オリグチ

積ん読常習者。つまみ食いだけして読み散らかした、人文社会科学、一般向け自然科学の本が多…

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積ん読常習者。つまみ食いだけして読み散らかした、人文社会科学、一般向け自然科学の本が多数。 新刊の読前期待、購入書の読後感想を投稿中。

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記事一覧

『吾妻鏡-鎌倉幕府「正史」の虚実』藪本勝治[著]中公新書

まだ記憶に新しいNHK大河ドラマ、「どうする義時」もとい『鎌倉殿の13人』。 その脚本作成にあたって、三谷幸喜さんがベースとした歴史書が『吾妻鏡』です。 その『吾妻…

オリグチ
2日前
3

『なんで死体がスタジオに!?』森バジル[著]【読書感想】(ネタバレなし)

TV地上波全国28局ネット、ゴールデンタイムの生放送特番。 出演者の1人が、放送40分前になってもまだ来ない…連絡も取れない… そう思ってたら、とっくにスタジオ入りし…

オリグチ
11日前
2

『チ。ー地球の運動についてー』(第1回放送)【アニメ感想】

アニメ『チ。ー地球の運動についてー』、ついに第1回が放送、さっそく視聴しました! 舞台は15世紀ヨーロッパのP王国。C教によって地動説が異端とされている世界。 地…

オリグチ
13日前
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彗星をめぐる論争ーガリレオ『偽金鑑識官』

いま、ここ100年ではもっとも明るい彗星が地球に接近しているそうですね。 この紫金山・アトラス彗星(ツチンシャンと読むらしい)、地球に再接近する2024年10月12日頃には…

オリグチ
3週間前
3

ガリレオ『星界の報告』

『チ。-地球の運動について-』アニメ放送が間近となったのに触発されて、天文学の金字塔的著作、ガリレオ『星界の報告』を読む。 ガリレオ『星界の報告』天文学に革命を起…

オリグチ
3週間前
7

【読書感想】『女子高生 制服路上観察』佐野勝彦[著]

なんともいかがわしい感じの書名。 気晴らしになりそうな本はないかなぁとKindle Unlimitedで光文社新書のリストを眺めていたら、この本が目にとまってしまった。 タイトル…

オリグチ
3週間前
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『ガリレオ裁判ー400年後の真実』

『チ。−地球の運動について−』アニメ化マンガ『チ。-地球の運動について-』のアニメ、10月からの放送開始も迫り、本PVもつい先日公開されました。 15世紀ヨーロッパのP…

オリグチ
1か月前
6

『実存アンプラグド』/『キェルケゴール』

哲学者キルケゴールが現代日本に転生!バンドマンになる! 「ここでは楽器を持って歌えば どんなに面白みのない思想であっても 人々は大真面目に聞いてくれる」(44頁) …

オリグチ
2か月前
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ロシア専制政治の原像〜【読書感想】三浦清美『ロシアの思考回路』

ロシアの専制政治の「伝統」はどこに由来するのか。 それは、ロシア正教によって先鞭をつけられた。 そう回答するのは、三浦清美『ロシアの思考回路 その精神史から見つめ…

オリグチ
4か月前
6

ロシア−ウクライナ問題の起源〜【読書感想】『「ロシア」は、いかにして生まれたか』/『ロシアの源流』

ロシアがウクライナに侵攻して、はや2年以上が経過した。 ロシアとウクライナとの因縁は、別に今日昨日のプーチン時代に端を発するものではない。 根深い紆余曲折を数百年…

オリグチ
5か月前
8

ロシア=専制政治の歴史〜【読書感想】『ロマノフ朝史1613-1918』 サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ[著]

17世紀初頭から300年間ロシアに君臨し、革命の最中に一族が惨殺されたロマノフ朝。 その皇室の歴史を描いた、サイモン・セバーグ・モンテフィオーリの『ロマノフ朝史1613-1…

オリグチ
5か月前
6

『近代美学入門』 井奥陽子[著] ちくま新書【読書感想】

これぞ美学の入門書の決定版! これ以上やさしく書くことはむずかしいのではないでしょうか。 井奥陽子『近代美学入門』(ちくま新書2023)は、誇張なくそう思えるような良…

