「ブレイクスルー・ハウンド」131

他方で、敵は即座にショットガンを至近距離で撃ってくる。
 撃たれる。ただし、かすめる程度だ。なんとか、防弾装備のおかげで死はまぬがれた。
 痛(つ)――それでも、肋骨あたりにヒビが入るのは避けられない。
 散々、人を殺めて磨いた技が通じないというのか。
 それではなんのための犠牲だったのだ――張は胸のうちで声を限りに叫びながら、突撃銃をふるった。上段から一撃、屈んでの一閃、立ち上がり様の斬撃の、連続攻撃を仕掛ける。
 最初の二閃はあの、斬撃を無効化してくる技で封じ、最後の攻撃は距離を置いて躱す。が、張の陰に隠れることは忘れない。
 相手の口もとには笑みが浮かんでいた。
 楽しんでいる――戦うことそのものを。自分が負けることすら、この男は興味深く感じることだろう。そこまで進まなければ“強さ”は手に入らないのか――。張は歯噛みしながらも、防弾装備を頼りにがむしゃらに相手にせまった。
 瞬間、脇から達人がシグP226ハンドガンを手に現れる。
「無理だ、達人。おまえの手におえる相手じゃない」
「お前こそ、踏み込んじゃあいけない領域に踏み込もうとしているんだよ」
 制止の声をさえぎり、達人は敵に突進していった。
「達人、止めろ」それを張は必死に追う。


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