「ブレイクスルー・ハウンド」79
けれども、臆している暇はない。相手は開いているほうの手をこちらに伸ばしてくる。
懐に入られているため、仲間たちも援護射撃ができない。
掴まれたら終わる――そう思って取った次の動作は、相手の動きに感じるところがあってとった無意識の動きだった。
スミタは相手の視界から消える。横薙ぎの一撃を鋭く放つ。が、脱力して体勢を低くした上で脛を狙った斬撃は滑るような後退の連続の前にかわされた。
スミタはやや頭を熱くしながた相手を追おうとする。が、そこでゴードンの切羽詰まった声があがった。
「T(タンゴ)(トラップ)だ、なぜ敵がひとりで三人を相手取る必要がある」
刹那、三人はその場に一声に身を伏せる。
銃声、という言葉ではあらわせないほどの轟音が路地の入口、道路をはさんだ向こうのビルのほうからひびいた。
「三人まとめて始末するつもりだったんだけどな、まったく残念だ」
楽しげな声が路地のどこからから聞こえた。
分岐する道のどこに逃げたのか、狙撃を避けるのに精いっぱいでとてものこと把握できていない。
「楽しいレイブだった、次も楽しみにしてるぜ」
そう言い残し、敵の気配は消えた。気づけば機関銃手の銃声も止んでいる。
後に残されたのは、グルカナイフを砕かれその破片に額をに叩かれたスミタだ。突き刺さりこそしなかったものの、衝撃が脳を揺らした。遠のいていく意識のなか、達人とゴードンが何事かを叫ぶのが聞こえた。
ゴードンの脳裏には、砂漠の地方の高い空がよみがえっていた。
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