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【短編小説】花火

出会い

私の家の隣にある花銅はなどう商店。

君はそこにお母さんのために”おつかい”に行ってたね。
幼稚園生なのに凄いなって。

近所には私と君くらいしか同級生がいなくて。
ママに頼んで、私のうちに遊びに来るようにお願いしたんだ。

君は物静かでイメージはそうだなぁ・・・
太陽でもない、月でもない、たくさんのお星さまって感じかな。
儚くて今にも消えそうだけど、夜空いっぱいに広がっていて。
そんな星空。

遊んだ時に、私が「近所には私と君くらいしか同級生がいないよ。」って話をしたら。
君は「僕とずっと一緒に居てほしい。」って言ってくれて。
私は一言「私も。」とだけ言って。
あの時感じた温かい安心感。今でも覚えてる。

・・・

小学校にあがり、君は休みがちになったね。
それでもサッカークラブに入ってからは、学校に来るようになってたけど・・・

小学校5年生の頃、夏休みに入ってしまって君を見れなくて寂しかったけど、夏祭りで偶然君を見かけて、ちょっとだけ勇気を出して声を掛けようとしたの。
でも、浴衣を着ててうまく歩けなくて下駄の鼻緒が切れちゃった。
それで歩けなくて困っていたら、友達が君にそれを伝えてくれて、乗ってきていた自転車の後ろに乗せて私を家まで送ってくれたよね。

花火会場は自転車で行けないところだったから、仕方なく花火が始まる前に帰ることにしたんだけど、自転車で帰りながら遠くでドーン、ドーンって花火の音が鳴り響いてた。
私は鼻緒が切れた下駄を持ちながら、振り返って花火を見ても良かったんだけど、自転車を漕ぐ君の背中をずっと見てた。静かな背中だった。

小学校6年生の冬。君は何か悲しい出来事があったみたいで、元気がなかった。結構心配してたんだよ。
それで同級生の中華料理店で卒業式の打ち上げをやったときに、
私が君の背中を見ていて。それがバッチリ写真に写っちゃって。すごく恥ずかしかった。

・・・

給食の牛乳

中学校に入ると、君はまた学校を休みがちになった。
それで、2年生になって君と同じクラスになって。
飲めないわけじゃなかったけど、牛乳が健康に良いっていうから君に給食の牛乳をあげることにしたの。
そしたら急に身長が伸びちゃって、背中が大きくなっちゃった。

クラスの席替えの時は、君の背中を見るために君より後ろの席を狙ってたの。
はずれても席替えのくじを君と交換したら、絶対君より後ろになれるよね。
牛乳をあげた貸しを利用してごめんね。

後ろから見てると、君はいつも左手で頬杖ほおづえをついていたよね。右利きバレバレだよ。
ただ、私のすぐ前の席に君が来た時は、君は授業中いつもうつむいてて、具合が悪いのかな?なんて気にしてたの。
案の定、君は何日か学校を休むことになって。試験前とかに私がノートを貸してあげれるように、ちゃんと黒板を写してたの。勉強は嫌いだったんだけど。君が居ない時とかに急いでノートに写してた。

中学校3年になって、私と君はクラスが分かれてしまったけど。
給食の牛乳だけは相変わらず、君に飲んでもらってた。
給食の時間になると。
「はい、いつもの」
「ありがとう」
という、それだけの会話を交わす。
周りから見るとさすがにへんな関係だったかな?
いいの、幼馴染パワー全開でごまかしてた。

部活動も終わって。私と君の別れが近づいてきた。
勉強が出来なかった私は、君とは違う高校に行くしかなかったから。

いつからか帰り道に君と君の友達が橋の上で道草してるのを見てから。
わたしはちょっとだけ帰る時間を遅くして、毎日会えるようにしてたんだ。一人じゃ恥ずかしいから親友のHちゃんと一緒に。
橋の上を通り過ぎながら横目で君たちを見ていたの。
恋話してたのかな?いつも私が通るときに二人が静かになっちゃってたから。もしかして私の話?なんて気になってた。

そんなとき、Hちゃんから君を好きだと聞いたの。
そしたら、私はいつも牛乳あげてる貸しがあるからって、なんでも協力するよ。って変な見栄をはっちゃって・・・
その後、頭が真っ白になっちゃった。

2月、中学卒業間際のバレンタインデー。最後だから気持ちを伝えなきゃって思って、初めて手作りのチョコを作った。でもHちゃんのこともあるから名乗らないでおこうと思って、君のロッカーにチョコをコッソリ置いたの。
君からは何も聞かれなかったから、バレてないと思う。

高校受験も終わり、君とは進路が分かれて別々の高校に行くことになったね。
同じ高校だったHちゃんから、入学前の春休みに告白して君と付き合うことになったって聞いた。

地元の夏祭りだったら会えるかなって期待していたのに・・・

夏が重い・・・

ほどなくして、私は高校の同級生から告白されて付き合うことにした。
私は、ときどき君が通学で乗る電車を見ていた。
朝夕、遠くから見ていた。夜は月のない少し暗い星空を見ていた。

