「ブレイクスルー・ハウンド」73

 その間も、敵のマシンガナーと父が火線を激しく交わした。
 光のようすに気づくことなく、佐和が援護射撃を実行しようとする。
 とたん、近くの雑居ビルの屋上からなにかが落ちてきた。
 炸裂、無数の破片が死をふりまく。が、そのなかに光たちがとらわれることはなかった。ふだんから模擬手榴弾の扱いを数えきれないほど練習してきた光は、もはや無意識のレベルで危険を察知し、自分の近くに落ちた手榴弾をブレイクダンスのような動きで、車の下へと蹴り込んだ。
 無数の痛みが脳髄に突き刺さる。それでも、無防備に破片を受けるよりはましだった。伏せていたこと、タイヤの陰にいたことなどが重傷を防いでいた。
「屋上に影を確認」「あんたたちの部隊か」
 佐和の言葉に光は声を張り上げる。そうあって欲しいという思いがこもっていた。
 だが、よく見ると躍る影はどうもふたつの勢力に分かれているようだ。
 さらに、目的としていたビルからも銃声がもれている。
 その音に踊らされるように人影が光たちのもとへよろめきながら姿を現した。
「大石さん」
 佐和が驚愕の表情を浮かべた。
「どうしたんですか、白虎との最初の戦闘で行方不明になってましたけど、捕まっていたんですか?」「おれは」
 佐和の必死の呼びかけに、大石という筋肉質な男は銃口を向けることで応じる。

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?