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【論文レビュー】何が個人のアンラーニングを促すのか?:Matsuo (2018)

【論文レビュー】何が個人のアンラーニングを促すのか?:Matsuo (2018)

アンラーニングという言葉はビジネス場面でも2000年頃からしばしば使われるようになりました。その重要性は理解されながらも、何によってアンラーニングが促されるのかという個人単位での実証研究はほとんどなされてこなかったそうです。本論文では、松尾先生が実証研究をもとに何が個人のアンラーニングを促進するのかについて明らかにされています。

結果図本論文で明らかになっているのは、①アンラーニングに影響を与え

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【書評】藤本タツキ『ルックバック』-凡人として生きるということ-

【書評】藤本タツキ『ルックバック』-凡人として生きるということ-

はじめに3度目の正直

私が藤本タツキの『ルックバック』を読んだのはこれで3度目である。最初に読んだのは読み切りとして初めて掲載された時。当時『チェンソーマン』が話題になっていたため、この作品も大いに注目されていた。初読の感想は「面白い」であった。それ以上でもそれ以下でもなく、なぜ面白いと思ったのか追求するほど心が揺さぶられた訳でもない。

次に読んだのは『さよなら絵梨』が掲載された時である。その

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【読書メモ】ジョブ・クラフティングの実践的入門書:『50代からの幸せな働き方――働きがいを自ら高める「ジョブ・クラフティング」という技法』(高尾義明著)

【読書メモ】ジョブ・クラフティングの実践的入門書:『50代からの幸せな働き方――働きがいを自ら高める「ジョブ・クラフティング」という技法』(高尾義明著)

高尾義明先生の最新のジョブ・クラフティング本を読みました。私も50歳が見えてきた年頃でもあるので共感できる部分も多く、またジョブ・クラフティングについての解説もさらに進化されていて興味深く拝読しました。ジョブ・クラフティングについて知りたい、実践に活用してみたい、という方々にオススメの一冊です。

ジョブ・クラフティングとは何か最初に、ジョブ・クラフティングの定義からみていきます。ジョブ・クラフテ

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【論文レビュー】組織調査の結果を現場でフィードバックするときに何をすれば良いのか?:東南・池田・中原 (2024)

【論文レビュー】組織調査の結果を現場でフィードバックするときに何をすれば良いのか?:東南・池田・中原 (2024)

エンゲージメント・サーベイをはじめとした組織調査を導入している企業は多くなりました。ただ、組織調査の結果を現場で共有できている部門は決して多くなく、さらには結果を基にコミュニケーションがとられている部署はほとんどないのではないでしょうか。本論文で開発された尺度は、ざっくり言えばサーベイフィードバックを行う主体による組織開発行動として望ましいものを示したものと解釈できます。そのため、組織調査に携わる

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「虎に翼」第54話について

 いままで本作について特定のエピソードの感想を書いたことはなかったけど、この第54話は全体を通してもキーになる或いは珠玉の一話になる気がして、どうしても現時点で文章に残しておきたいと思いました。ただし、本話は法律論が主軸ではないので、弁護士としての分析ではなく、あくまでいちドラマファンとしての感想です。

「ごめん。昨夜も香子のこと黙っていたことも」
 やはり汐見は謝ることのできる男。妻の頼みで寅

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「虎に翼」6月14日時点感想書き捨て

 「虎に翼」の感想もnoteに書きたいなと思いつつ、話は猛スピードで進んでいくし、1話1話の情報量は多すぎるしで、なかなか書けないでいました。ちゃんとしたもの書こうというこだわりを捨て、たまたま時間が空いて思いついたことを書き殴ったものを、ここに転記します。続くかどうかは不明です。以下ご笑覧下さい。

1) はじまり

 最初は意識的に期待しないようにしていた。期待したら裏切られるから。それほどま

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バー開業顛末記⑥「理想的な物件に出会ってしまった」

バー開業顛末記⑥「理想的な物件に出会ってしまった」

※バー開業顛末記を最初から読みたい方はこちらから。

つ、ついに出会ってしまったかも!