オリグチ
7か月前
11

マキァヴェッリ『君主論』〜【マキァヴェッリを読む】Part 10

マキァヴェッリといえば『君主論』、『君主論』といえばマキァヴェッリ。 どちらか一方しか知らない人など想像できないほどの、マキァヴェッリの代表作です。 邦訳につい…

オリグチ
7か月前
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『ダンテ その生涯』アレッサンドロ・バルベーロ[著] 【読書感想】

『神曲』の作者、西洋文学最高峰の詩人ダンテ。 しかしその生涯は、詩人というより政治指導者としての波乱に富む人生でした。 そんなダンテについて、中世史研究者が著した…

オリグチ
7か月前
6

マキァヴェッリ『カストルッチョ・カストラカーニ伝』〜【マキァヴェッリを読む】Part9

歴史上の人物を題材にした、マキァヴェッリのマイナー作品を今回は取り上げます。 難しいことを考えずに読めて、物語としても面白い作品です。 惜しむらくは、全集にしか邦…

オリグチ
8か月前
7

『第三の波 20世紀後半の民主化』 サミュエル・P・ハンティントン[著] 【読書ノート】

『文明の衝突』著者の主著、新訳で登場! 100分de名著で取り上げられた『独裁体制から民主主義へ』に興味を持った方には特におすすめ! 民主主義が揺らいでいる今だからこ…

オリグチ
8か月前
10
『吾妻鏡-鎌倉幕府「正史」の虚実』藪本勝治[著]中公新書

『吾妻鏡-鎌倉幕府「正史」の虚実』藪本勝治[著]中公新書

まだ記憶に新しいNHK大河ドラマ、「どうする義時」もとい『鎌倉殿の13人』。
その脚本作成にあたって、三谷幸喜さんがベースとした歴史書が『吾妻鏡』です。
その『吾妻鏡』について書かれた『吾妻鏡ー鎌倉幕府「正史」の虚実』(中公新書 2024年)を読みました。

『吾妻鏡』とはどのような書物か鎌倉時代の公式記録としての『吾妻鏡』

『吾妻鏡』は、鎌倉幕府による歴史書、武家政権による日本初の公式記録と言

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『なんで死体がスタジオに!?』森バジル[著]【読書感想】(ネタバレなし)

『なんで死体がスタジオに!?』森バジル[著]【読書感想】(ネタバレなし)

TV地上波全国28局ネット、ゴールデンタイムの生放送特番。
出演者の1人が、放送40分前になってもまだ来ない…連絡も取れない…
そう思ってたら、とっくにスタジオ入りしてました。
死体として!!

死体を発見してしまったプロデューサー。
とある事情により、警察に通報せず、生放送の続行を決断!?
この狂気の沙汰の行方は!?
生放送を無事に終えることができるのか?
そして、いったい犯人は誰なのか?

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『チ。ー地球の運動についてー』(第1回放送)【アニメ感想】

『チ。ー地球の運動についてー』(第1回放送)【アニメ感想】

アニメ『チ。ー地球の運動についてー』、ついに第1回が放送、さっそく視聴しました!

舞台は15世紀ヨーロッパのP王国。C教によって地動説が異端とされている世界。
地動説を追究する学者、そして地動説を取り締まる異端審問官。
彼らと出会ってしまった1人の少年から始まる、熱き血の物語。

アニメの出来が期待していた以上に素晴らしくて、物語に引き込まれて、あっという間に2話分の時間が過ぎてしまいました。

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彗星をめぐる論争ーガリレオ『偽金鑑識官』

彗星をめぐる論争ーガリレオ『偽金鑑識官』

いま、ここ100年ではもっとも明るい彗星が地球に接近しているそうですね。
この紫金山・アトラス彗星(ツチンシャンと読むらしい)、地球に再接近する2024年10月12日頃には、肉眼でもはっきりと見ることができるとのこと。
この彗星をフォーカスしたムック本を書店で見かけたくらい天文界隈が大きく扱うほどならば、天文素人の私でも結構はっきり見ることができるほどすごいんじゃないかなと期待しています。