彼氏と遊ぶことが多くなって、クラスが違ってたHちゃんとはあまり話さなくなった。

高校の卒業が近づき、このままずっと君と会えないのかな・・・って思ってた。
そんなときに君から電話があった。
跳び上がるほど嬉しかった。
でも、まいったな。
彼氏のことが頭をよぎった。
彼氏とはずっと続いていたから・・・

でも、私は自分の心に正直に。君と会うことにした。
小学校の頃に、私のせいで君が花火を見れなかったことを謝ったら。
君は炎色反応の話をしてくれたね。
金属を燃やすと様々な光を発して、それをうまく組み合わせて鮮やかな花火が出来ているって。銅は青緑だったっけ?
よくわからなかったけども、科学的な知識を全力で誰かを感動させるためだけに使っている。光を放つ、その一瞬だけのために使っている。
それが凄いって。

ちなみに打ち上げ花火の玉の中にはたくさんの星が入ってるんだって。星が花火を輝かせているなんて不思議な話だった。
さいごに君が、
「いつか一緒に花火を見れたらいいね。それでチャラだね。」って。
そんな約束とも社交辞令とも気休めとも知れない言葉だったけど、
その言葉は私の希望になった。

私は、気になってた君の病気のこと聞いてみたの。
そしたら君は大丈夫って言ってくれて少し安心した。
その後、少し胸が痛んだけど記念にプリント倶楽部(プリクラ)を撮ろうと言ったんだ。
一枚だけ。君と私の初めての思い出ができた。
今までは後ろからだったけど、横に、こんなに近くに君が感じられるなんて、それが永遠に続いて欲しい。
そんな一瞬だった。

・・・

別れ

高校を卒業して、ほどなく私は彼氏と別れた。
就職もしなかったので、一月ひとつきほど家で警備員しながらぼんやり過ごしてた。
これではいけないと、町で唯一のコンビニでアルバイトを始めたの。

コンビニなら、いつか君に会えるかも?って淡い期待をしてた。

アルバイト代が入ると、旅行をかねて君が行った大学を見に行ったよ。
大学の時計台を見ながら、今までの君との時間を振り返り、長い針が何週も何週も、数えきれないくらいに回っているということだけが分かった。
そして、偶然君に会えたら良いなっていう淡い願いは叶わなかった。

そんなんじゃ駄目だよね。ちゃんと神様にお願いしなきゃと、有名な神社に行き、ちゃんとお願いして私は家路についた。

8月、願いが叶ったのか君が私の勤めるコンビニにきた。
大学の夏休みで帰省したんだと思う。
君は私に気づくと照れ臭そうに、
「元気?」
て聞かれたから
「元気よ」
って他愛ない挨拶を交わして、彼氏と別れたこと。花火を見に行こうってことを伝え。新しく買った私の携帯の番号をレシートの裏に書いて、後ろで人が待ってたわけじゃないけども、急いで飲み物と一緒にそれを渡したよね。
君は
「ありがとう」
と、商品を受け取る際の挨拶なのか分からないけど、ただ、それだけ言った。

その後、いつまで経っても君からの電話はなかった・・・
ずっと待ってた・・・

・・・

しばらくして、母から君が死んだことを告げられた・・・

嘘だ嘘だ!信じられなかった・・・しばらく頭が真っ白になって、
我に返ると、すぐに記憶の中の君を探した。
浮かんでくるのはたくさんの君の背中ばかり、
私は、唯一の君との思い出のプリクラを探した。
プリクラは感熱紙の質が悪かったのか、ほとんど真っ白な紙切れに変わっていた。

君はもうこの世には居ない。光沢を失った、色を失ったその感熱紙のように私の中の何かが消えてしまった。
私には何もない。何もなくなってしまった・・・・

もう一度、君に会いたい。
もう一度だけ、君に会いたい。

私は君の居ない世界で生きれるほど強くない。
私は届くはずのない君宛の手紙を書いた。
ただ、”好き”と”ありがとう”を伝えたくて・・・ちゃんと私の名前も書いた。

神様、どうか私のこのちっぽけな命を燃やして。
そして君に光の花束を届けて。
私のあげる花束を、君の優しい星空に輝かせてあげてください。

「私も、君とずっと一緒だよ。」






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【メッセージ】
最後までお読みいただき感謝いたします。

拙い文章ですが、ロジカルな文章よりも感情を揺さぶるような文章を書きたいと思っています。
これからも、是非ともよろしくお願いいたします。
余韻のために最後は1ページ程度の空白を置いています。何か感じていただければと。
今日は楽しかった、悲しかった、悔しかった、嬉しかったなど、そういう感情が動く体験は、
記憶され、そして未来の判断になんらかの影響を与えると思います。そうだといいな。

【プロフィール】
2児の父です。 駄文・乱文ですみませんが、普通の人生を記していきます。コッソリと・・・ 
凡人なので、フォロバ100です。人としては、フォローされるよりフォローできる人間でありたい。 
頑張ってスキ1000回目指しますので、是非ともスキしてみてください。
ちなみに自己紹介にスキはフォローOKと受け止めます。 
あと、noteにも感謝です。
見出しの写真やイラストはnoteユーザー様のを使わせて頂いています。こちらも感謝いたします。



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