Takahito Sasaki(佐々木孝仁)

インクルーシブ・リーダーシップ駆け出し研究者|立教大学経営学研究科 博士後期課程在籍|…

Takahito Sasaki(佐々木孝仁)

インクルーシブ・リーダーシップ駆け出し研究者|立教大学経営学研究科 博士後期課程在籍|立教大学大学院リーダーシップ開発コース修了|HRD・OD・LD|インクルージョン|DE&I|アウトドア|島旅|サウナ|油そば|マンガ|余白|ロック|湯者|一杯目ビール|シンガポール駐在(過去)

最近の記事

【インクルーシブ・リーダーシップ】コーポレート・ガバナンス改革の文脈でダイバーシティ推進・ILS研究を解説した良論文!(牛尾, 2023)②

企業内でダイバーシティ推進を行う際の理論的根拠がふんだんに盛り込まれている論文なので、DEI担当者必読の書の2回目の記事です。 今回は、コーポレート・ガバナンス改革の文脈で、理論的根拠として紹介されているダイバーシティ推進やインクルーシブ・リーダーシップ(ILS)研究を扱います。 主に、コーポレート・ガバナンスとダイバーシティ推進の関連性や背景を扱った、前回の記事はこちらです。 本論文で紹介されている研究 本論文の「ダイバーシティに関する実証研究」の章では、企業のパフ

    • 【インクルーシブ・リーダーシップ】コーポレート・ガバナンス改革の文脈でダイバーシティ推進・ILS研究を解説した良論文!(牛尾, 2023)①

      久々にインクルーシブ・リーダーシップ関連の論文をご紹介します。日本経営学会誌という、日本の経営学領域でも上位に位置する学会誌で紹介された比較的新しい論文です。 企業内でダイバーシティ推進を行う際の理論的根拠がふんだんに盛り込まれている論文なので、DEI担当者必読の書かと思います! そのため、2回に分けて詳しく紹介したいと思います。1回目は、コーポレート・ガバナンス・コードと、ダイバーシティ推進のつながりについて記載します。 なぜ、企業の中でダイバーシティが求められるのか、と

      • 【パーセリング】尺度を合成する際のさまざまな方法を比較した論文(Landis et al., 2000)

        引き続き、パーセリングを扱います。最近は随分マニアックな論文レビューですが、統計的な手法である構造方程式モデリングを扱う研究を行う身としては、あまりまとまった情報がなかったので、自分の備忘録として作成しています。 いつか誰かの役に立つかもしれません・・・少なくとも未来の自分の役には立ちそう(すぐ忘れちゃうので)。 今回の文献も、2024年10月6日時点で1470件とそこそこの引用数を誇っています。 どんな論文? この論文では、構造方程式モデリング(SEM)で使われる合成

        • 【因子分析】心理評価研究における因子分析について、落とし穴と対処法について整理した論文(Sellbom & Tellagen, 2019)

          最近、パーセリングという手法についての文献を見ていましたが、もう少し広げて文献調査をしたところ、因子分析における注意点に関する比較的新しい論文を発見しました。(備忘的意味合いでしっかりまとめた結果、長文となってしまいました) どんな論文? この論文は、心理学の評価研究でよく使われる因子分析について、その一般的な問題点や改善策を紹介したものです。 因子分析は、質問項目の関連性を分析し、背後にある隠れた構造(構成概念)を見つけたり、理論的に言われている概念と質問項目の妥当性

        【インクルーシブ・リーダーシップ】コーポレート・ガバナンス改革の文脈でダイバーシティ推進・ILS研究を解説した良論文!(牛尾, 2023)②

          【パーセリング】回答者のバイアスを考慮した「バランス化されたアイテム・パーセリング」とは?(Weijters et al., 2022)

          今回は、パーセリングの具体的な一手法に関する主張を論じた文献を紹介します。 どんな論文? この論文は、アンケートなどで回答者が内容にかかわらず「同意」しやすい傾向(同意バイアス)を補正するための方法としてのパーセリングを提案するものです。 同意バイアスとは、アンケートや調査で質問に対して、内容に関わらず「同意する」傾向が強い回答パターンを指します。 たとえば、同じ意味を持つ2つの質問「私は社交的です」と「私は内向的です(逆アイテム)」があった場合、どちらにも「同意する」

          【パーセリング】回答者のバイアスを考慮した「バランス化されたアイテム・パーセリング」とは?(Weijters et al., 2022)

