Takahito Sasaki(佐々木孝仁)

インクルーシブ・リーダーシップ駆け出し研究者|立教大学経営学研究科 博士後期課程在籍|…

Takahito Sasaki(佐々木孝仁)

インクルーシブ・リーダーシップ駆け出し研究者|立教大学経営学研究科 博士後期課程在籍|立教大学大学院リーダーシップ開発コース修了|HRD・OD・LD|インクルージョン|DE&I|アウトドア|島旅|サウナ|油そば|マンガ|余白|ロック|湯者|一杯目ビール|シンガポール駐在(過去)

最近の記事

【マルチレベル】環境変化の中で、組織に対するポジティブな態度を形成するメカニズムとは?(王, 2018)

最近ホットなマルチレベル分析関連の論文を漁っているうちに、大変興味深い論文を見つけました。VUCAと叫ばれる時代ですが、そんな環境変化の激しい時代において、ポジティブな態度形成に、内的・外的環境ダイナミズムが及ぼす影響を実証的に調べた論文です。 王先生は仕事で一度お会いしたことがあるのですが、経営理念に関する造詣が深く、ゼミ生の皆様のレベルも高くて、研究と教育を高いレベルでバランスさせていらっしゃるという印象を、大変僭越かつ勝手ながら持っておりましたが、マルチレベル分析も駆使

    • 【マルチレベル】アイデンティティを、集団レベルと個人レベルに分けてモデル化した文献(尾関&吉田、2011)

      すっかり筆が遅くなってしまっています。データ分析、遅々としてなかなか進まずですが、ちょっと目先を変えて気分転換(!?)として、久々に論文レビューです。 といっても、まだまだデータ分析月間ですので、最近集中して紹介しているマルチレベルに関する文献を紹介します。 どんな論文? この論文は、ある集団における人のアイデンティティが、集団による影響と、個人的にその集団に感じる誇りなどの感覚が、それぞれ異なるプロセスによって作用し、集団が形成されていくという過程を示したものです。

      • 【データ分析】構造方程式モデリング(SEM)の問題点と注意点について(吉田他, 2020)

        今日も今日とてデータと向き合っており、更新がすっかり遅くなっているこの頃です。仕事も、次年度に向けた計画やら何やらの時期でもあってバタバタしており、研究ではデータ分析以外のことが全く手につかない日々ですが、何とかやっております。 データ分析の知見を深める中で、大変興味深い文献を発見したので、ご紹介します。要は、SEMがあまりよろしくない使われ方をしているのでは?というご指摘です。 どんな文献? 簡単に言えば、構造方程式モデリング(Structural Equasion

        • 【マルチレベル】データに階層性があるかどうかの合意指標(rwg)を掘り下げた、マルチレベル分析の必読文献!(Biemann et al, 2012)

          久々の投稿です。最近、データ分析の沼にはまっております。 適切な分析をしないと手戻りが大きいこと、「Mplus」という新たなツールがなかなか難しいこと、そして、自分の行いたい分析にピタッとはまる事例が少ないことから、試行錯誤の日々を送っております。 そんな日々の中で発見した、リーダーシップをマルチレベルで捉えて研究する際の指標について、誤用の可能性にも触れながら解説している論文を発見したので紹介します。 (相当マニアックです) どんな論文? この論文は、マルチレベル分析

        【マルチレベル】環境変化の中で、組織に対するポジティブな態度を形成するメカニズムとは?(王, 2018)

          【インクルーシブ・リーダーシップ】リーダーの「仲間外れ」「傍観者」といった行動が、エクスクルージョンを助長する!?(Shore & Chung, 2023)

          最近、研究でも仕事でもデータ分析とか数値分析ばかりやっています。分析していると時間があっという間に溶けていきます。。ということで、しばらくぶりにNote再開です。今日はリーダーによるインクルージョン(包摂)とエクスクルージョン(排除)に関する論文です。 どんな論文? この論文は、リーダーのインクルージョン(包摂)やエクスクルージョン(排除)に関する論文を統合的に捉え、それぞれを促進する行動やそのメカニズムを理論的に提示したものです。 簡単に言えば、リーダーのインクルージ

          【インクルーシブ・リーダーシップ】リーダーの「仲間外れ」「傍観者」といった行動が、エクスクルージョンを助長する!?(Shore & Chung, 2023)

          【パーソナリティ】性格特性を表す「6つ目のファクター」とは何か?②(Lee & Ashton, 2012;小塩他訳, 2022)

          前回の続きで、H因子(Honesty-Humility:正直さ・謙虚さ)について詳述された書籍の紹介です。今回は、H因子の低い人たちの特徴、自己中心的で、欺瞞的で、貪欲な人たちを見分けることができるのか?という部分を解説します。 前回の投稿はこちら: 扱う書籍はこちら: H因子の高さを見分けることができるのか?(5章) この章では、H因子の高低を見分けることができるのかが解説されています。まず、そもそも、人のパーソナリティは他者が見分けることができるのでしょうか?