そし

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ガリレオ『星界の報告』

ガリレオ『星界の報告』

『チ。-地球の運動について-』アニメ放送が間近となったのに触発されて、天文学の金字塔的著作、ガリレオ『星界の報告』を読む。

ガリレオ『星界の報告』天文学に革命を起こした書

天文学のクライマックス的なシーンというと、それこそ『チ。』でテーマになった、天動説から地動説への転換が挙げられるでしょう。
しかし、それ以上に大きな画期的な天文学上の出来事は他にあります。
天動説と地動説との間の断絶よりもっ

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【読書感想】『女子高生 制服路上観察』佐野勝彦[著]

【読書感想】『女子高生 制服路上観察』佐野勝彦[著]

なんともいかがわしい感じの書名。
気晴らしになりそうな本はないかなぁとKindle Unlimitedで光文社新書のリストを眺めていたら、この本が目にとまってしまった。
タイトルから受ける印象とは違って、内容はいたって真面目なものです。

学生服メーカーに勤務する著者が、女子高生達の制服の着崩し、アレンジについてインタビューなどを実施して、その分析を試みたという内容。
前半は学生側からの視点、後半

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『ガリレオ裁判ー400年後の真実』

『ガリレオ裁判ー400年後の真実』


『チ。−地球の運動について−』アニメ化マンガ『チ。-地球の運動について-』のアニメ、10月からの放送開始も迫り、本PVもつい先日公開されました。
15世紀ヨーロッパのP王国で、地動説を追究する学者、そして地動説を取り締まるC教異端審問官と、1人の少年が出会ったことから始まる物語。
この1冊だけでも物語として完成しているマンガ第1集、その展開が議論を呼んだ最終第8集がアニメでどう表現されるのか、今

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『実存アンプラグド』/『キェルケゴール』

『実存アンプラグド』/『キェルケゴール』

哲学者キルケゴールが現代日本に転生!バンドマンになる!
「ここでは楽器を持って歌えば どんなに面白みのない思想であっても 人々は大真面目に聞いてくれる」(44頁)
そんな感じで始まったマンガ『実存アンプラグド』第1巻が発売されました。

現代によみがえった哲学者が、人々の悩みに答えやきっかけを与える、みたいな上から目線の(説教くさい)内容がメインというわけではありません。
ジョン・ロックやパスカル

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ロシア専制政治の原像〜【読書感想】三浦清美『ロシアの思考回路』

ロシア専制政治の原像〜【読書感想】三浦清美『ロシアの思考回路』

ロシアの専制政治の「伝統」はどこに由来するのか。
それは、ロシア正教によって先鞭をつけられた。
そう回答するのは、三浦清美『ロシアの思考回路 その精神史から見つめたウクライナ侵攻の深層』(扶桑社新書 2022)だ。
現代ロシアについて論じているような題名がついているが、ロシアやウクライナの歴史について書かれた本だ。

三浦清美の前著『ロシアの起源』では、モンゴル侵攻からイワン雷帝前夜までのロシア史

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ロシア−ウクライナ問題の起源〜【読書感想】『「ロシア」は、いかにして生まれたか』/『ロシアの源流』

ロシア−ウクライナ問題の起源〜【読書感想】『「ロシア」は、いかにして生まれたか』/『ロシアの源流』

ロシアがウクライナに侵攻して、はや2年以上が経過した。
ロシアとウクライナとの因縁は、別に今日昨日のプーチン時代に端を発するものではない。
根深い紆余曲折を数百年単位で積み上げて来た歴史が地下に横たわっている。

プーチン大統領がウクライナ侵攻の半年前、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」という論文を発表したというのも、(その論文の内容の妥当性はともかく)ロシアとウクライナとの歴史的な

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ロシア=専制政治の歴史〜【読書感想】『ロマノフ朝史1613-1918』 サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ[著]

ロシア=専制政治の歴史〜【読書感想】『ロマノフ朝史1613-1918』 サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ[著]

