「ブレイクスルー・ハウンド」100

 だが、有利な点はこちらにもあった。相手は手が“塞がって”いる。
 達人たちはタイミングをずらして手榴弾を投擲した。投げ返すこともできずに、無数の破片に体をつらぬかれてバイクの襲撃者が息絶え車体ごと横滑りする。
 だが、後続はそれを警戒して巧みに樹を盾にさらに左右に分かれて接近してきた。
スミタ、達人は膝射の姿勢を、ゴードンは伏射の体勢となる。
 銃弾の応酬が瞬間、始まった。ほおをかすめる銃弾の感触に、スミタは顔をしかめながらもフルオートで射撃をし、弾着で照準を合わせバイクの一台に被弾させた。ゴードンも敵のひとりの胸部を撃ち抜き、達人も弾切れになった汎用機関銃の代わりに構えたシグP226ハンドガンで見事にバイクを撃ち抜いた。さらに、しっかりと地面に転がった相手にマガジン一本分の銃弾を撃ち込む。
 これで今度こそ片付いた、と思ったがそれが単なる希望的観測に過ぎないとスミタは思い知らされた。すこしの間のあと、先ほどの数倍のエンジンが響き渡った。今のは威力偵察――スミタは慄然となる。敵はこちらの戦力がどの程度か探りを入れていたのだ。
 死、その単語が脳裏をよぎった。
 次の瞬間、今度は後方、逃げようとしていた方角のほうからヘリのローター音がとどろいてくるのをスミタは耳にした。
 待つまでもなく、しばしののち機影が姿を現わす。
 あれは民間機じゃなく、軍用機――この国で軍用機が飛ぶとなれば、日本か米国のそれしかない。サイドドアが開くやファストロープ降下で無数の人影が降りてきた。
 それに、どう対応していいものかスミタたちは戸惑うが、相手はこちらを無視してバイクのほうに注意を向ける。左右の端に機関銃手が配置された。

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