「ブレイクスルー・ハウンド」1(新人賞最終選考落選歴二度あり、別作品、別名義で)
あらすじ
(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)
軍部と党の対立で内戦状態に陥った中国からの難民は深刻な治安悪化を日本に引き起こしている。だが、大っぴらな軍備増強は過敏になっている南北中国を刺激しかねず、また国民からの強い反撥が予想された。そこで考えされたのが、アメリカのように警官一人一人(特に特殊捜査班や銃器対策部隊)に高い射撃能力、格闘能力を持たせることだった。その計画のもと、陸自、海自、海上保安庁を辞めた特殊部隊員に対し密かに資金面などで援助がおこなわれ、日本各地にミリタリー・スクールが設けられる――
「ブレイクスルー・ハウンド1」
序章
サンフランシスコの太陽は陽射しすら上機嫌に思える。青々とした芝生に撒かれる水が陽光を反射して地上に星が無数に落ちたように輝いていた。ホースで水撒きをしているのは、藤井光(ふじいひかる)と同じ年で隣の家に住む女の子、幼稚園児(キンダーガーデン)のジェシカだ。ジェシーと周囲からは呼ばれている。顔立ちは八重歯に愛嬌のある、金灰色の髪を肩口よりやや上で切り揃え、ピンクのワンピースを着ていた。
しかし、そんな彼女を眺める光の姿は屋内、カーテンの陰にあった。今でも他人とコミュニケーションを取るのが下手というのは変わりないが、この頃はさらに内気で父の仕事の関係で合衆国に短期ではあるが引っ越していることが余計にふるまいのつたなさを加速させていた。
だから、声をかけずにただ休日の彼女の姿に羨望のまなざしをそそいでいる。これがもっと年をかさねていれば犯罪的だが、歳が歳なだけに他愛ないものだ。ジェシー、今日はこのあと何するの。ねえ、ジェシーこれから一緒に遊ばない――そんなせりふだけが胸のうちでひびく。とてもではないけれども声をかけるのは無理だ。
その代わりとでもいうように、警察車輛のサイレンが近づいてくる。
あ、と光は思った。ジェシーが危ない――。
声をかけなければ、と思ったがすぐに脳裏に“とある物”が思い浮かんだ。そうだ、こんなときのためにあれの使い方を必死にマスターしているのだ。
光は二階に駆け上がり、両親の部屋のクローゼットを空けて靴箱を取り出す。
そこには自動拳銃が収まっていた。グロック17、スライドを後退させずともトリガーにある突起部が安全装置になっており薬室に銃弾があれば引き金を絞るだけで銃弾が発射される画期的なハンドガンだ。
銃弾がマガジンに収まっていることを確認しチェンバーに弾を送り込む。
そして、トリガーガードに指をかけた状態で急いで取って返した。
ちょうど、危機的状況が生じている。車を捨てたらしい逃走犯、日本人の、しかも子どもである光にはとてつもない巨人に見える黒人の男がコルトガバメントを手にジェシカに駆け寄りつつあった。
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https://note.com/famous_moraea53/n/nf526187e02a4
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