17世紀初頭から300年間ロシアに君臨し、革命の最中に一族が惨殺されたロマノフ朝。
その皇室の歴史を描いた、サイモン・セバーグ・モンテフィオーリの『ロマノフ朝史1613-1918』上下巻(白水社 2021年:原著2016年刊)を読んだ。

1 『ロマノフ朝史1613-1918』の全体的な印象宮廷の群像劇

『ロマノフ朝史』は、ロシア皇帝とその一族(愛人を含む)、そして寵臣たちの言動や人間関係を中心

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『近代美学入門』 井奥陽子[著] ちくま新書【読書感想】

『近代美学入門』 井奥陽子[著] ちくま新書【読書感想】

これぞ美学の入門書の決定版!
これ以上やさしく書くことはむずかしいのではないでしょうか。
井奥陽子『近代美学入門』(ちくま新書2023)は、誇張なくそう思えるような良書でした。
新書大賞にランクインしているのは伊達ではないようです。

「芸術に興味はあるけど、美術について理論的だったり抽象的だったりする話となるとちょっと…」
そんな方にこそ、あきらめる前に手に取ってほしいと思える入門書。

また、

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マキァヴェッリ『君主論』〜【マキァヴェッリを読む】Part 10

マキァヴェッリ『君主論』〜【マキァヴェッリを読む】Part 10

マキァヴェッリといえば『君主論』、『君主論』といえばマキァヴェッリ。
どちらか一方しか知らない人など想像できないほどの、マキァヴェッリの代表作です。

邦訳について各種邦訳の特徴

〈1〉角川ソフィア文庫版は、多賀善彦の名義で戦時中に出版された『マキアヴェルリ選集』収録の邦訳を改訂したもの。
筑摩書房『マキァヴェッリ全集』月報によれば、フランス語訳からの重訳とのこと。
訳文および参照した原典の校訂

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『ダンテ その生涯』アレッサンドロ・バルベーロ[著] 【読書感想】

『ダンテ その生涯』アレッサンドロ・バルベーロ[著] 【読書感想】

『神曲』の作者、西洋文学最高峰の詩人ダンテ。
しかしその生涯は、詩人というより政治指導者としての波乱に富む人生でした。
そんなダンテについて、中世史研究者が著したダンテの評伝が翻訳出版されました。
『ダンテ その生涯』アレッサンドロ・バルベーロ[著](亜紀書房 2024年)です。

ダンテの評伝というと、
「まずダンテが生きた13世紀後半から14世紀初頭にかけてのイタリアやフィレンツェの政治情勢を

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マキァヴェッリ『カストルッチョ・カストラカーニ伝』〜【マキァヴェッリを読む】Part9

マキァヴェッリ『カストルッチョ・カストラカーニ伝』〜【マキァヴェッリを読む】Part9

歴史上の人物を題材にした、マキァヴェッリのマイナー作品を今回は取り上げます。
難しいことを考えずに読めて、物語としても面白い作品です。
惜しむらくは、全集にしか邦訳がないことです。

『カストルッチョ・カストラカーニ伝』作品について

マキァヴェッリが『フィレンツェ史』を執筆する機縁となったのが、『カストルッチョ・カストラカーニ伝』です。
ルッカの豪族ミケーレ・グイニージが破産したため、フィレンツ

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『第三の波 20世紀後半の民主化』 サミュエル・P・ハンティントン[著] 【読書ノート】

『第三の波 20世紀後半の民主化』 サミュエル・P・ハンティントン[著] 【読書ノート】

『文明の衝突』著者の主著、新訳で登場!
100分de名著で取り上げられた『独裁体制から民主主義へ』に興味を持った方には特におすすめ!
民主主義が揺らいでいる今だからこそ読みたい、20世紀比較政治学の金字塔的著作『第三の波』です。

1970年代半ばから1990年の間に、南欧、南米、アジア、共産主義圏で民主主義体制への移行が起きました。
ジーン・シャープの『独裁体制から民主主義へ』は、これらの成功例

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