記事一覧
〈矛〉としての論理ー「矛盾」と「こころ」と新自由主義
楚の商人が、矛と盾を持って、「この盾の頑丈なことは、どんなものも突き通すことができないほどだ」、「この矛の鋭いことは、どんなものでも突き通すことができるほどだ」と言って矛と盾を売っていたのを見て、ある人が、「では、あなたの矛であなたの盾を突いたらどうなるのか」と質問したところ、商人は何も答えることができなかった。
このような、故事成語の「矛盾」のエピソードを、学校の古典の授業で習った人は多い
清岡卓行「ミロのヴィーナス」と読者論
高校現代文の定番教材である、清岡卓行「ミロのヴィーナス」を授業で扱った。この教材を扱うのは四度目だが、今までは定番教材という以外、あまり深く考えたことがなかった。どちらかといえば、古臭い文章で、なぜこれが定番教材になっているのだろう?と疑問を感じながら授業を行っていたと思う。しかし、今回授業を行っていく中で、この定番教材が長く教科書に掲載されている理由が理解できた気がしたので、今回、noteにま
もっとみるテスト作成の注意点(現代文編)
◆表紙と問題冊子
・表紙は必ず作る。開始のチャイムが鳴る前に、後ろの席まで問題冊子を回して、チャイムと同時にいっせいに始められるようにする。表紙がない場合、後ろに回すときに、問題が見え、生徒が問題についてうっかり口にしてしまう事故が起こる可能性がある。「事故は未然に防ぐ」が鉄則である。
・問題は、問題冊子にして、解答用紙は問題冊子に挟み込む。試験監督の教員の負担を減らし、チャイムと同時にテスト
自己啓発・教育・新宗教ー島薗進『新宗教を問う』と今村夏子「星の子」
島薗進『新宗教を問う』(ちくま新書)は、明治時代以降に勃興した新宗教研究を総括した本であるが、戦前から戦後において新宗教が勃興した時代と現代が重なり、現代は再び新宗教が拡大していく時代なのかもしれないという感想を持った。
とりわけ興味深かったのは、創価学会の初代会長となった牧口常三郎がもともと教師で、「教育とは子供に価値創造ができるようにしていくことである。自らの力で新しい価値を創造していけ
制度化された虐待ー映画『海辺の彼女たち』とベトナム人技能実習生
ベトナム人技能実習生を題材とする映画『海辺の彼女たち』(監督・藤元明緒)を見たのは、以前から、ベトナム人技能実習生の問題に関心を抱いていたからだ。貧困状態にあるベトナムの若者たちに紹介料として借金をさせて、逃げられない状態にして、怒鳴られながら低賃金で長時間の過酷な肉体労働を強いるために、受け入れ先から逃げ出し、苦境に陥っていく技能実習生たちをめぐる状況は痛ましく、日本でこのようなことが行なわれ
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