物件を探し始めて1年弱。
この物件を内見した時の率直な感想である。
(そう。。。わりと長く探したのです)

前回、物件のイメージについてこんなことを書いた。

そう、まさにこんな「イメージ通りの物件」がまさかのまさかで見つかったのだった。

・隠れ家である(「静かでひっそりした場所」にある)
・住宅街の一軒家

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西麻布 壌を閉店します

西麻布 壌を閉店します

2024年6月21日、和風スタンディングバー「西麻布 壌 (じょう)」が閉店します。
2003年、西麻布の交差点の眼の前に「日本人が使ってサマになる、洗練されていながら気楽に使える立ち飲み屋」として生を受けた7坪の小さなお店ですが、その約21年の営業に幕を下ろすこととなります。

僕自身はすでに「西麻布 壌」を運営する株式会社グレイスの経営から完全に離れていますし、創業者の変なノスタルジーに囚われ

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【読書メモ】デューイと衝動とプラグマティズム:『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』(谷川嘉浩著)

【読書メモ】デューイと衝動とプラグマティズム:『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』(谷川嘉浩著)

著者はジョン・デューイを研究する哲学者です。なかなか刺激的なタイトルの本ですが、衝動という言葉をキーワードにし、豊富なコミック作品を中心とした例示を基に書かれているため軽妙で読みやすい本です。それでいながら、ライフキャリアについて深く考えさせられる好著でした。私は、プラグマティズムの思想家ではウィリアム・ジェイムズを好んできたのですが、それは岩下弘史さんという素晴らしいジェイムズ研究者(かつ夏目漱

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【読書メモ】『チームレジリエンス 困難と不確実性に強いチームのつくり方』(池田めぐみ・安斎勇樹著)

【読書メモ】『チームレジリエンス 困難と不確実性に強いチームのつくり方』(池田めぐみ・安斎勇樹著)

レジリエンス(復元力)は最近ビジネス場面でもよく聞くようになってきましたが、本書のタイトルであるチームレジリエンスはまだそれほど定着していないかもしれません。ただ、本書を読んでみての感想としては、日本企業で働く人々はチームレジリエンスの重要性を身に沁みて感じはじめており、2024年はチームレジリエンス元年とでも呼ばれる年になるのではないか、というものです。今回のnoteではこの点をとっかかりにして

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いなくなった、あの人のこと

いなくなった、あの人のこと

今年の3月ごろ、足を運ぶのにダントツで気が重い場所は、役所だった。

母が感染性心内膜炎というやばい病気で入院。

祖母の物忘れが急加速し、介護認定。

ダウン症の弟と祖母が一緒になるとトム&ジェリーからユーモアを抜いたような様相になることが増えたので、弟のグループホーム入居。

十年も精神病院で過ごしていた祖父が亡くなったので、相続。

わたしが東京から神戸へ出戻ることになったので、引っ越し。

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生活保護世帯から東大で博士号を取るまで①

最近東大で博士号を取りました。専門は数学です。

数学の道を志すと決めたのは15歳のときでした。
この時の私は生活保護受給世帯で暮らしており、他の人より多くの困難を覚悟してこの決断をしました。

そして、実際に、ここまで来るには多くの困難がありました。
ここではその困難についてと、私がそれをどう打開したのかについてを書きたいと思います。

本稿は私の経験を共有することにより、次の世代を励まし、生活

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春の「連」茶会(VOL.2)

春の「連」茶会(VOL.2)

心待ちにしていた桜が満開を迎えた日、都内のお茶室で、伊藤穰一さんと松本大さんのお茶会が開催されました。私は記録係補佐として、同席させていただきました。

濃茶席

壁にかかった軸は「松風供一啜(しょうふういっせつにきょうす)」。裏千家第14代御家元、淡々斎の筆です。名水を汲んで点てたお茶を、谷からの松風と共に一啜りにする、という漢詩の一説なのだそう。

松風の「松」は、「大(おおき)」というお名前

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東工大の卒業式で祝辞、述べてみた

東工大の卒業式で祝辞、述べてみた

母校の東京工業大学の卒業式(正式には学位授与式、学部および大学院の2回)で来賓として祝辞を読む機会を頂いた。2024年3月26日。
東工大は24年10月には東京医科歯科大学と合併して東京科学大学となるので、「東京工業大学」としては最後の春の卒業式だった。
そんな大事な機会に、もっと王道的に凄い卒業生がアボガドロ定数ほどいる中で、私を推薦してくれた益学長には感謝です。

聞いてる卒業生・親御さんたち

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