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出戻り小学生

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根っからの学校嫌いが大人になって、まさかの学校で働くことに…。 現場における謎と不思議、笑いと感動に溢れた日々の記録。 今でも、戻れるのなら戻りたい…。
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2023年10月の記事一覧

人と場所と… ①

 前職で、0歳の赤ちゃんを育てているシングルマザーの女性に、甚く気に入られた。
「先生の声が好きやねん。その鼻声…❤落ち着くわ~」
 声が好きだと言われたのは初めてだったし、まして鼻声とは…。確かに酷い花粉症で、年間半年は鼻詰まりを起こしている万年アレルギー性鼻炎。酷い時はマスクが無いと息も出来ない身の上だ。
 早口でずけずけものを言うので、身内にはキツイと常に否定されているし、滑舌が悪いのが悩み

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2年生が熱い! ②

 また別の日、別のクラス。図書係の女子二人が良いコンビ。
 片や生真面目なクールビューティー。あまり感情表現しないので、大人しいのかと思っていたが、見た目とは裏腹にちょっと抜けている。誤字脱字も多い。しかし今年図書係になって、眠っていた才能を発揮しだした。言うことがいちいち凄い。前に立って、他の児童の良くないところを容赦なく正す。しかも、誰かの受け売りではなく、自分の言葉で。ピシャリと音がするよう

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2年生が熱い! ①

 年の周りというものが少なからずあって、また、相性というものも勿論あって、学年が変わっても、メンバーのカラーというものは変わらずに一進一退を繰り返し、やがて成長を遂げて行く。
 毎年、成長を感じるのは4年生くらいだが、今年の彼らは3年生でピークを迎え、4年生になった途端、終息してしまった。とても残念。
 今年は2年生が熱い。彼らが1年生だったときも熱かったが、担任が変わり、クラス替えを経たことで、

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素敵体験、ら・ら・ら

 現在専任している大規模校は、クラス数が多いせいか、高学年に図書の時間が設定されていない。依って、余程のことがない限り、授業で学校図書館を使ってもらう機会がないのだが、この11月は、6年生のあるクラスが2度も、授業を希望してくれた。
 11月は読書月間で、準備やイベントで年間一・二を争うほど忙しい。空き時間が減るのは痛手とも言えるが、学校図書館は使ってもらってなんぼ。そもそも、読書月間であることを

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小学生の婚約発表

 滅多に来ないやんちゃくれの6年男子が、最近よくやって来る。こういうことは毎年あって、卒業が近付くと、何となく増えていく気がしている。
 しかし未だ卒業には早い。何となく来たい気分になったのだろうか…。
 よくわからないが、それほど読書家キャラでもないのに、一応毎回、律義に一冊は本を借り換えして行く。義務というか、癖というか、そんな感じで、どうしても本が読みたくて!とか、本を必要として…とかいう雰

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頑固の裏側

 興味深い道徳の本を他校の司書さんから紹介してもらい、何かに使えないかと考え、11月の読書月間で、二週に渡って特別授業に用いた。一週目に本の半分を読み聞かせし、内容を簡略化したワークシートに其々が自分なりの回答を書き込むことで、個々の道徳観を引き出す。ワークシートは回収し、集約したものは匿名で、担任へ情報提供。翌週、本の残り半分の中から、子どもたちが気になった質問に対し、著名人の回答を紹介する…と

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女子と女の境目

 ひっさしぶりにやって来た6年女子。歯科矯正器具を付けた口を尖らせ、「ちょー、きぃてぇーやー」とぶつぶつ言い出した。唇の荒れが気になる。
そこから愚痴、愚痴、愚痴。誰のかというと、先生の…だ。で思いっきり先生を敬称略で呼び捨てにする。舌を巻く。こんな子じゃなかったのに…大分お怒りの様子だ。
 内容は大して怒るようなことでもなかった。彼女自身、己の非も認めていた。しかし素直に謝るのも納得いかないらし

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ある暑い夏の日

 図書室で一人、仕事をしていると、廊下から色んな声が聞こえてくる。
 先生同士の会話、子ども同士の会話、時に何故か歌声。そしてたまには絶叫も…。
 知らない大人の話し声。誰かが出張してきたのだろう。自分に関係のない予定まで把握していないので、今日はSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の日なのだな…と思う。一人、すごく声の通る先生がいるのだ。
 声は聴いたことがあるけれど、姿は見たことがない。

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褒め上手な小学生

 大人になるまで、人に褒められる…ということが殆ど無かった。
 親には勿論、先生など目上の人、友達などを含め…。
 子どもの頃に褒められた記憶がまるでないわけではないが、僅かなそれさえ、子どもの私にはピンとくるものでは無かった。そもそも褒められているのか貶されているのか、冗談で言われているのか、よくわからないものばかり。
「癖毛が可愛いね」(ぼさぼさなだけやん、どこがやねん)
「歌うまいね」(音楽

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不明本発見!

 初めての蔵書点検で不明本の多さに脅威した。数千冊を超えたのがそもそも異常。踏ん張って、最終的に30冊強まで減ったが、どの程度が普通なのかわからないので、他所の司書さんに状況を伺ったところ、多くても両手で足りる程度、小規模校なら片手で余るくらい、中には0という優秀な学校もあって、少々落ち込んだ。やはりうちは異常だ。
 勤めて丸4年。専任になって2年目。週5日、毎日司書が図書室に居るというのに、今年

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げっそり事件

 例年、図書室の掃除は4年生がしてくれている。教室が一番近いクラスの担当場所になっているのだが、一度、年間の掃除担当表に図書室の記載がなく、教務に確認したら完全に抜け落ちていたことが判明した。
 その年は6年生が例年より一クラス多かったので、新たに配置してもらい、一年間だけ6年生が担当してくれたことがあったが、教室が遠いばかりか、6年生ともなると各種行事やその他の課題、色々な準備などでかなり忙しい

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読書ノートに…

 読書ノートが面白い。
 個々の国語力が大きく表れるだけでなく、記録の付け方で性格まで丸わかり。感受性が浮き彫りになり、その人となりを知ることが、レファレンスだけでなく、日常のコミュニケーションにも役立つ。
【図書】とは国語科に属する一単元ではあるが、授業を受け持つのは教師ではなく、司書。児童に教育を施す時点で、教師でなくても教員ではあるらしいのだが、私自身、「先生」という呼び方をされる職業に就い

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将来何になりたいか?

 子どもに訊かれる。
「先生の夢ってなに?」
 はて、夢とな。首を傾げる。
 私を大人と思っての発言か…?と思う言葉をしょっちゅう投げ掛けられるが、夢を訊ねられたのは初めて。詳しく意図を訊いてみると、将来何になりたいか?という話らしい。
 尚のこと、『私を大人と思っての発言か?』と思う。
 学校司書は…というか、私は、どうやらあまり、小学生に〝大人〟だと認識されていないようだと度々感じる。距離が近

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本の帯女子会

 市の財政難の煽りを受け、勤務時間と給料を減らされたことで、夏休みの図書室開放がなくなった。
 去年は開館期間中、毎日のように足を運ぶ児童もおり、今年も「イベント何するの?」と、年も明けぬ前から度々質問されていた。彼らの向上心と期待に応えたくて、色々と起案を温めつつあったのだが、明けてびっくり「ごめんなさい」である。というか、教育委員会、子どもに「ごめんなさい」してよっ!というのが本音だ。
 本の

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