Takahito Sasaki(佐々木孝仁)

インクルーシブ・リーダーシップ駆け出し研究者|立教大学経営学研究科 博士後期課程在籍|立教大学大学院リーダーシップ開発コース修了|HRD・OD・LD|インクルージョン|DE&I|アウトドア|島旅|サウナ|油そば|マンガ|余白|ロック|湯者|一杯目ビール|シンガポール駐在(過去)

Takahito Sasaki(佐々木孝仁)

インクルーシブ・リーダーシップ駆け出し研究者|立教大学経営学研究科 博士後期課程在籍|立教大学大学院リーダーシップ開発コース修了|HRD・OD・LD|インクルージョン|DE&I|アウトドア|島旅|サウナ|油そば|マンガ|余白|ロック|湯者|一杯目ビール|シンガポール駐在(過去)

最近の記事

【サイロ化問題】変化への対応を妨げるサイロをどう乗り越えるか?(Lessard & Zaheer, 1996)

今回は、為替レートの変動に対応するという状況下で、サイロ化をどう超えるかを示した文献の紹介です。サイロ問題の具体的な対処法にまで踏み込んでいる文献です。 どんな論文? この論文は、企業が変動する為替レートに効果的に対応するための戦略的意思決定について、機能別部門におけるサイロ化問題をどう乗り越えるべきかを研究したものです。 著者たちは、大企業では異なる部門に知識が分散しているため、財務、マーケティング、生産などが連携する必要があるものの、各部門はそれぞれ異なる目標やフレ

    • 【サイロ化問題】サイロメンタリティがインドネシアの官僚改革の障害となっている?!(Guna & Kertati, 2024)

      前回に引き続き、サイロ化問題について扱います。今回は、今年2024年に出たばかりのとれたて論文をご紹介します。 どんな論文? この論文は、インドネシアの官僚改革における「サイロメンタリティ」が引き起こす問題の解決に向け、文献レビューを通して解決策を模索したものです。 インドネシア×官僚改革、というかなり特定の問題に対する研究ではありますが、過去の先行研究をレビューした内容であり、企業組織におけるサイロメンタリティに関しても参考になる部分があります。 なお、この論文では

      • 【サイロ化問題】人の心に生じる「サイロ・メンタリティ」の原因や影響とは?(Cilliers & Greyvenstein, 2012)

        社会的アイデンティティ理論などを調べていくと、内集団・外集団といった、私たちvs彼ら(彼女ら)、いった分断に行きあたることが多いのですが、その分断の象徴的な問題として、「サイロ化問題」に関する研究を紹介したいと思います。 どんな論文? この論文は、サイロ・メンタリティが、チームに対するアイデンティティにどのような影響を与えるかを、定性的な研究によって示した論文です。 サイロ・メンタリティとは、組織内の部署やチームが他部門と情報を共有せず、孤立した状態で機能することを指しま

        • 【インクルーシブ・リーダーシップ】コーポレート・ガバナンス改革の文脈でダイバーシティ推進・ILS研究を解説した良論文!(牛尾, 2023)②

          企業内でダイバーシティ推進を行う際の理論的根拠がふんだんに盛り込まれている論文なので、DEI担当者必読の書の2回目の記事です。 今回は、コーポレート・ガバナンス改革の文脈で、理論的根拠として紹介されているダイバーシティ推進やインクルーシブ・リーダーシップ(ILS)研究を扱います。 主に、コーポレート・ガバナンスとダイバーシティ推進の関連性や背景を扱った、前回の記事はこちらです。 本論文で紹介されている研究 本論文の「ダイバーシティに関する実証研究」の章では、企業のパフ

          【インクルーシブ・リーダーシップ】コーポレート・ガバナンス改革の文脈でダイバーシティ推進・ILS研究を解説した良論文!(牛尾, 2023)①

          久々にインクルーシブ・リーダーシップ関連の論文をご紹介します。日本経営学会誌という、日本の経営学領域でも上位に位置する学会誌で紹介された比較的新しい論文です。 企業内でダイバーシティ推進を行う際の理論的根拠がふんだんに盛り込まれている論文なので、DEI担当者必読の書かと思います! そのため、2回に分けて詳しく紹介したいと思います。1回目は、コーポレート・ガバナンス・コードと、ダイバーシティ推進のつながりについて記載します。 なぜ、企業の中でダイバーシティが求められるのか、と

