「ブレイクスルー・ハウンド」102

 瞬間、光は慎重な行動を捨て地面を転がって膝立ちに起き上がるや視線を走らせた。
 いた、先ほどの自分の左手のほうにサプレッサーを装着した拳銃を構えた敵が構えている。ナイフを投擲、銃声、その二つの事象がかさなった。だが、微妙にずれている。
 その前後の順は、光に味方していた。先にナイフが相手の喉に到達し、発砲された銃弾は空に向かって飛んでいく。一瞬の差が生死を分ける。迅影と化し、向かいの十字路の陰に渡る。と、並行して周囲に敵の姿がないことを確かめた。
 十字路の反対側に、中腰、小走りに杏と純が姿を見せる。危険を知って援軍としてやって来たのだろう。制服のまま、ボデイアーマー、その上にアサルトベストを重ね着し、さらにHK416自動小銃、H&K・MP7サブマシガンなどで武装していた。
 彼女らの参戦に、光は苦いものを感じた。刹那、先頭に陣取っていた杏が脇へと動く。同時にH&K・MP7、今や特殊部隊のスタンダードと化しつつあるサブマシンガンのトリガーを絞った。防弾装備をつらぬく銃弾が、光が先ほど立っていた場所のすぐ向こうに位置する場所でハンドガンを構える相手に命中する。
 殺させてしまった――誰かを殺すことも後ろ暗いが、少女たちに殺人を許すことも後味が悪い。

 光が先ほど立っていた場所で、敵が膝射の構えを取っていた。飛電一閃、光は無数のナイフを片手で投げ打った。命中しても殺すことはできなかった。が、銃撃を逸らすことに成功する。

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