          【パーセリング】パーセリングの懸念点と対応方法を具体的に示した文献!(Little et al., 2013)

          さらにパーセリング文献の紹介です。この論文も2,024年10月5日時点で1700件の引用と、それなりの参照がなされている主要文献のようです。 どんな論文? この論文は、心理学や教育学などで使われる統計手法である構造方程式モデリング(SEM)における「アイテムパーセル(Item Percels)」の使い方についての議論をまとめたものです。 アイテムパーセル、つまりパーセリングとは、複数の質問項目をまとめて一つの指標として扱う方法です。これについては、賛否両論があり、パーセ

          【パーセリング】パーセリングの懸念点と対応方法を具体的に示した文献!(Little et al., 2013)

          【パーセリング】手法に関する利点・欠点を整理した、パーセリング利用者の必須文献とも言うべき論文(Little et al., 2002)

          今回もパーセリングについて扱います。項目をある程度まとめてしまうのって、問題ないの?ちゃんと見たい概念が図れるの?という疑問が頭に浮かびます。そうした疑問に答えてくれる文献です。 2024年10月5日時点で7679という圧倒的な引用数を誇っており、パーセリングについて押さえておくべき基礎文献と言えそうです。 どんな論文? この論文は、心理学や社会科学で使われる構造方程式モデリング(SEM)において、パーセリングを使用するべきかどうかを、良い面(Pros)と悪い面(Cons

          【パーセリング】手法に関する利点・欠点を整理した、パーセリング利用者の必須文献とも言うべき論文(Little et al., 2002)

          【パーセリング】パーセリングって何?マニアックな統計的な手法について解説した論文(Rhemtulla, 2016)

          研究を進める中で、これまで知らなかった「パーセリング(小包み化)」という概念に出会ったので、備忘録的に残しておきます。簡単に言えば、因子を小包みのようにまとめてしまう手法のことです。 なお、パーセリングの考え方については、京大・関口教授の大変わかりやすい解説がありますので、そちらを参照されることを強く推奨します。 (関口先生のブログは、大学院生必読だと個人的に思っています) 今回扱うのは、関口先生のブログでも紹介されていたRhemtla (2016)です。最初にお伝えして

          【パーセリング】パーセリングって何?マニアックな統計的な手法について解説した論文(Rhemtulla, 2016)

          【組織の<重さ>】日本企業における組織の「重さ」という本質的な指摘を行った、経営学の歴史的良書(沼上他, 2007)

          組織の<重さ>とは一体何でしょうか?何かと聞かれると明確に答えにくい一方で、確かに重い組織は肌感覚としてもわかります。こうした、日本的企業組織の<重さ>を解明するプロジェクトの結果をまとめた書籍です。 どんな書籍? この書籍は、1980年後半頃から途絶えていた組織構造系の実証研究に関する反省を踏まえ、日本企業における実態、特に組織の重さという、日本企業における組織構造や組織特性に関する問題点を明らかにしようとする「組織の<重さ>プロジェクト」という、一橋大学を中心とした研

          【組織の<重さ>】日本企業における組織の「重さ」という本質的な指摘を行った、経営学の歴史的良書(沼上他, 2007)

          【社会的アイデンティティ】一体感の醸成やグループ間の協力・対立はどのように理論的に説明されるのか?(Ashforth & Mael, 1989)

          今回も社会的アイデンティティ理論を扱います。一体感醸成やグループ間の対立や競争を、社会的アイデンティティがどう関連するのかを解説した展望論文です。 どんな論文? 本論文は、社会的アイデンティティ理論(SIT)を使って、組織内での個人とグループの関係を説明したものです。 社会的アイデンティティとは、個人が自分自身を特定のグループの一員として認識し、そのグループの成功や失敗を自分のものと感じることです。 たとえば、自分の会社の成績や評判を自分のことのように喜んだり悲しんだり

          【社会的アイデンティティ】一体感の醸成やグループ間の協力・対立はどのように理論的に説明されるのか?(Ashforth & Mael, 1989)

          【社会的アイデンティティ】個々に異なる存在と認識されると、心理的安全性が高まり、組織への同一性が高まる(Kim, 2020)

          社会的アイデンティティ理論、奥深いです。明示的に書かれてはいませんが、ダイバーシティ&インクルージョンの文脈でも活用できそうなプロセスです。 どんな論文? この論文は、組織のメンバーが個々に異なる存在(個別化)として認識されることで、心理的に安全だと感じやすくなり、その結果、組織に対する一体感(組織同一化)が強まる、というメカニズムを実証した研究に関するものです。 この研究では、66人の一般参加者と176人の従業員を対象にデータを収集し、個別化が心理的安全性を高め、さら

