マガジンのカバー画像

240
運営しているクリエイター

2023年9月の記事一覧

おなじ

おなじ

「ここ、いきたい」
パンを齧りながら送る
ことしの夏はふたりで走れなかったから
大阪のはずれの山のカフェ
お掃除とお買い物すましてスマホを見たら
起きたばかりのあなた
「いいよ」とひとつ返事
めずらしいなとおもって
なれないまとめ髪してたら
ちかづいてくる
おおきな地響きはいつもとおなじ
あなたにかりたヘルメットとサングラス
いつも似合わないって笑われる
まっくろな車体にピンクの座布団しいて
うし

もっとみる

悲しい服

くさばなや
どうぶつは
うつくしさだけで
いかりやしっとさえ
うつくしい
いかりやしっとを
ひょうげんするすべを
もっていないかあるいは
それほどもたないからだ

にんげんは
うつくしさのそとがわに
いくえにも
かたいきじの
ふくをきこんで
それをおとなといって
そのきじとは
いかりやしっとを
ちょくせつあらわさずに
けれどもないことにもできずに
ありとあらゆるほうほうで
せかいにばらまいたことに

もっとみる

生きることは

生きることは
当たり前ではない
真っ暗な宇宙に浮かぶ
大きな石の上で
いのちが有ること
そのいのちの中に
自分がいること
すべて

生きていること
それはとても
不思議なこと
それを人は「有り難い」という
だから生きているあいだは
生きることに集中しなさい
全力で生きなさい
脇目も振らずに生きなさい
生きることは悦びなのです
今ここに生きられるということは
感謝でしかないのです
それがわからないよ

もっとみる

はなしてください

あなたは話してください
何もかもすべて
話してください
話して気が楽になるなら
話し続けてください
何もかもひとりで
抱え込まないで
いくつものさみしい夜を越え
もう悲しみを抱えきれないのなら
あなたはすべて離してください
握りしめている拳をひらいて
あなたは
離し続けてください
諦めずに
夜が明けても
続けていいのですから
悲しみを
苦しみを
どうかすべて
わたしにはなしてください

2023.

もっとみる

ばかでいろ

どんなにやさしいと言われても
どんなにいい人だと言われても
じぶんでじぶんを
やさしいだとか
いい人だとか
おもうものはにせものだ
人は汚いものなのだ
人はずるいものなのだ
人は情けないものなのだ
だから、じぶんのこころを
過信するな
自分のこころの汚れたものを
見過ごすな
ただ賢くあれ
騙されず
奪われず
騙さず
奪わず
疑わず
こころの中をできるだけ
透過させておいて
勝負には勝たず
勝ちたい

もっとみる

しりたい

すきということは
しりたいということと
おなじなのかな
すきなひとや
すきなもののことは
しりたいとおもうもの
けれどずっといっしょにいると
もうしったようなきがして
すきということは
ただそばにいることのような
そんなきがするけれど
おだやかに
しりたいとおもいつづけるきもち
それがたえないことが
あいというものなのではないかとおもう
だからあいは
えいえんにそんざいするのだとおもう

2023

もっとみる

うつわ

苦労がそのひとを
どのように成長させるか
それは
そのひとの
うつわだ
大きければ
いいわけじゃない
うつくしければ
いいわけじゃない
小さくても
古ぼけていても
欠けていてもいい
毎日よく磨いてあるか
それがたいせつなのだ
毎日よく磨いたうつわで
苦労の水をうけとめれば
すきとおったきれいな水が
のめるじゃないか
そのすきとおったきれいな水をのみ
すきとおったきれいなこころが
うまれるのだから

もっとみる

あんなに大地が

あんなに大地がうつくしければ
還ってきたこころがせき立てて
あなたはあなたをうつくしく

あんなに大地がうつくしければ
うしなったものが
もう還らないと思ったものが
気づけばそこにあって

あなたはあなたとして
あそこで土を踏み
わたしはわたしとして
ここで
生きられるのだろうか

ひとがたくさんいること
大地がみえないこと
くうきが汚れ
ひかりが遮られること
虫がいないこと

生きものと友達にな

もっとみる

喧嘩

喧嘩はしたほうがいい
しないようにすると
言いたいことも言えないで
自分を相手に開けないから
相手のことも知れないで
掴めない、あいまいな気持ちのやり場に
互いに困ってしまうから
感情的になりすぎないほうがいい
自分が正しい
相手が間違っている
何故わたしの気持ちが
わからないんだ
そんな考えは捨てて
相手が何故そう言うのか
何故悲しい態度をとったり
行動に出るのか
考える
はじめはわからなくても

もっとみる

からだ

わたしたちは
草や肉や魚をたべ
水をのみ
この躰をつくる
いのちをたべることで
いのちを存える
ではその存えたいのちを
どうするのか

わたしたちは
くうきをたべる
ひかりをのむ
そうして
考えることができる

おいしいたべものをたべ
おいしい水をのむことで
健康な躰ができるように
おいしいくうきをたべ
おいしいひかりをのむことで
健康な考えができる

躰と、考えがあってはじめて
わたしたちはほん

もっとみる

恐怖

闇は恐ろしい
何も見えないことで
そこにあるものを感じるから恐ろしい
たしかにそこにある、なにかが
恐ろしい

太陽が顔を出し
空が青く白み始めると
すこし落ち着くのだ
じき日が昇れば
なにもかもがすっかりよく見え
目に見えるもので感覚は埋め尽くされる
しかし目に見えないものはどこへも行かず
わたしが見えないだけなのだ

生存競争に勝ちすぎる者は
我儘とも言えるのではないか
やりたい放題、敵はなし

もっとみる

2023年秋 旅

旅はきまぐれ
常々行きたいと思うところに
一向に行かないこともあれば
ふと耳にした地に
にわかに興味を持ち
すぐさま列車を予約することもある

旅行者にこころ開かない土地もあれば
その土地の風俗が
いちげんさんに開かれる場所もある
わたしは旅に出る前から
もうその地に夢を見ていた

日本のまんなかは
東京でも大阪でもなく
なんとなく
東北のような気がしていた
米を育てるところ
水がきれいで
山が生

もっとみる

浮き上がれば沈む
沈めば浮き上がれやしない
しかしほんとうは
浮き上がりたいのではなくて
底上げをしたいのだ
だからずっと底にいて
悪い沈み方さえしなければいい
反省などなんの意味もなくて
思考力より判断力
切り捨てるべきは自意識
他者から見たわたし、なんて
どこにも存在しない
わたしが信じるわたしだけが
わたしだ
だから目を曇らせるな
今だけ見て進め
強さとは何か
疑わぬことだ
だからわたしは底

もっとみる

たったひとりの

目が覚めたら
昔の彼がいた
わたしは安堵ではなく
喪失感を覚え

彼はわたしを抱きしめ
「おかえり」とささやいた
わたしは、この抱擁で
感じられないあたたかさが
ついさっきまであったことを思い出した
けれどそのあたたかさが
誰によってもたらされたのか
どうしても
思い出すことができなかった

そのあたたかさは
わたしがつくりだした
まぼろしなのだと
ひとりごちて
目が覚め

わたしはひとりなのだと

もっとみる