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何度も読み返したい素敵な文章の数々vol.10

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#cakesコンテスト

又吉さん。

又吉さん。

芥川賞作家になられた又吉直樹さん。 ものすごくたくさん本を読むとインタビューで言っておられたのが印象に残っている。

本を読むことで得られるものは多いと思う。

知らなかった言葉の意味を知り、漢字を覚え、想像力を養うこともできる。

私は子どもの頃、両親や祖母から『本の虫』と言われていた。

『ツライよ〜この子は!ヨシちゃんみたいじゃ。』

本ばかり読む私に家族や親戚はそう言ってため息をつくのであ

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山の間で古本屋をはじめて一ヵ月が経った。27歳の春をとりこぼしてしまった。

山の間で古本屋をはじめて一ヵ月が経った。27歳の春をとりこぼしてしまった。

先月、4月28日(良い庭の日)に古本屋「庭文庫」を開店させた。

3年前の今頃は、東京で働いていた。残業代の出ない会社だったから、必ず6時に帰ると決めていた。そう決めた結果、就業中はわき目もふらずにメールを打ち、電話をかけ、資料をつくり、7時に家に着くと何もできないくらい疲れていた。残業はしないかわりに、1日のエネルギーをすべて会社で使い果たしてしまっていた。

たまの楽しみは、通勤路の花を見るこ

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人への依存を、ちゃんと過去にする

人への依存を、ちゃんと過去にする

ある人からの連絡をずっと待っている。

こちらからメッセージを送らない限り、向こうから私に連絡してくることは、もうない。以前は向こうからまめに連絡が来ていたこともあるけれど、私が国を離れ、お互い顔を合わせる機会がなくなったことで、向こうの心が自然と離れていったのだと思う。

以前までは、連絡が来ないことがずっと不満で、忘れられていくのが不安で仕方がなかった。けれど今は、前向きにあきらめることができ

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入院しています。

入院しています。

3日前から抗ガン剤治療のために入院をしている。
偶然にも前回と同じ部屋、同じベットになった。

冬の入院風景と違い、街路樹の新緑が綺麗で、高層階の病室から風に揺れる木々を眺めるのが楽しい。観察していると、こうやって揺れるのかと新しい発見もある。
日常的なアングルが違うのか、普段気に留めていなかったことなのか、ゆっくりするということの大切さを改めて感じる。

4月に人事異動があったのか、前回お世話に

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「似合わない」なんて言葉は、捨ててしまおう

「似合わない」なんて言葉は、捨ててしまおう

文化が揺れる下北沢に呼ばれたように、わたしはお気に入りのビンテージのレースシャツなどを身に纏い。夕日とサングラスなども受け入れられる不思議は、土地なのか気持ちなのか。わからないけれど、それが心地いい。

駅から5分ほど歩いたところにある「スズナリ」は、想像通りの場所だった。こういう場所が大好きなはずなのに、今までどうして知らなかったんだろう。

旧友のスポーツ少女が演じることに魅せられたと聞いて、

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よかったことリストを必死で書いていた頃

よかったことリストを必死で書いていた頃

毎日、その日にあった「よかったこと」を挙げてみましょう、という文章を読んでほぼ毎日実行していた時期があった。

なぜ「よかったこと」を挙げるかというと、自信をつけたいと思っていたからだった。日々、自分が失敗したと思うことや自己嫌悪の記憶でいっぱいで、人から褒めてもらってもピンと来なかった。自分でその日の「よかったこと」を挙げる習慣をつけることで、自分自身にも肯定的な目が向けやすくなるらしい。

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カップルが生まれる必然性について~小屋ガール通信

山小屋では、仕事もプライベートも四六時中一緒だ。

だから距離が縮まりやすく、恋も生まれやすい。毎年、3~5組はカップルができる。

山小屋の中には職場恋愛禁止の小屋もあるらしいが、私が働いていた小屋は禁止していない。むしろ、社長は推奨しているように見えた(明言したわけではないが)。ベテランスタッフはみんな職場恋愛の末に結婚していて、私と夫もそう。

カップルが誕生するたび、不思議に思うことがある

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社員かバイトかってそんなに重要?~小屋ガール通信

社員かバイトかってそんなに重要?~小屋ガール通信

たまにお客様から「学生さん?」と言われることがある。

私だけじゃない。ほぼ全員が言われている。お客様の中には「山小屋バイト=学生」と思い込んでいる人が一定数いるのだ。

だから、「いえいえ。30代です」と答えると驚かれる。

驚かれるだけならいいが、そこで

「じゃあ、バイトじゃなくて社員なんだ?」

と言われることがある。

うーん……。

山小屋で働いた経験を書く「小屋ガール通信」、今回は季

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「自由な生き方」ってなんだよ~小屋ガール通信

「自由な生き方」ってなんだよ~小屋ガール通信

「サキちゃんは自由な生き方してていいなぁ」

後輩スタッフのうっちーは言った。彼女は私よりも年上で、看護師の仕事を辞めて山小屋に来た。当時、30代半ばだったと思う。

だけど、うっちーが看護師の仕事を選んだことと、私が山小屋の仕事を選んだこと。どちらも、自分の意思による職業選択だ。私が自由でうっちーが自由じゃないなんて、そんなことあるだろうか?

山小屋で働いた体験を書く「小屋ガール通信」。今回は

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ひと駅分の「大好き」を聞いた話

ひと駅分の「大好き」を聞いた話

わたしはよく道をたずねられる。

どんな場所でも部屋着のような格好をしているし、急いでいないからなんとなく聞きやすいのだろう。

すこし前にも、駅で20代半ばくらいの青年に話しかけられた。いつもと様子がちがったのは、話しかけられたといっても「三鷹まで何分ですか。この電車ですか」と入力したiPhoneのメモ画面を見せてきたことだった。彼は聴覚に障がいがあるようだった。

「この電車で5分くらいです」

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