「ブレイクスルー・ハウンド」126

 目には見えない光が伸び、体温の赤い熱と重なった。呼吸を止めた彼の指がトリガーを絞る。HK416が闇に吠えた。「クリア」とゴードンが家族思いの父とは思えない無感情な声で告げる。
 狙撃手と汎用機関銃の存在に、敵もまた伏射の姿勢に入ったのだろう弾道が下がった。このままいけば膠着状態だ。
 そこで達人が指示を飛ばす。
「中央の火力を弱めて敵を誘い出す、特装(特別武装係)はこの場に四名留まり敵に射撃を繰り返せ。私たちは、右翼で敵を惹きつける役目を果たす」
「光、張、スミタ、佐和が左翼を、残りは右翼を進め、戦術移動だ」
 マイク越しに父がはっきりとした声で告げた。

 光、杏と純、スミタと、ゴードン、達人、張とに光たちは二手に分かれていた。中腰で寺の敷地内の林のなかをゆっくりと進むうちに、向こうからも同じような姿勢の相手が姿を出現するのを光たちは認めた。白と黒のツートンの頭の青年がいることを認めて光は緊張をおぼえた。
 派手な風貌は彼だけではない。革製品の上下を身にまとい、パンクロッカーのように髪の毛を七色に染めた青年も交じっていた。色彩感覚がおかしいとしか思えない。
 瞬間、互いに遮蔽物に姿を隠した。クイックピーク、光はぎりぎり体と銃身を出してKSGのトリガーを絞った。
 なぜなら、敵が常識外の行動に出ていたからだ。白黒の髪の少年が右、七色の髪の青年が左、という具合に無規則な動きで肉薄してきたのだ。しかも、手榴弾のピンを抜いて手もとに少し置き、こちらの頭上に投げ放ってくる。

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