「ブレイクスルー・ハウンド」101

 いくら精度のいい小銃を使っても、十字砲火を軽機関銃によって喰らってはひとたまりもない。先頭から中央あたりの敵が体やバイクを撃ち抜かれ転倒する。それを見て、後続はなんとかバイクを操作して急激なUターンで姿を消す。
「御無事でなによりです、藤井さん」
 無表情の自衛官のなかでひとり笑みを浮かべて、近くに立っていた男が達人に声をかけた。兵士には見えない柔和な顔立ちをしている。
「この件、陸自も絡んでいるのか」「わかっておられるでしょう、あなたは」
 そうだな、なにも言えるわけがないな、と相手の言葉に達人は微苦笑した。
「旧交を温めたいところでありますが、迅速な帰投が命じられておりますので」
「ああ、助かった。ありがとう」
 それだけ言って、旧知の仲らしい、おそらくはかつての同僚と達人は分かれた。
 自衛官たちはその場から走り去る。
 スミタたちは再度の襲撃の可能性もゼロではないため、長居は無用とその場をあとにした。

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 他方、光は小さな工場の塀の陰から角度を細かく区切って死角をうかがうカッテンィングパイで十字路を索敵しようとしていた。
 佐和に突き飛ばされる。「危ない」

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