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エッセイ他

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長めの詩と、物語と、ポエムの延長線上にあるエッセイと。
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#多様性を考える

体の性を自分で決める

体の性を自分で決める

 胸が膨らんでいても、子宮に続く穴があっても、毎月のように血を流しても。この体は「男の体」なのだ。

 常識で考えるなら女の体なのだろうけれど。体の性を決めるのは、意外とそんなに簡単じゃない。

 性器の形とか。

 顔の造りとか。

 背の高さとか。

 毛の生え方とか。

 筋肉や脂肪の付き方とか。

 そういうもので僕らは何となく人の性別を判定している。

 基準はあくまで平均に基づくもので

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戸籍の性別変更要件と、自分の体を自分で決めるということ

戸籍の性別変更要件と、自分の体を自分で決めるということ

 戸籍の性別を変更するための手術要件撤廃に関するニュースを見た。手術要件を擁護する当事者のコメントが支持を集めていた。だから当事者が手術要件を支持しているという話ではなく、この現象自体が当事者に対する抑圧の強さを示していると思った。わがままは言わず、多数派に配慮して許していただかなければならない、そういう精神が染み付いているような気がした。

 僕自身は手術要件はなくていいと思っている。ホルモン治

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性別を医学的に決められるのは怖い

性別を医学的に決められるのは怖い

 性自認は遺伝子で決まるという説を目にして怖くなった。

 トランスジェンダーがトランスジェンダーであることが医学的に証明できるようになると喜ぶ人もいるかもしれない。でも僕はそういう発想自体が怖いのだ。

 遺伝子を調べたら僕の自負する性別がわかると考えるなら、僕の性別を他人が決められることになる。僕が何を感じ何を考えているかなんて何も知らない専門家が、あなたは女ですとか男ですとか勝手に判別するの

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恋する人がマイノリティの世界

恋する人がマイノリティの世界

 もしも100人のうち99人が恋を知らない世界だったら。

 恋を知るただ1人は確実に「病気」だっただろう。

 動機や火照りなどの身体症状。不眠。異常な執着と集中力の低下。正常な判断力の喪失。当事者ですら「恋の病」と表現する現象が、非当事者の目に病気と映らないわけがないのだ。

 きっと精神科病院に連れて行かれ、時代が時代なら入院させられて、「治療」と称して無意味に心を踏みにじられたことだろう。

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多様性を考える前に

多様性を考える前に

 世の中には、いろいろな体、いろいろな感覚、いろいろな思想を持った人がいる。大昔からずっといる。多様性の時代と言われるようになって急に生まれてきたわけではない。

 しかし、多様な人々を尊重しようという流れが強まると、特に多数派の側が反発を感じることがある。

 セクシャルマイノリティの例で言えば、「同性から告白されたら断ってはいけなくなるのではないか」という不安の声を目にしたことがある。同様の意

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戦えないなら理想を描く

戦えないなら理想を描く

 差別や偏見と戦っている人たちがいる。

 声を上げることも必要なのだと思うけれど、自分はそうはなれないなとも思う。

 保身と言えば保身には違いない。しかし言い争いの場に立つだけの強さを持っていないのはもう仕方がない。

 明らかな差別だったとしても、「そういうことを言われると傷つくのでやめてほしい」とどれだけ言葉を選んで伝えたとしても、「責められた」「攻撃された」と感じて反撃してくる人はいる。

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ジェンダー論に関心を持つ個人的理由

ジェンダー論に関心を持つ個人的理由

 自分は女の出来損ないだと長いこと信じていた。

 自分が女であることを認められないのは子供時代の一時的なことで、大人になるまでの過程のどこかで諦めて受け入れて女になっていくのだろうと思っていた。きっとみんなそんなもので、成長していくうちに自然と女になっていくのだろうと。

 けれど思春期を過ぎても「女」になりきることができなかった。みんなが乗り越えていく「女になる」という壁を、自分だけ越えられな

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魔女になろうと思った

魔女になろうと思った

 スピリチュアルな話ではなく。

 魔女といえば異端者、「父なる神」の秩序に逆らう者。

 要するに、おっさんやじいさんばかりが牛耳っている、上に媚びて下を嘲笑う、マウント合戦の現代社会に背を向けて、もっと別の原理で生きてやろう、という話。

 あらかじめ断っておくと、ここで言う「魔女」とは漠然としたイメージとしての魔女であって、中世の魔女狩りの時の基準とか詳しいことはよくわからない。

 ちなみ

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