          【社会的アイデンティティ】個々に異なる存在と認識されると、心理的安全性が高まり、組織への同一性が高まる(Kim, 2020)

          【社会的アイデンティティ】グループに女性や外国人といったマイノリティメンバーが多いと一体感が薄れる?!(Chattopadhyay & Lawrence, 2004)

          今回も社会的アイデンティティに関する文献を紹介します。ダイバーシティと社会的アイデンティティ理論は関連が深いため、学びが多いです。 どんな論文? この論文は、グループ内での「人口統計学的な違い」、つまり性別や国籍などの違いが、メンバーの自己認識にどのように影響を与えるかを研究したものです。 オーストラリアの大学で行われたこの研究では、MBAプログラムの学生が34のグループに分かれてプロジェクトを行い、そのグループ内での性別や国籍の違いが、集団に対するメンバーの認識にどう

          【社会的アイデンティティ】グループに女性や外国人といったマイノリティメンバーが多いと一体感が薄れる?!(Chattopadhyay & Lawrence, 2004)

          【社会的アイデンティティ】集団間の対立(サイロ)を打破するためのグループ認識とは?(Lipponen et al., 2003)

          研究作業に集中しており、発信がご無沙汰になっておりました。少し(本当に少しですが)見通しが立ったので、発信を再開します。今日から「社会的アイデンティティ理論」という、職場に対する帰属やバイアスなどを説明する理論についてみていきます。 どんな論文? この論文は、造船所における下位グループ(下請け企業の従業員)と上位グループ(造船所全体)への同一視(アイデンティフィケーション)が、集団間へのバイアスにどのような影響を与えるかを調査したものです。 下位グループ、つまり「サブグ

          【社会的アイデンティティ】集団間の対立(サイロ)を打破するためのグループ認識とは?(Lipponen et al., 2003)

          【研究手法】仮説の形式とモデル図を体系的に整理している必読の文献!(林・内藤, 2023)

          これほど網羅的に、仮説の形式や型を体系化した資料はあまり見たことがありません。何度か定期的に見返したい文献です。 どんな論文? この論文では、仮説検証型研究におけるパターンを、4つの仮説の形式に分けてそれぞれ解説した展望論文です。 仮説検証型研究とは、ある仮説を立てて、その仮説が正しいかどうかをデータを使って確認する研究方法です。本論文で取り上げている4つの仮説形式は、主効果、調整効果、媒介効果、そして調整媒介効果です。 主効果は、2つの変数の間にどのような関係があるか

          【研究手法】仮説の形式とモデル図を体系的に整理している必読の文献!(林・内藤, 2023)

          【インクルーシブ・リーダーシップ】ILとインクルージョンとの関連性を定性的に明らかにしたインドの研究(Kuknor & Bhattacharya 2021)

          久々にインクルーシブ・リーダーシップの文献です。わざわざ、大学の文献複写サービスで取り寄せてまで読みたかった論文。(ただ、WEB上で購入するのをケチっただけです) どんな論文? この論文は、インドの企業における「インクルージョン」と「インクルーシブ・リーダーシップ」(IL)の関連性を、20名に対するインタビューを通じた定性分析によって探究したものです。 本論文でのインクルージョンとは、職場でさまざまな背景を持つ人々が尊重され、平等に参加できる環境を作る、という定義が用い

          【インクルーシブ・リーダーシップ】ILとインクルージョンとの関連性を定性的に明らかにしたインドの研究(Kuknor & Bhattacharya 2021)

          【バウンダリースパニング】組織の垣根を越える行動を阻害する可能性があるのは上司?(Mell et al., 2022)

          組織の垣根を越える行動、というのは、多様な視点や情報、経験を得る上でポジティブなイメージがありますが、上司にとっては不安や脅威と感じる場面もあるようです。 どんな論文? この論文は、従業員が職場の垣根を越える行動(=バウンダリースパニング)と呼ばれる活動をする際に、上司がどう反応するか、その反応にどう対応するかを調べたものです。 バウンダリースパニングとは、従業員が自分のチームや部署を超えて他のグループや外部の専門家に助言を求める行動のことです。 こうした行動は、新しい

          【バウンダリースパニング】組織の垣根を越える行動を阻害する可能性があるのは上司?(Mell et al., 2022)