「ブレイクスルー・ハウンド」97
「よし、そっちにいく」『あたしも』
達人、スミタともに匍匐全身で銃弾が間近を通り過ぎる甲高い音に追われながら移動をおこなう。
合流を終える。「それじゃま、おっ始(ぱじ)めるとしようか」
達人は凶暴な声で応じた。襲撃に対し、達人はわざとスミタのレールとハンドガードを取り付けたモダナイズドAKでしか応戦をさせなかった。
「フロントを、フォックストロット。ライトをロメロと命名、前者に一斉攻撃だ」
タイミングを合わせ、達人たちは猛撃を加える。達人の持つ汎用機関銃が咆哮をあげ、ゴードンのライフルグレネードがテンポよく炸裂した。
そして遮蔽物から炙り出された者はスミタが射殺する。元々山岳民族だ、夜間照準器など縁遠い者たちだった。
一頻り攻撃を加えたところで膝射の姿勢になって戦果を確認する。
「連中、片翼包囲が目的だったのか」「だが、片翼の動きがおかしい、迂回より直進に近くないか」
達人の言葉にゴードンが異を唱える。曳光弾の飛来する方向などからどうも違和感をおぼえていた。そこに、
『親父、片翼包囲じゃない、敵の狙いは斜行陣だ』
という息子の声が無線越しにひびく。
脳裏に、敵の動きと斜行陣の布陣が重ね合わさった。
なるほど――本来は数的に劣勢な場合に使う策だが、奇襲に使っていけないという法律はない。しかし、無線のやり取りから敵の策を看破するとは――自分の息子ながら、その才能には末恐ろしい物を感じた。
「よく気づいた」息子を褒めて、「ロメロを突破し、脱出する」と達人はゴードンとスミタに命じた。
が、「それは困るなあ」突如として、木陰から脇差状のナイフを持った少年が挨拶をするように姿を現した。
発砲、むろんのこと瞬時に射殺を試みた。
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