オリグチ

積ん読常習者。つまみ食いだけして読み散らかした、人文社会科学、一般向け自然科学の本が多…

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積ん読常習者。つまみ食いだけして読み散らかした、人文社会科学、一般向け自然科学の本が多数。 新刊の読前期待、購入書の読後感想を投稿中。

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ガリレオ『星界の報告』

『チ。-地球の運動について-』アニメ放送が間近となったのに触発されて、天文学の金字塔的著作、ガリレオ『星界の報告』を読む。 ガリレオ『星界の報告』天文学に革命を起こした書 天文学のクライマックス的なシーンというと、それこそ『チ。』でテーマになった、天動説から地動説への転換が挙げられるでしょう。 しかし、それ以上に大きな画期的な天文学上の出来事は他にあります。 天動説と地動説との間の断絶よりもっと大きな飛躍、それは、望遠鏡で空を覗いたこと。 今でこそ、天文観測には望遠鏡が

    • 【読書感想】『女子高生 制服路上観察』佐野勝彦[著]

      なんともいかがわしい感じの書名。 気晴らしになりそうな本はないかなぁとKindle Unlimitedで光文社新書のリストを眺めていたら、この本が目にとまってしまった。 タイトルから受ける印象とは違って、内容はいたって真面目なものです。 学生服メーカーに勤務する著者が、女子高生達の制服の着崩し、アレンジについてインタビューなどを実施して、その分析を試みたという内容。 前半は学生側からの視点、後半は学校や学生服業界側からの視点に、より多くの比重が割かれています。 学生からす

      • 『ガリレオ裁判ー400年後の真実』

        『チ。−地球の運動について−』アニメ化マンガ『チ。-地球の運動について-』のアニメ、10月からの放送開始も迫り、本PVもつい先日公開されました。 15世紀P王国で、地動説を追究する学者、そして地動説を取り締まるC教異端審問官と、少年が出会ったことから始まる物語。 この1冊だけでも物語として完成しているマンガ第1集、その展開が議論を呼んだ最終第8集がアニメでどう表現されるのか、今からとても楽しみです。 (第1話と第2話が無料で公開されているので、未読の方はぜひお試しを!)

        • 『実存アンプラグド』/『キェルケゴール』

          哲学者キルケゴールが現代日本に転生!バンドマンになる! 「ここでは楽器を持って歌えば どんなに面白みのない思想であっても 人々は大真面目に聞いてくれる」(44頁) そんな感じで始まったマンガ『実存アンプラグド』第1巻が発売されました。 現代によみがえった哲学者が、人々の悩みに答えやきっかけを与える、みたいな上から目線の(説教くさい)内容がメインというわけではありません。 ジョン・ロックやパスカルといった他の思想家も現代に転生してきていて 、ちょっと変わった人達が一緒にわちゃ

        ガリレオ『星界の報告』

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          ロシア専制政治の原像〜【読書感想】三浦清美『ロシアの思考回路』

          ロシアの専制政治の「伝統」はどこに由来するのか。 それは、ロシア正教によって先鞭をつけられた。 そう回答するのは、三浦清美『ロシアの思考回路 その精神史から見つめたウクライナ侵攻の深層』(扶桑社新書 2022)だ。 現代ロシアについて論じているような題名がついているが、ロシアやウクライナの歴史について書かれた本だ。 三浦清美の前著『ロシアの起源』では、モンゴル侵攻からイワン雷帝前夜までのロシア史を扱っていた。 今回は、キエフ・ルーシ時代からピョートル大帝前夜までの時代を取

          ロシア専制政治の原像〜【読書感想】三浦清美『ロシアの思考回路』

          ロシア−ウクライナ問題の起源〜【読書感想】『「ロシア」は、いかにして生まれたか』/『ロシアの源流』

          ロシアがウクライナに侵攻して、はや2年以上が経過した。 ロシアとウクライナとの因縁は、別に今日昨日のプーチン時代に端を発するものではない。 根深い紆余曲折を数百年単位で積み上げて来た歴史が地下に横たわっている。 プーチン大統領がウクライナ侵攻の半年前、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」という論文を発表したというのも、(その論文の内容の妥当性はともかく)ロシアとウクライナとの歴史的な因縁を無視できないことを示していると言えるだろう。 1 ロシア−ウクライナ問題

