「ブレイクスルー・ハウンド」104

 矢が先頭から二番目の敵の額をつらぬいた。発砲を狙おうという瞬間と重なったのか、くずおれながらも前の仲間に銃弾を叩き込む。混乱が彼らの動きを鈍らせた。
 立てつづけの銃声、佐和、杏、純が反撃に入ったのだ、三人の新たな敵が血を噴いて倒れる。
 それを視界の隅でとらえながら、光は矢が飛来した方向に目を向けていた。
「知行、おまえ」いつの間に登ったのか塀の上でボウガンを構える姿がある。
「ひとりでも多くの味方が欲しい、って親父さんに呼ばれたんだ」
 光の言葉に、知行は得意満面の笑みを浮かべた。
 刹那、また事態は急変する。猛烈な速度でバイクが現れ、急ブレーキ、ちょうど知行の足もとのあたりで特殊警棒をふるったのだ。
 体勢を崩し、バイカーとハンドルの間に落ち、首筋に手刀を叩き込まれるまでが一瞬だ。
 光がバイクを追いかける体勢を取ったときには、すでに単車は走り出していた。
 それでも光はなにも考えずに足を動かす。意地でも無謀でもない。ただ、友を助けるという一心のために。
 光は友人の身が危険かもしれないという考えにすら至らず、当たり前のようにホルスターからPx4ストームを抜いて疾走するタイヤを狙った。敵は巧みに射撃を左右に割ける。
 そして、むろんのこと現実は無情にできている。

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