ある暑い夏の日
図書室で一人、仕事をしていると、廊下から色んな声が聞こえてくる。
先生同士の会話、子ども同士の会話、時に何故か歌声。そしてたまには絶叫も…。
知らない大人の話し声。誰かが出張してきたのだろう。自分に関係のない予定まで把握していないので、今日はSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の日なのだな…と思う。一人、すごく声の通る先生がいるのだ。
声は聴いたことがあるけれど、姿は見たことがない。元気な人で、毎回、結構な声量で話しながら歩いている。うちのSST担当の先生は控えめな方なので、違うことはすぐわかる。複数人で話しながら歩いている様子なのだが、その人の声しか聞こえない。他の人は皆、TPOを把握しているのだと、私が勝手に思っている。
図書室の前を人影が通った後、通る声が響く。
「図書室、誰もおらんかったら使うのに」
わざと言ったのでも、わざわざ言ったのでもないと思う。思わず本音が出たのだろう。でも全部聞こえてるよ。
今日は猛暑。一人で図書室使っててごめんね。でもここ、独りでエアコン点けてたら実は寒いのよ。温度上げても風量下げてもね…。点けたり消したりしてるから、案外効いてないかも…。それでも良ければ、誰か(司書)がおってもどうぞどうぞ。私は仕事なので、どきませんけど。
翌日、うちの控えめ先生にお伝えした。
「私(仕事なので)おっても良ければ、図書室使ってくださいね。エアコンないと暑いのわかるから…」
控えめ先生は顔をしかめた。
「いいねん、いいねん!ごめん、ごめん!あの人、何でもすぐ思ったこと口に出すから…。大きな声やし、うるさかったやろ?ごめんな。悪い人じゃないんやけどな…」
悪い人じゃないのだろうが、控えめ先生が良い人なのはわかった。
気を使わせてしまってごめんなさいね…。
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