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英国エリザベス女王の崩御の報に触れ、スコットランドについて思ったこと

 先日、うちの老母が亡くなりました。お悔やみをいただいたみなさん、ありがとうございました。
 うちのお袋は何故だかロイヤル何とかの話題が好きで、96年の生涯の自慢は現在の明仁上皇さまと美智子上皇后さまのロイヤルウェディングの馬車行列を見たことでした。
 そんなわけで老母は英国エリザベス女王が同じ年齢であることにも何やら良い印象をもっていたらしく、NHKの英国ドラマをエリザベス女王が見ていることを知ると、わけわからんとか言いながらテレビをじっと見つめていたものでした。
 その老母も先日心不全で急逝しました。胸が痛いと言って入院すると、2日もしないうちに死んでしまいました。医師から家族を呼べと言われて集まりましたが、病院に行くと既に意識はなく、その数時間後には死亡。
 英国女王も数日前まで元気だったのが急に亡くなったそうなので、たぶん死因も老母と同じなんじゃないかな?
もしかしたら今頃あの世の入り口で老母と英国女王は身近なところで順番を待っているかもしれません。
 さて、新国王チャールズ3世であるが、スコットランドやウェールズのUK離脱がどうなるのか注目です。 もしかするとUK最後の国王になるかもしれないからです。
 前回のスコットランド独立投票はUKからの独立であっても、ポンド通貨圏やウィンザーマウントバッテン朝からの離脱ではありませんでした。 スコットランドの世論は完全独立、EU加盟国としての独立、コモンウェルス加盟国として独立などなど、いくつかの主張があってひとつではないのです。 今度はどうなるかな…
 前回のスコットランド独立投票では、ウィンザーマウントバッテン朝からの独立は主張されなかった。 仮に独立が成立したとしてもスコットランドはUKと同君連合を組み、女王エリザベスは「スコットランド女王エリザベス1世」の肩書きを保持することになっていた。 この辺はエリザベス女王の人徳だったんだろうね。
 しつこいようですがエリザベス1世です。 エリザベス2世ってのはイングランド女王としての肩書き。 16世紀チューダー朝のエリザベス1世がいるから二人目。 しかしチューダー朝はスコットランドを支配していない。 だからスコットランドにとってはエリザベスという名前の女王は一人目なのでした。
 エリザベス1世には子供がいなかったのでウェールズ人のチューダー朝は断絶。 エリザベスの祖父ヘンリ7世の孫マーガレットがスコットランド王家に嫁いでいた縁で、スコットランド王ジェームズ6世がイングランド王を兼任してジェームズ1世を名乗ることになった。 これが1603年。
 スコットランド人スチュアート王家はなんやかんやで絶対王政と内乱と清教徒革命とオランダ亡命と名誉革命とイングランド・オランダ帝国を経験して、1702年アンが即位すると1707年イングランドとスコットランドは正式に合併し大ブリテン王国に改称された。アンはその初代女王。
 この1707年の合併は対等なはずだったが、実際はイングランドによるスコットランドの植民地化だった。スコットランド国民の多くは合併に反対だったが、政府と貴族は賛成だった。賛成の理由は経済発展の見込みだったが実際は買収されていたからだった。
 実際に合併後のスコットランド経済は思わしくなく、合併賛成派の貴族も合併後に反対にまわり、貴族院に合同法の破棄が提案される有様だった。 しかし合同法破棄の提案は否決され、グレートブリテン王国は現在まで存在している。
 1714年アンが死ぬとスチュアート朝が断絶し、スチュアート朝ジェームズ1世(スコットランド王ジェームズ6世)の孫ゾフィーを母としていたハノーヴァー王ゲオルグ・ルードウィヒが大ブリテン王とアイルランド王を兼任することになった。 この王朝をハノーヴァー朝と言う。
 で、このハノーヴァー朝大ブリテン王国は第一次世界大戦でドイツ帝国と交戦したので、家名をウィンザーに改めた。 そんなわけで現在のイギリスの王家はウィンザー朝なんだけど、エリザベス女王の夫君フィリップ・マウントバッテンさんの家名もあわせて、ウィンザーマウントバッテン朝とも言うんだと。
 ところがスコットランドではそうスムーズにいかなかった。 アンの弟のチャールズが王位を主張し、フランス王ルイ14世とスコットランドのジャコバイトの支持を得てチャールズ3世として即位してんのね。
 最終的にはチャールズ3世は抗争に敗れ、ジョージ1世の王位は揺るがなかったんだけど、その後のジャコバイトは何度もロンドンに対して反乱を起こし、その度に敗れた。 結局1746年の衣装法でスコットランドのクランが解体され、現在まで続くスコットランドのイングランド化が進むことになった。
 で、女王エリザベスの後はプリンスオブウェールズである長男のチャールズさんがチャールズ3世として即位することになったんだけど、これ、スコットランドからみたらチャールズ4世かもしれないわけ。 スコットランドのジャコバイトには合同法に遡って反対するスコットランド愛国主義の人も多かった。
 現在スコットランドはUKからの独立を求める人と残留を求める人が半分半分という状態で、世論は分断されている。しかしイングランド化が進んでしまった現在でこれだけ独立派がいるってのは驚異的なことで、独立運動がロンドン政府への不満の受け皿になってるってことなんだと思われる。
 2014年の独立投票の際の両派のキャンペーンは非常に理性的で大いに感心したんだけど、EUからの独立の影響で、ロンドン政府はスコットランドUK残留の条件を実行出来ないでいる。 これはUK残留派に対する裏切りなわけで、独立派と残留派が一致してロンドン政府に不信感を抱くことになっている。
 去年の段階でスコットランド国民党は独立運動を再開し、独立を求める住民投票の再実施に動き出していた。 トーリー政権の新首相トラスさんはサッチャーを尊敬していると公言しているそうなので、スコットランドとの対立が表面化するのは時間の問題だろう。
 このタイミングで、イングランド人も忌み嫌うサッチャーを範とする人物を首班に抱く英国政界のセンスもなかなかのもので、本来トーリーを支持しているイングランドの地方有産者(いわゆるジェントリー)はサッチャーの悪夢がもう一度襲ってくるかもしれないと不安でいっぱいだろう。
・・・と、まぁ、ちょっとwikipediaに目を通すだけで、この程度のことは言えちゃうわけです。はい。
 そんなわけでチャールズ3世(4世?)の下でイギリスは激動すると思われるので注目です。 私はイングランドに恨みもつらみもないし、それどころかいい国だとすら思ってるんだけど、それ以上にスコットランドが好きなので、スコットランドが独立に走ったら応援します。

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