オリグチ

積ん読常習者。つまみ食いだけして読み散らかした、人文社会科学、一般向け自然科学の本が多数。 新刊の読前期待、購入書の読後感想を投稿中。

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『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋』 渡辺靖[著]

アメリカ大統領選挙の投票日11月5日がまさに目前に迫って来ました。 トランプ氏の再登板となるか、はたまたハリス氏がそれを阻むのか。 世界的な選挙イヤーの取りの一番を前に、積読中だったアメリカ関連本、渡辺靖『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋』(岩波新書 2022年)を読む。 抽象的なアメリカ論を思わせるタイトルですが、トランプ以降のアメリカの政治的状況について概説した本です。 著者の渡辺靖氏は、『リバタリアニズム』(中公新書 2019年)や『白人ナショナリズム』(

    • 『少女終末旅行』は終わるまで終わらないよ🎶

      SNSのトレンドランキングに懐かしい名前が!!……『少女終末旅行』!? 2017年、ちょうど7年前の今頃にアニメ化されて、同時期に原作コミックスも完結した作品。 当時、私はアニメを見て作品を知り、原作を購入したクチです。 どうやら、新潮社のWEBマンガサイト「くらげバンチ」で、11月5日11時59分まで、全42話が期間限定無料公開中になっているのがトレンドランクインの理由らしい。 YouTubeでも、ノンクレジットのオープニング「動く、動く」とエンディング「More On

      • 『チ。-地球の運動について-』(第4話)【アニメ感想】

        永遠や完璧が見出せない地上で、不完全な自分たちはどう生きていくのか。 どこに希望を見出せば、何に期待すれば、自分の人生は満たされるのか。 来世か、今世か、それとも後世か… 地上や天上に広がる自然は、我々とは異なる理にしたがって動いている。 自然は、ただそこにある。我々とは無関係に。 突き詰めてしまえば、それらは我々にとって意味を持たない。 それにもかかわらず、大自然を見て美しいと感じてしまう。 そして、そこに“何か”が見えてしまう。 自分にとって役に立つ立たないとは違った

        • 『吾妻鏡-鎌倉幕府「正史」の虚実』藪本勝治[著]中公新書

          まだ記憶に新しいNHK大河ドラマ、「どうする義時」もとい『鎌倉殿の13人』。 その脚本作成にあたって、三谷幸喜さんがベースとした歴史書が『吾妻鏡』です。 その『吾妻鏡』について書かれた『吾妻鏡ー鎌倉幕府「正史」の虚実』(中公新書 2024年)を読みました。 『吾妻鏡』とはどのような書物か鎌倉時代の公式記録としての『吾妻鏡』 『吾妻鏡』は、鎌倉幕府による歴史書、武家政権による日本初の公式記録と言われる文書です。 扱っている時期は、源頼朝が挙兵した1180年前後から元寇の手前

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          『なんで死体がスタジオに!?』森バジル[著]【読書感想】(ネタバレなし)

          TV地上波全国28局ネット、ゴールデンタイムの生放送特番。 出演者の1人が、放送40分前になってもまだ来ない…連絡も取れない… そう思ってたら、とっくにスタジオ入りしてました。 死体として!! 死体を発見してしまったプロデューサー。 とある事情により、警察に通報せず、生放送の続行を決断!? この狂気の沙汰の行方は!? 生放送を無事に終えることができるのか? そして、いったい犯人は誰なのか? といった感じのスリラー小説、森バジル『なんで死体がスタジオに!?』を読み終える。

          『なんで死体がスタジオに!?』森バジル[著]【読書感想】(ネタバレなし)

          『チ。ー地球の運動についてー』(第1回放送)【アニメ感想】

          アニメ『チ。ー地球の運動についてー』、ついに第1回が放送、さっそく視聴しました! 舞台は15世紀ヨーロッパのP王国。C教によって地動説が異端とされている世界。 地動説を追究する学者、そして地動説を取り締まる異端審問官。 彼らと出会ってしまった1人の少年から始まる、熱き血の物語。 アニメの出来が期待していた以上に素晴らしくて、物語に引き込まれて、あっという間に2話分の時間が過ぎてしまいました。 原作コミックスだと、第1集収録の第3話に少し入ったところまでです。 街並みや星

          『チ。ー地球の運動についてー』(第1回放送)【アニメ感想】

          彗星をめぐる論争ーガリレオ『偽金鑑識官』

          いま、ここ100年ではもっとも明るい彗星が地球に接近しているそうですね。 この紫金山・アトラス彗星(ツチンシャンと読むらしい)、地球に再接近する2024年10月12日頃には、肉眼でもはっきりと見ることができるとのこと。 この彗星をフォーカスしたムック本を書店で見かけたくらい天文界隈が大きく扱うほどならば、天文素人の私でも結構はっきり見ることができるほどすごいんじゃないかなと期待しています。 そして、この彗星について知ったのが、ちょうど、ガリレオが彗星について書いた本、『偽金

          彗星をめぐる論争ーガリレオ『偽金鑑識官』

          ガリレオ『星界の報告』

          『チ。-地球の運動について-』アニメ放送が間近となったのに触発されて、天文学の金字塔的著作、ガリレオ『星界の報告』を読む。 ガリレオ『星界の報告』天文学に革命を起こした書 天文学のクライマックス的なシーンというと、それこそ『チ。』でテーマになった、天動説から地動説への転換が挙げられるでしょう。 しかし、それ以上に大きな画期的な天文学上の出来事は他にあります。 天動説と地動説との間の断絶よりもっと大きな飛躍、それは、望遠鏡で空を覗いたこと。 今でこそ、天文観測には望遠鏡が

