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IDx | IDL magazine

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多様な背景を持つIDLメンバー(=IDLists)が、国内外のデザイントレンドや、仕事や生活するうえで日々感じているちょっとした「問い」や「気づき」を、わかりやすいストーリーとと…
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#デザイン思考

「N=1発想」について考える

「N=1発想」について考える

先日、敬愛する木村石鹸工業株式会社の木村さんのツイートに(勝手に)とても共感というか、インスパイアされた点を感じたので脊髄反射的に反応して、考えが未だまとまらないうちに下記のようなツイートをしてしまいました。

木村さんのツイートは、作家の高橋源一郎さんが『さようなら、ギャングたち』という作品を書かれた際に、同じく作家の吉本隆明さんたったひとりに向けて書いたというもので、そのことにシビレたわけなん

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DtRとRtDの差異私感

DtR(Design thorough Research)と、RtD(Research through Design)は混同されがちだけど、

前者は

リサーチ活動によって「何がどうあるべきか」という実践目的そのものを見出すこと。

後者は

人工物との相互行為を通して疑問を生成し、実践に先立ち「なにを知るべきか」を見出すこと。

つまり、前者と後者はともに実践を重要視していつつも、起点とする実

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「デザイン思考」って、何のことを言うてはりますのん?

「デザイン思考」って、何のことを言うてはりますのん?

この記事、すごく良記事だと思いました。皮肉です。

https://www.technologyreview.com/2023/02/09/1067821/design-thinking-retrospective-what-went-wrong/

なぜかというと、「デザイン思考(design thinking)」が、いかにIDEOとd.schoolが色々な事情を加味して手法論化した「創造的問題

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デザイン思考再考−「共感」から「コミットメント」へ−

デザイン思考再考−「共感」から「コミットメント」へ−

連休の間、時間ができたばかりに普段は考えないような余計なことばかり考えてしまいます。

個人的なこだわりではありますが、デザイン思考(この論考では限定的にIDEO−d.school的なデザイン思考を指します)のプロセスの始まりにある「共感(Empathize)」というステップに(文字通り)共感はしつつも、どこかでずっと違和感を感じていました。

デザイン思考の根底にある概念が「人間中心デザイン(H

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プロジェクト遂行の「盲点」とは?
──〈想定外〉に陥らないための思考法

プロジェクト遂行の「盲点」とは? ──〈想定外〉に陥らないための思考法

ビジネスの現場であっても、人生と同様に不確かなことばかりである。
本稿では、その不確かさに向き合ってみようと思う。私たちは少なからず、人生のどこかの時点で──それは職場でかもしれないし、プライベートでかもしれないが──、その不確実性に襲われることを避けられないからだ。
考えてみよう。あなたは今、成功が確実視されたプロジェクトに取り組んでいる。調査は済み、このプロジェクトはイケる、などと考えている。

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いかにしてデザイン組織をデザインするか <DesignOps 生い立ち編>

いかにしてデザイン組織をデザインするか <DesignOps 生い立ち編>

デザイナーが所属するデザイン組織(部門)は、他のどの部門よりも洗練された(クリエイティブな)環境で仕事ができる。逆に言えば、そうであってこそセンスあるアウトプットが出せる・・・
しかし、たいていの場合、そんなことはない。
システムインテグレーターがセキュリティ雁字搦めの環境に閉じ込められ、広告代理店が自社のブランディングをロクにできないように、多くのデザイン(もしくはそれに準ずる)組織は自身の仕事

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"シンプルで力強い"を求めて

"シンプルで力強い"を求めて

周辺の山々に赤や黄が混じり始めた。洛北の紅葉はいい。
視覚的にも明確に秋へと変化していく様を感じる11月。叡山電車鞍馬線も昨年の土砂災害から復旧され、京都北山はハイカーにとって本格的なシーズン入りを迎えている。

この時期に一年を振り返るのはまだ早いかもしれないが、今年を通じて考えていた、"シンプルで力強いデザイン"への憧れのような思いについて、頭の中の冬支度としてここに記しておこうと思う。