          【パーソナリティ】性格特性を表す「6つ目のファクター」とは何か?②(Lee & Ashton, 2012;小塩他訳, 2022)

          【パーソナリティ】性格特性を表す「6つ目のファクター」とは何か?①(Lee & Ashton, 2012;小塩他訳, 2022)

          少し前に扱った、パーソナリティ関連の概念について深めようと思い、小塩先生の訳された「パーソナリティーのHファクター」という書籍を取り上げます。もともと、パーソナリティ研究といえばビッグファイブ、と呼ばれる5つの特性が代表的ですが、カナダのリー&アシュトン教授によって、6つ目のファクターが提案されています。 どんな書籍? 6つ目のパーソナリティ要素と呼ばれる、Honesty-Humility(正直さ・謙虚さ。Hファクターと呼ばれる)を中心に、ビッグ・ファイブの特性を合わせた

          【パーソナリティ】性格特性を表す「6つ目のファクター」とは何か?①(Lee & Ashton, 2012;小塩他訳, 2022)

          【インクルーシブ・リーダーシップ】ILがプロアクティブな行動を促進するには、「信頼」と「公正な組織風土」が大切(Chang et al.,2022)

          今回は、インクルーシブ・リーダーシップ(IL)研究において、マルチレベル分析が活用されている研究について紹介します。実は、研究の複雑さやデータ収集の難しさゆえか、IL研究におけるマルチレベル分析の文献は多くないのが実態です。 どんな論文? この論文は、ILがプロアクティブ行動に与える影響を、従業員による信頼が媒介し、手続き的公正な風土がその効果を調整する、ということを定量的に示したものです。 手続き的公正とは、資源配分の方針、プロセス、手続き、決定、および結果が、公正な

          【インクルーシブ・リーダーシップ】ILがプロアクティブな行動を促進するには、「信頼」と「公正な組織風土」が大切(Chang et al.,2022)

          【マルチレベル】分析を行う際の「前提」をおさえる指標を詳しく解説した文献!(鈴木・北居, 2005)

          今回もマルチレベルを扱った研究に関する文献です。この分析は、まずデータが個人レベルと集団レベルに分けられるのか、という前提を丁寧に押さえる必要があります。 組織行動論関連でマルチレベル研究を行う際には、必読の書と言えるくらい重要な文献です。(ただし、数式も出てくるので多少難解です) どんな論文? この文献(ディスカッション・ペーパー)は、マルチレベル分析における手法やプロセス、分析手法をかなりわかりやすく示した論文です。 何がありがたいかと言うと、マルチレベル研究を行う

          【マルチレベル】分析を行う際の「前提」をおさえる指標を詳しく解説した文献!(鈴木・北居, 2005)

          【マルチレベル】押さえるべき要点や特徴を整理した、マルチレベル分析の「はじめの一歩」(小川, 2019)

          今回は、マルチレベル分析の特徴をまとめたレビュー論文を紹介します。かなり分析に特化した文献なので、興味のある方は限られるかもしれません。データ分析に多少興味ある、と言う方におススメの回です。 どんな論文? この論文は、マルチレベル分析における考え方を確認・整理すると共に、人事関連の変数をマルチレベル分析で分析した研究を紹介するものです。 マルチレベル分析とは、以下の図にあるように、下に行くほどミクロに、上に行くほどマクロになるような階層データを同時に扱う分析です。 難

          【マルチレベル】押さえるべき要点や特徴を整理した、マルチレベル分析の「はじめの一歩」(小川, 2019)

          【リーダーシップ】リーダーシップを組織貢献に繋げるためには、「組織と個人の結びつき」が重要だと示した良論文!(砂口&松下, 2017)