          ガリレオ『星界の報告』

          【読書感想】『女子高生 制服路上観察』佐野勝彦[著]

          なんともいかがわしい感じの書名。 気晴らしになりそうな本はないかなぁとKindle Unlimitedで光文社新書のリストを眺めていたら、この本が目にとまってしまった。 タイトルから受ける印象とは違って、内容はいたって真面目なものです。 学生服メーカーに勤務する著者が、女子高生達の制服の着崩し、アレンジについてインタビューなどを実施して、その分析を試みたという内容。 前半は学生側からの視点、後半は学校や学生服業界側からの視点に、より多くの比重が割かれています。 学生からす

          【読書感想】『女子高生 制服路上観察』佐野勝彦[著]

          『ガリレオ裁判ー400年後の真実』

          『チ。−地球の運動について−』アニメ化マンガ『チ。-地球の運動について-』のアニメ、10月からの放送開始も迫り、本PVもつい先日公開されました。 15世紀ヨーロッパのP王国で、地動説を追究する学者、そして地動説を取り締まるC教異端審問官と、1人の少年が出会ったことから始まる物語。 この1冊だけでも物語として完成しているマンガ第1集、その展開が議論を呼んだ最終第8集がアニメでどう表現されるのか、今からとても楽しみです。 (第1話と第2話が無料で公開、2024年11月5日までは

          『ガリレオ裁判ー400年後の真実』

          『実存アンプラグド』/『キェルケゴール』

          哲学者キルケゴールが現代日本に転生!バンドマンになる! 「ここでは楽器を持って歌えば どんなに面白みのない思想であっても 人々は大真面目に聞いてくれる」(44頁) そんな感じで始まったマンガ『実存アンプラグド』第1巻が発売されました。 現代によみがえった哲学者が、人々の悩みに答えやきっかけを与える、みたいな上から目線の(説教くさい)内容がメインというわけではありません。 ジョン・ロックやパスカルといった他の思想家も現代に転生してきていて 、ちょっと変わった人達が一緒にわちゃ

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          ロシア専制政治の原像〜【読書感想】三浦清美『ロシアの思考回路』

          ロシアの専制政治の「伝統」はどこに由来するのか。 それは、ロシア正教によって先鞭をつけられた。 そう回答するのは、三浦清美『ロシアの思考回路 その精神史から見つめたウクライナ侵攻の深層』(扶桑社新書 2022)だ。 現代ロシアについて論じているような題名がついているが、ロシアやウクライナの歴史について書かれた本だ。 三浦清美の前著『ロシアの起源』では、モンゴル侵攻からイワン雷帝前夜までのロシア史を扱っていた。 今回は、キエフ・ルーシ時代からピョートル大帝前夜までの時代を取

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          ロシア−ウクライナ問題の起源〜【読書感想】『「ロシア」は、いかにして生まれたか』/『ロシアの源流』

          ロシアがウクライナに侵攻して、はや2年以上が経過した。 ロシアとウクライナとの因縁は、別に今日昨日のプーチン時代に端を発するものではない。 根深い紆余曲折を数百年単位で積み上げて来た歴史が地下に横たわっている。 プーチン大統領がウクライナ侵攻の半年前、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」という論文を発表したというのも、(その論文の内容の妥当性はともかく)ロシアとウクライナとの歴史的な因縁を無視できないことを示していると言えるだろう。 1 ロシア−ウクライナ問題

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          ロシア=専制政治の歴史〜【読書感想】『ロマノフ朝史1613-1918』 サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ[著]

          17世紀初頭から300年間ロシアに君臨し、革命の最中に一族が惨殺されたロマノフ朝。 その皇室の歴史を描いた、サイモン・セバーグ・モンテフィオーリの『ロマノフ朝史1613-1918』上下巻(白水社 2021年:原著2016年刊)を読んだ。 1 『ロマノフ朝史1613-1918』の全体的な印象宮廷の群像劇 『ロマノフ朝史』は、ロシア皇帝とその一族(愛人を含む)、そして寵臣たちの言動や人間関係を中心に宮廷を描いた群像劇となっている。 そのため、国家や社会といったロシア全体に関わ

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          『近代美学入門』 井奥陽子[著] ちくま新書【読書感想】

          これぞ美学の入門書の決定版! これ以上やさしく書くことはむずかしいのではないでしょうか。 井奥陽子『近代美学入門』(ちくま新書2023)は、誇張なくそう思えるような良書でした。 新書大賞にランクインしているのは伊達ではないようです。 「芸術に興味はあるけど、美術について理論的だったり抽象的だったりする話となるとちょっと…」 そんな方にこそ、あきらめる前に手に取ってほしいと思える入門書。 また、近代美学についてある程度知っている方にもおすすめできると思います。 とても整理さ

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          マキァヴェッリ『君主論』〜【マキァヴェッリを読む】Part 10

          マキァヴェッリといえば『君主論』、『君主論』といえばマキァヴェッリ。 どちらか一方しか知らない人など想像できないほどの、マキァヴェッリの代表作です。 邦訳について各種邦訳の特徴 〈1〉角川ソフィア文庫版は、多賀善彦の名義で戦時中に出版された『マキアヴェルリ選集』収録の邦訳を改訂したもの。 筑摩書房『マキァヴェッリ全集』月報によれば、フランス語訳からの重訳とのこと。 訳文および参照した原典の校訂本も古いのが難点。 ただし、マキァヴェッリの『ディスコルシ』以外の著述にも触れた

          マキァヴェッリ『君主論』〜【マキァヴェッリを読む】Part 10