          ロシア−ウクライナ問題の起源〜【読書感想】『「ロシア」は、いかにして生まれたか』/『ロシアの源流』

          ロシア=専制政治の歴史〜【読書感想】『ロマノフ朝史1613-1918』 サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ[著]

          17世紀初頭から300年間ロシアに君臨し、革命の最中に一族が惨殺されたロマノフ朝。 その皇室の歴史を描いた、サイモン・セバーグ・モンテフィオーリの『ロマノフ朝史1613-1918』上下巻(白水社 2021年:原著2016年刊)を読んだ。 1 『ロマノフ朝史1613-1918』の全体的な印象宮廷の群像劇 『ロマノフ朝史』は、ロシア皇帝とその一族(愛人を含む)、そして寵臣たちの言動や人間関係を中心に宮廷を描いた群像劇となっている。 そのため、国家や社会といったロシア全体に関わ

          ロシア=専制政治の歴史〜【読書感想】『ロマノフ朝史1613-1918』 サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ[著]

          『近代美学入門』 井奥陽子[著] ちくま新書【読書感想】

          これぞ美学の入門書の決定版! これ以上やさしく書くことはむずかしいのではないでしょうか。 井奥陽子『近代美学入門』(ちくま新書2023)は、誇張なくそう思えるような良書でした。 新書大賞にランクインしているのは伊達ではないようです。 「芸術に興味はあるけど、美術について理論的だったり抽象的だったりする話となるとちょっと…」 そんな方にこそ、あきらめる前に手に取ってほしいと思える入門書。 また、近代美学についてある程度知っている方にもおすすめできると思います。 とても整理さ

          『近代美学入門』 井奥陽子[著] ちくま新書【読書感想】

          マキァヴェッリ『君主論』〜【マキァヴェッリを読む】Part 10

          マキァヴェッリといえば『君主論』、『君主論』といえばマキァヴェッリ。 どちらか一方しか知らない人など想像できないほどの、マキァヴェッリの代表作です。 邦訳について各種邦訳の特徴 〈1〉角川ソフィア文庫版は、多賀善彦の名義で戦時中に出版された『マキアヴェルリ選集』収録の邦訳を改訂したもの。 筑摩書房『マキァヴェッリ全集』月報によれば、フランス語訳からの重訳とのこと。 訳文および参照した原典の校訂本も古いのが難点。 ただし、マキァヴェッリの『ディスコルシ』以外の著述にも触れた

          マキァヴェッリ『君主論』〜【マキァヴェッリを読む】Part 10

          『ダンテ その生涯』アレッサンドロ・バルベーロ[著] 【読書感想】

          『神曲』の作者、西洋文学最高峰の詩人ダンテ。 しかしその生涯は、詩人というより政治指導者としての波乱に富む人生でした。 そんなダンテについて、中世史研究者が著したダンテの評伝が翻訳出版されました。 『ダンテ その生涯』アレッサンドロ・バルベーロ[著](亜紀書房 2024年)です。 ダンテの評伝というと、 「まずダンテが生きた13世紀後半から14世紀初頭にかけてのイタリアやフィレンツェの政治情勢を記述、そこに『神曲』での著名人物評やダンテの個人的エピソードを散りばめていく」

          『ダンテ その生涯』アレッサンドロ・バルベーロ[著] 【読書感想】

          マキァヴェッリ『カストルッチョ・カストラカーニ伝』〜【マキァヴェッリを読む】Part9

          歴史上の人物を題材にした、マキァヴェッリのマイナー作品を今回は取り上げます。 難しいことを考えずに読めて、物語としても面白い作品です。 惜しむらくは、全集にしか邦訳がないことです。 『カストルッチョ・カストラカーニ伝』作品について マキァヴェッリが『フィレンツェ史』を執筆する機縁となったのが、『カストルッチョ・カストラカーニ伝』です。 ルッカの豪族ミケーレ・グイニージが破産したため、フィレンツェの債権者達は彼への債権を取り立てようとしました。 その債権取り立ての依頼を受け

