「ブレイクスルー・ハウンド」122

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 公的には所在をあきらかにされていない外資系企業の地下階にある会議室で、光はたちは現在進行形の“事件”の重要な関係者と対面する。会議用テーブルの手前のほうでこちらを待っていたのは白髪混じりの、それでも屈強さを失っていない白人男性だった。
「はじめまして、Mr.光。私はダリル・ドゥリトルというものだ。突然、外国人が現れておどろいているだろう。だがもちろんのこと、無関係ではにないからこそ、私はここに足を運んだ」
「前置きが長い。あんたの所属を目的は」
「所属はCIA(エージェンシー)の特殊活動部、SADの工作員。目的は、別班から派生してテロリストの殲滅」
 スミタが前置きが長いとばかりに発した言葉に、ダリルは微苦笑で応じる。
 他方、なぜか達人はダリルを一心に見つめ、そのようすをゴードンはどこか案じ顔でうかがっていた。
 正直におどろいたのは光のみで、張は片眉を動かしたのみだ。
「彼らのクライアントを選ばない軍事教練はテロリストの力を増大させ、世界的な脅威となる」
「それでアメリカ合衆国(アンクル・サム)が大きな足で虫けらを踏み潰しに来たってこと」
「我々もそこまで無神経ではない、あくまで共同作戦だ」
 スミタの皮肉に、ダリルは「なあ、嫌わないでくれよ」というような笑みを浮かべた
「さあ、作戦を開始しよう」
 この空気で口を開くのは自分しかいない、と光はみなに宣言した。この瞬間、息子は父親を越えた。

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