          【インクルーシブ・リーダーシップ】コーポレート・ガバナンス改革の文脈でダイバーシティ推進・ILS研究を解説した良論文!(牛尾, 2023)①

          【パーセリング】尺度を合成する際のさまざまな方法を比較した論文(Landis et al., 2000)

          引き続き、パーセリングを扱います。最近は随分マニアックな論文レビューですが、統計的な手法である構造方程式モデリングを扱う研究を行う身としては、あまりまとまった情報がなかったので、自分の備忘録として作成しています。 いつか誰かの役に立つかもしれません・・・少なくとも未来の自分の役には立ちそう(すぐ忘れちゃうので)。 今回の文献も、2024年10月6日時点で1470件とそこそこの引用数を誇っています。 どんな論文? この論文では、構造方程式モデリング(SEM)で使われる合成

          【パーセリング】尺度を合成する際のさまざまな方法を比較した論文(Landis et al., 2000)

          【因子分析】心理評価研究における因子分析について、落とし穴と対処法について整理した論文(Sellbom & Tellagen, 2019)

          最近、パーセリングという手法についての文献を見ていましたが、もう少し広げて文献調査をしたところ、因子分析における注意点に関する比較的新しい論文を発見しました。(備忘的意味合いでしっかりまとめた結果、長文となってしまいました) どんな論文? この論文は、心理学の評価研究でよく使われる因子分析について、その一般的な問題点や改善策を紹介したものです。 因子分析は、質問項目の関連性を分析し、背後にある隠れた構造(構成概念)を見つけたり、理論的に言われている概念と質問項目の妥当性

          【因子分析】心理評価研究における因子分析について、落とし穴と対処法について整理した論文(Sellbom & Tellagen, 2019)

          【パーセリング】回答者のバイアスを考慮した「バランス化されたアイテム・パーセリング」とは?(Weijters et al., 2022)

          今回は、パーセリングの具体的な一手法に関する主張を論じた文献を紹介します。 どんな論文? この論文は、アンケートなどで回答者が内容にかかわらず「同意」しやすい傾向(同意バイアス)を補正するための方法としてのパーセリングを提案するものです。 同意バイアスとは、アンケートや調査で質問に対して、内容に関わらず「同意する」傾向が強い回答パターンを指します。 たとえば、同じ意味を持つ2つの質問「私は社交的です」と「私は内向的です(逆アイテム)」があった場合、どちらにも「同意する」

          【パーセリング】回答者のバイアスを考慮した「バランス化されたアイテム・パーセリング」とは?(Weijters et al., 2022)

          【パーセリング】パーセリングの懸念点と対応方法を具体的に示した文献!(Little et al., 2013)

          さらにパーセリング文献の紹介です。この論文も2,024年10月5日時点で1700件の引用と、それなりの参照がなされている主要文献のようです。 どんな論文? この論文は、心理学や教育学などで使われる統計手法である構造方程式モデリング(SEM)における「アイテムパーセル(Item Percels)」の使い方についての議論をまとめたものです。 アイテムパーセル、つまりパーセリングとは、複数の質問項目をまとめて一つの指標として扱う方法です。これについては、賛否両論があり、パーセ

          【パーセリング】パーセリングの懸念点と対応方法を具体的に示した文献!(Little et al., 2013)

          【パーセリング】手法に関する利点・欠点を整理した、パーセリング利用者の必須文献とも言うべき論文(Little et al., 2002)

          今回もパーセリングについて扱います。項目をある程度まとめてしまうのって、問題ないの?ちゃんと見たい概念が図れるの?という疑問が頭に浮かびます。そうした疑問に答えてくれる文献です。 2024年10月5日時点で7679という圧倒的な引用数を誇っており、パーセリングについて押さえておくべき基礎文献と言えそうです。 どんな論文? この論文は、心理学や社会科学で使われる構造方程式モデリング(SEM)において、パーセリングを使用するべきかどうかを、良い面(Pros)と悪い面(Cons

          【パーセリング】手法に関する利点・欠点を整理した、パーセリング利用者の必須文献とも言うべき論文(Little et al., 2002)

          【パーセリング】パーセリングって何?マニアックな統計的な手法について解説した論文(Rhemtulla, 2016)

          研究を進める中で、これまで知らなかった「パーセリング(小包み化)」という概念に出会ったので、備忘録的に残しておきます。簡単に言えば、因子を小包みのようにまとめてしまう手法のことです。 なお、パーセリングの考え方については、京大・関口教授の大変わかりやすい解説がありますので、そちらを参照されることを強く推奨します。 (関口先生のブログは、大学院生必読だと個人的に思っています) 今回扱うのは、関口先生のブログでも紹介されていたRhemtla (2016)です。最初にお伝えして