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トランスフォーメーションを阻む3つの壁

トランスフォーメーションを阻む3つの壁

巷ではさまざまな“トランスフォーメーション”が言われている。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)から、CX(コーポレート・トランスフォーメーション)さらにはSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)まで、ちょっと前まで「X」といえば“エクスペリエンス”だったはずなのに。

さておき、日本において、それらトランスフォーメーションの取り組みが遅れていると言われつつも、様々な企業や組織

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フィクションがビジネスをソウゾウする ~SFプロトタイピングのススメ~

フィクションがビジネスをソウゾウする ~SFプロトタイピングのススメ~

IDL[INFOBAHN DESIGN LAB.]は、企業が新規事業を開発するプロセスを“デザイン”という能力で支援している。

新規事業開発にあたっては、既存の製品やサービスを改善したり、生活者に実際にいま感じている不満や欲求をインタビューなどで汲み取って商品化する連続的な発想と、いまは影も形もないがゆえにそもそも何を評価すれば良いのかすら分からないようなアイディアからスタートする非連続な発想と

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ムナーリのデザイン・アルゴリズム  みんながデザイナーになれるように

ムナーリのデザイン・アルゴリズム  みんながデザイナーになれるように

私はイタリアでデザインを学び、プロダクトデザイナーとしての経験を積み、現在はIDLでデザインエンジニアリングに取り組んでいます。イタリアのアーティストでありデザイナー、ブルーノ・ムナーリのデザインアプローチは、私がデザインプロセスを理解するための最初の足がかりのひとつであり、当時驚きをもって受け止めていました。そして、それはおよそ40年前の手法でありながら、なんと現在のデザインシーンにも応用可能で

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生み出される小宇宙の曖昧な性質

生み出される小宇宙の曖昧な性質

昨年秋頃、仕事で某プロジェクトのちょっとしたBGM・SEのサウンドデザインを担当する機会があった。私が作ったIDL/Rの音を聴いてくれた方からのオファーであった。その制作期間に少し考えていたことをこちらに整理しておきたいと思いラフに下書きを進めていたのだが、なかなか書き終えられないまま長らく寝かせてしまっていた。

新緑は深緑となり、その濃さを目の舌で堪能しながら近所の無人販売に立ち寄ると、地野菜

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本質までを身軽に歩く

本質までを身軽に歩く

海と山、どちらが好きか。

世の中的には、どちらかというと「海」と答える人が多いのだという統計データ的な何かを、いつだったか、どこかで見たおぼろげな記憶がある。
私も生まれ故郷が海辺の街だったこともあり、迷わずに「海」だと答える派閥に所属して長かったものだが、流れ流れて数年前より山の麓で生活を営んでいることもあり、山ならではの良さというものを図らずも知ってしまったがゆえに、今改めて同じ問いを問われ

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音風景に隠された果実の収穫からの考察

音風景に隠された果実の収穫からの考察

霊峰・比叡山の麓、京都洛北修学院。
数年前、私はこの地域に移り住んできた。

世の中の通常が変わってしまってからは、街中のオフィスにいる時間よりも自然豊かなこの地域で過ごす時間の方がすっかり長くなった。最近では週に二度三度、ゆるく思案を巡らせながら近所を歩き、点在する無人販売をハシゴして新鮮な地野菜を物色することが、生活の営みにおけるささやかな楽しみのひとつになりつつある。

そして、歩きながらず

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「IDL/R」サウンドデザインの立場から

「IDL/R」サウンドデザインの立場から

先日私たちIDL [INFOBAHN DESIGN LAB.](以下、IDL)は、ラジオ局「IDL/R」(アイディーエルアール)を開局した。
今回はこの音声コンテンツで流れるジングルやサウンドロゴの作曲、編集など、サウンド周り全般のデザインを担当する立場から、自身の音の制作プロセスにおける思考を振り返りながら、少しばかり語りを興じてみたいと思う。
技術解説ではないので、もしもその辺に期待を寄せる方

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