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☆癒しのとき・宝箱☆

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#短編小説

短編小説 | 僕はタモリとして生きる😎

短編小説 | 僕はタモリとして生きる😎

 今、振り返ってみると、僕には尖ったところがあったように思う。幼稚園の頃には、みんなで一緒に「ギンギンギラギラ」なんて歌うことが堪らなく嫌だった。それですぐに幼稚園をやめたから、小学生になるまでは、ほとんどひとりで過ごすことが多かった。

 ホントにイロイロなことがあったなぁ。ある友人と遊んでいるときに、片目が見えなくなるくらいの大怪我を負った。今もほとんど視力がない。けれども、その友人の名前は誰

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掌編小説|魅惑のマリアージュ |シロクマ文芸部

掌編小説|魅惑のマリアージュ |シロクマ文芸部

 秋と本妻が膝を突合せている。二人が正座で向かい合う十畳の客間は替えたばかりの畳が青々として、独特な香りが部屋を満たしている。
 私は彼女たちから二メートルほど距離を置いたところで、上等な赤ワインを注いだ頭の大きなグラスを持ち、くるり、くるりといたずらに回している。秋と妻が作り出すなんとも言えない空気をこの赤いワインにたっぷり含ませているのだ。そうしてワイングラスに鼻を寄せ、すすっと下手くそに芳醇

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*白紙の私・続編・1

*白紙の私・続編・1

 「ねぇ、今日の夜ごはんスーパーの惣菜お互いに好きなもの買いに行こうよ!たまにはそんな夜ご飯食べてみたいな」

 ピーンとはっていた糸が何の前触れもなくプツンと切れた感覚を覚えた。
 自分のしてきた事が一気に全否定された気分になって、作りかけのクリームシチューの人参を切る手を止めて、おそるおそる後ろを振り返ったら、能天気なくらい、大真面目なくらい、不器用なくらい真っ直ぐな娘の瞳が、逃さないように私

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長夜の長兵衛 蟋蟀在戸 (きりぎりすとにあり)

長夜の長兵衛 蟋蟀在戸 (きりぎりすとにあり)

蟋蟀

 黄色味を増した葉が、そろそろと降りて土に添う。
 ちらこらりらりら。迎えるように蟋蟀が鳴く。
 銀杏より何やら話しかけられているように思うて、久兵衛は梢を仰ぐ。
 きらり、お天道様の筋が伸びる中をまた一枚、たどたどしく落ちてこようとしている。随分と茶色い、ようよう見れば。
 蝶である。
 片方の羽根が破れたまま飛んでおるのだ。ななめ下へと思えば少し上へ、そしてまた下へ。少しずつ銀杏から離

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[企画参加] 私の書くルール

[企画参加] 私の書くルール

 「文章の書き方」や「noteの書き方」については、何度も書いています。だから、繰り返して言うほどのことはありません。
 けれども、たまに振り返ってみることは意義のあることですし、過去に私が書いたことを読んでいない人もいらっしゃるでしょうし、自分自身ですら忘れてしまっていることもあります、きっと。

 今回、ももまろさんとヤスさんの記事を拝読して、改めて「私の書くルール」というお題で、まとめておく

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初秋に想う 〜秋ピリカGPに応募してみた雑感〜

初秋に想う 〜秋ピリカGPに応募してみた雑感〜


■秋ピリカGP「秋ピリカグランプリ」は、ピリカさんが主催されているnote企画で、界隈では有名な企画。ただ私は今回が初参加で、この企画を知った理由も「たまたまタイムラインで応募した方の記事を見たから」でした。

ピリカグランプリはテーマと文字数縛りがあり、今回のテーマは「紙」で文字数は1200文字。「面白そう!」と言う、単純な興味半分で参加したわけであります😅

■自作紹介ってことで、特に深く

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ふたつの国宝 #シロクマ文芸部

ふたつの国宝 #シロクマ文芸部


752年 奈良 東大寺 廬舎那仏 

 金色に輝く廬舎那仏が私を見下ろしている。見下ろされた私は昂然と頤をあげてその像を見上げた。宗教と芸術がせめぎ合っている。出資者と芸術家の関係に、何かが絡みついている。いや、偶像と信仰の関係に、欲望が絡みついているのか。完全に純粋ではない何かが、私の目を曇らせる。