          マキァヴェッリ『カストルッチョ・カストラカーニ伝』〜【マキァヴェッリを読む】Part9

          『第三の波 20世紀後半の民主化』 サミュエル・P・ハンティントン[著] 【読書ノート】

          『文明の衝突』著者の主著、新訳で登場! 100分de名著で取り上げられた『独裁体制から民主主義へ』に興味を持った方には特におすすめ! 民主主義が揺らいでいる今だからこそ読みたい、20世紀比較政治学の金字塔的著作『第三の波』です。 1970年代半ばから1990年の間に、南欧、南米、アジア、共産主義圏で民主主義体制への移行が起きました。 ジーン・シャープの『独裁体制から民主主義へ』は、これらの成功例から民主化への実践的なノウハウを引き出しています。 一方、サミュエル・ハンチント

          『第三の波 20世紀後半の民主化』 サミュエル・P・ハンティントン[著] 【読書ノート】

          マキァヴェッリ『フィレンツェ史』(その3・『フィレンツェ史』におけるマキァヴェッリの政治思想)〜【マキァヴェッリを読む】Part8

          今回は、『フィレンツェ史』のなかの理論的記述、マキァヴェッリの政治思想が表現されたものを、自分なりに分類して抜粋したものになります。 『フィレンツェ史』読書ノート(注目ポイントの引用)「政治思想」篇 支配領域の拡大と従属都市への対応についてマキァヴェッリの時代のイタリアの国家とは、まだら状の国家でした。 都市が中心となって周辺領域をまとめ、その都市たちを全領域の中核となる都市が束ねる。 各都市が独自の法や慣例にしたがっており、中核都市が自分の勢力圏を一元的に支配できるわけで

          マキァヴェッリ『フィレンツェ史』(その3・『フィレンツェ史』におけるマキァヴェッリの政治思想)〜【マキァヴェッリを読む】Part8

          『ニッポン政界語読本』単語編/会話編 【おすすめ本】

          『ニッポン政界語読本 会話編 無責任三人称から永遠の未来形まで』/『ニッポン政界語読本 単語編 ぼかし言葉から理念の骨抜き法まで』 イアン・アーシー[著]「政治家になりたい人、必修! どこで学んでいるのかわからない政治家の表現テクニックを一般公開! 与野党問わず、昨今の政治家が提供に協力してくれた豊富な例文集! パターンごとに分類して徹底解説! 各章の最後には、理解度を確認するための練習問題つき!」 こんな感じで受験参考書風に内容を紹介しても、あながち間違いではないような本

          『ニッポン政界語読本』単語編/会話編 【おすすめ本】

          『筋肉坊主のアフリカ仏教化計画 そして、まともな職歴もない高卒ほぼ無職の僕が一流商社の支社長代行として危険な軍事独裁政権末期のナイジェリアに赴任した2年間の話』【おすすめ本】

          『筋肉坊主のアフリカ仏教化計画 そして、まともな職歴もない高卒ほぼ無職の僕が一流商社の支社長代行として危険な軍事独裁政権末期のナイジェリアに赴任した2年間の話』 石川コフィ[著]勘違いしないでください。 こんなタイトルですが、これはライトノベルでもなろう系小説でもありません。 現実味のない筋肉坊主なるパワーワードがあっても、これは紛れもなくノンフィクションです。 本書は、クライマックスのシーンから始まります。 顔を赤らめた仏教僧が、ナイジェリア大統領の胸ぐらを掴んで詰め寄っ

          『筋肉坊主のアフリカ仏教化計画 そして、まともな職歴もない高卒ほぼ無職の僕が一流商社の支社長代行として危険な軍事独裁政権末期のナイジェリアに赴任した2年間の話』【おすすめ本】

          『家を失う人々』/『小山さんノート』【読書感想】

          年始の能登半島地震。 避難生活を送る人々の話に感化されて、積ん読状態になっていた本を引き出してきて読む。 どちらも、家を失うことに関係する内容。 『家を失う人々 最貧困地区で生活した社会学者、1年余の記録』 マシュー・デズモンド[著] 栗木さつき[訳]ピューリッツァー賞など数々の受賞歴を誇るノンフィクション作品。 2008年から2009年の間に取材した実話をもとに構成されている。 リーマン・ショックによる世界金融危機で景気が悪化していた時期、家賃滞納により住む家から強制退去

          『家を失う人々』/『小山さんノート』【読書感想】