后さまのロイヤルウェディングの馬車行列を見たことでした。
 そんなわけで老母は英国エリザベス女王が同じ年齢であることにも何やら良い印象をもっていたらしく、NHKの英国ドラマをエリザベス女王が見ていることを知

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小学生がランドセルを引きずって歩くことを提案したことについて

小学生がランドセルを引きずって歩くことを提案したことについて

 何やらどこかの小学生がランドセルをキャリーバッグのように運ぶパーツを考案したらしい。

 今時の小学校にはそういう授業があるのか、あるいは昔の図工の時間が高度化したのか知らんけど、先生の指導のもとで小学生がそういう道具を思いついて、実際に作った。
 で、それだけのことなので「ふうんよく思いつたね、えらいね。いい勉強しているね」で済ませれば良いのだが、何やら一部の大人たちが噛み付いているらしい。

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憲法記念日に思ったこと

憲法記念日に思ったこと

 プーチンのロシアを見れば、立憲体制を強化することはあっても緩めてはならないことは、誰が見ても明らかだ。 ところが日本で改憲を主張する人々の求めるところはその正反対だ。 余りにも愚かで情けない。
 憲法の99条は公務員の憲法尊重擁護義務を定めたものだが、これを真っ向踏み躙ったのが安倍晋三だ。 憲法53条は議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣が国会を召集する義務を定めている。 ところが安倍

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