          前回投稿に引き続き、リーダーシップの効果が、メンバーの行動に影響するメカニズムを扱っていきます。組織と個人の結びつき、として使われているのは、組織コミットメント(その中でも、情緒的コミットメントと呼ばれる要素)です。 大変読みやすく示唆に富んだ論文で、かなりおススメです! どんな論文? この論文は、上司の変革型リーダーシップが、部下の組織市民行動に影響を与えるためには、組織と個人の結びつきとして、組織に対するコミットメントが大切、と定量的に示した論文です。 組織市民行

          【リーダーシップ】リーダーシップを組織貢献に繋げるためには、「組織と個人の結びつき」が重要だと示した良論文!(砂口&松下, 2017)

          【リーダーシップ】部下がリーダーからの支援を認知すると、創造性が高まる?(Amabile et al., 2004)

          先行研究をレビューしていると、Perceived Organizational Support(POS:知覚された組織的支援)という概念をよく見かけます。 組織による従業員への支援について、従業員が抱く全般的な信念といわれるPOSですが、その派生形として、Perceived Leader Support(PLS)なるものがあるようです。今回は、このPLSを用いた論文の紹介です。 どんな論文? この論文は、リーダーの支援が、部下の「上司が支援してくれている」という認知を高め

          【リーダーシップ】部下がリーダーからの支援を認知すると、創造性が高まる?(Amabile et al., 2004)

          【リーダーシップ】チームと個人、2つのレベルでエンパワーメントの重要性を示したマルチレベル研究(Chen et al.,2007)

          本日も、マルチレベル研究(組織風土やチームの状態といったチームレベルと、個人の認知のような個人レベルを一緒に扱う研究)を取り上げていきます。 この投稿を見てくださっている方から、もう少し短い方が良いのでは?という貴重なアドバイスがありましたので、なるべく短めにまとめるよう、とはいえ、自分のアウトプットのためには押さえておきたい点を網羅できるよう、工夫していきます。 どんな論文? この論文は、リーダーシップ、エンパワーメント、パフォーマンスに関するマルチレベルの影響関係を

          【リーダーシップ】チームと個人、2つのレベルでエンパワーメントの重要性を示したマルチレベル研究(Chen et al.,2007)

          【リーダーシップ】リーダーシップ研究に関するミクロ・マクロ理論を統合する「メソ・アプローチ」とは?(竹内&竹内, 2009)

          リーダーシップ研究の全体像を知りたい、と文献を調べていたところ、個人の(主に)心理的要因や、組織の状況的要因を明らかにした論文が見つかりましたので、レビューしてみたいと思います。 どんな論文? この論文は、リーダーシップの研究を「メソ・アプローチ」として3つの類型、行動的・文脈的・関係性アプローチに整理したものです。 メソ(Mezzo)とは「中間の」という意味の言葉です。この論文によると、「研究の文脈で用いられるメソとは,組織が本来もつ心理学的かつ社会経済学的なプロセス

          【リーダーシップ】リーダーシップ研究に関するミクロ・マクロ理論を統合する「メソ・アプローチ」とは?(竹内&竹内, 2009)

          【リーダーシップ】参加型リーダーシップをレビューした最新論文!(Wang et al.,2022)

          11月は仕事の山場が続き、論文レビューの投稿が滞っておりましたが、少し落ち着いてきたので、コツコツ再開していきます。 今日は、あまり聞きなれない「参加型リーダーシップ(Participative Leadership)」のレビュー論文を紹介します。インクルーシブ・リーダーシップを高める要因のヒントを探している中で見つけた論文です。 どんな論文? この論文は、最近注目されるようになっている様子の「参加型リーダーシップ(Participative Leadership:PL)

          【リーダーシップ】参加型リーダーシップをレビューした最新論文!(Wang et al.,2022)

          【インクルーシブ・リーダーシップ】多様性をうまく対処する自信のあるリーダーが、ILを発揮して効果を挙げられる!?(Houston et al., 2023)

          久々に、インクルーシブ・リーダーシップに関する最新の文献を紹介します。多様性自己効力感(Diversity Self-Efficacy)という概念の存在を初めて知りました。 どんな論文? この論文は、多様性に対してうまく対処できるという効力感を持つリーダーが、インクルーシブ・リーダーシップ(IL)を発揮しやすく、その結果として、フォロワーから評価される、というパスを実証的に示したものです。 また、ILがフォロワーから評価されるといった効果は、チームにおける人種の多様性が

          【インクルーシブ・リーダーシップ】多様性をうまく対処する自信のあるリーダーが、ILを発揮して効果を挙げられる!?(Houston et al., 2023)