 どうだすばらしいであろうと国家の顔をした男が偉そうに言うが、作ったのは他国の人間の技術と名

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短編 | いい日旅立ち

短編 | いい日旅立ち

 帰りの電車は空いていた。膝に乗せたリュックの透けたポケット越しに、キンクマが熟睡しているのが見える。

 ペットショップでひとりぼっちだったキンクマ。そして、ともに生きた妻に俺は依存してきた。しかし、今なら言える。人生のどん底から一緒に乗り越えた家族であると。

 キンクマは、言語とネットを駆使して、異類の人間界の中で自立して生きてきた。

 しかし、俺はどうだっただろうか?
 俺は遥香を頼るこ

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【詩】十五夜

【詩】十五夜

昔は何もないから

なんでも自分でしなきゃならないって

そうやって言われて育てられた

祖母はその通り自分で何でもする

老眼鏡をつけてもよく見えない針の穴に

すぐに糸を入れる

少しくらい服が破れたり切れても

きれいに目立たない様に縫い

元通りにしてしまう

そのせいで僕は新しい服が

なかなか買えなかったけれど

姉がお祭りに着て行った

昔ながらの柄の浴衣は

祖母が作ったもの

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貧しい絵描きの御伽噺1(短編全2回)

貧しい絵描きの御伽噺1(短編全2回)

 今から少し前、あるところに、心の病でからだが動かなくなった絵描きがおりました。
 絵描きは絵描きですから、絵を描くことしかできません。
 絵を描けなくなった絵描きは、自分がもう、何の役にも立たないのだと悲しんで、消えることばかり考えていました。
 けれども、絵描きには小さな子供がありましたので、役に立たなくても消えることはできませんでした。
 子供は絵描きに言います。
「しぬまで絵を描きつづける

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四丁目の神様【短編小説:約5,000字】

四丁目の神様【短編小説:約5,000字】

「だるぅっ。だっるるるるぅぅぅっ」
東京は豊島区西巣鴨四丁目にある安アパートの一室で、六畳一間の畳に横たわりながら、さも面倒くさそうに中年男が叫んでいる。

「田中さん、ご指令ですよ」
そう言ったのは同居のお目付け猫、名前をイナリという。純白の毛色にぽっちゃりボディ、目は細く垂れ気味である。
「手術を手伝って来いだそうです。2丁目のハルって女の子が今日手術らしくて、その執刀医がヤブで、バレていニャ

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短編 | 浮雲⑨「ザンスの逆襲」

短編 | 浮雲⑨「ザンスの逆襲」

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短編 | 浮雲⑨

 そうよ。私は内観したり、創作したくて、ブログ記事を書いているのだ。異性との関係を持ちたいなら、マッチング・アプリを使えばいい。

 このブログは、好みの異性を探すためにあるのではない。交流と言っても、世間話をするためにあるのでもない。ブロガー1人1人が自分の作品を書き、相手の作品を読み、高め合うためにあるんだ。

 ザンス🇫🇷💞という人と私の考えと

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短編 | 浮雲⑦

短編 | 浮雲⑦

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 自分の書きたいことを書く。他人の評価なんて気にしない。書く内容なんて立派なものなんかじゃなくてもいい。
 話題がどうであれ、私が本当にいいなと思ったことを楽しそうに語れば、それを読む人もきっと楽しい気持ちになれるに違いない。
 私はそういう心持ちで自らのブログを更新していこうと考えていた。

 しかし、ブログを開けば、自然と他の人の記事も目に付くものだ。決して楽しい気分では

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短編 | 浮雲⑤

短編 | 浮雲⑤

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 私が見かけた幸せそうな老夫婦のことを書いた記事は、思いの外、好評だった。

「歳をとっても、仲睦まじくていいですね」
「なんか憧れてしまいます」
「いいなぁ。夫婦の理想ですよね😊」

 私のコメント欄は、好意的な言葉で埋め尽くされていった。レスを書くのに忙しくて、自分の新しい記事を更新できないのではないか?、というくらい予想以上に反響が大きかった。

「あぁ、何も特別なこ

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