          【パーセリング】パーセリングって何?マニアックな統計的な手法について解説した論文(Rhemtulla, 2016)

          【組織の<重さ>】日本企業における組織の「重さ」という本質的な指摘を行った、経営学の歴史的良書(沼上他, 2007)

          組織の<重さ>とは一体何でしょうか?何かと聞かれると明確に答えにくい一方で、確かに重い組織は肌感覚としてもわかります。こうした、日本的企業組織の<重さ>を解明するプロジェクトの結果をまとめた書籍です。 どんな書籍? この書籍は、1980年後半頃から途絶えていた組織構造系の実証研究に関する反省を踏まえ、日本企業における実態、特に組織の重さという、日本企業における組織構造や組織特性に関する問題点を明らかにしようとする「組織の<重さ>プロジェクト」という、一橋大学を中心とした研

          【組織の<重さ>】日本企業における組織の「重さ」という本質的な指摘を行った、経営学の歴史的良書(沼上他, 2007)

          【社会的アイデンティティ】一体感の醸成やグループ間の協力・対立はどのように理論的に説明されるのか?(Ashforth & Mael, 1989)

          今回も社会的アイデンティティ理論を扱います。一体感醸成やグループ間の対立や競争を、社会的アイデンティティがどう関連するのかを解説した展望論文です。 どんな論文? 本論文は、社会的アイデンティティ理論(SIT)を使って、組織内での個人とグループの関係を説明したものです。 社会的アイデンティティとは、個人が自分自身を特定のグループの一員として認識し、そのグループの成功や失敗を自分のものと感じることです。 たとえば、自分の会社の成績や評判を自分のことのように喜んだり悲しんだり

          【社会的アイデンティティ】一体感の醸成やグループ間の協力・対立はどのように理論的に説明されるのか?(Ashforth & Mael, 1989)

          【社会的アイデンティティ】個々に異なる存在と認識されると、心理的安全性が高まり、組織への同一性が高まる(Kim, 2020)

          社会的アイデンティティ理論、奥深いです。明示的に書かれてはいませんが、ダイバーシティ&インクルージョンの文脈でも活用できそうなプロセスです。 どんな論文? この論文は、組織のメンバーが個々に異なる存在(個別化)として認識されることで、心理的に安全だと感じやすくなり、その結果、組織に対する一体感(組織同一化)が強まる、というメカニズムを実証した研究に関するものです。 この研究では、66人の一般参加者と176人の従業員を対象にデータを収集し、個別化が心理的安全性を高め、さら

          【社会的アイデンティティ】個々に異なる存在と認識されると、心理的安全性が高まり、組織への同一性が高まる(Kim, 2020)

          【社会的アイデンティティ】グループに女性や外国人といったマイノリティメンバーが多いと一体感が薄れる?!(Chattopadhyay & Lawrence, 2004)

          今回も社会的アイデンティティに関する文献を紹介します。ダイバーシティと社会的アイデンティティ理論は関連が深いため、学びが多いです。 どんな論文? この論文は、グループ内での「人口統計学的な違い」、つまり性別や国籍などの違いが、メンバーの自己認識にどのように影響を与えるかを研究したものです。 オーストラリアの大学で行われたこの研究では、MBAプログラムの学生が34のグループに分かれてプロジェクトを行い、そのグループ内での性別や国籍の違いが、集団に対するメンバーの認識にどう

          【社会的アイデンティティ】グループに女性や外国人といったマイノリティメンバーが多いと一体感が薄れる?!(Chattopadhyay & Lawrence, 2004)

          【社会的アイデンティティ】集団間の対立(サイロ)を打破するためのグループ認識とは?(Lipponen et al., 2003)

          研究作業に集中しており、発信がご無沙汰になっておりました。少し(本当に少しですが)見通しが立ったので、発信を再開します。今日から「社会的アイデンティティ理論」という、職場に対する帰属やバイアスなどを説明する理論についてみていきます。 どんな論文? この論文は、造船所における下位グループ(下請け企業の従業員)と上位グループ(造船所全体)への同一視(アイデンティフィケーション)が、集団間へのバイアスにどのような影響を与えるかを調査したものです。 下位グループ、つまり「サブグ

          【社会的アイデンティティ】集団間の対立(サイロ)を打破するためのグループ認識とは?(Lipponen et al., 2003)