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読書記録 | サイコキラー美青年「真珠郎」の猟奇的で耽美な世界の再読と横溝正史作品の思い出
私の小説好きの源流を辿れば、中学生の自分から関心を寄せていた横溝正史のミステリー小説にあることが確かである。
きっかけはテレビドラマの視聴が先であったか、友人から面白いからと薦められたのが先かは今ではもう憶えていないが、小説で言えば当時地元にあった小さな古本屋さんで「八つ墓村」「悪魔が来りて笛を吹く」など、カバーがすっかり傷んで少し砂っぽい手触りになっていしまっている数冊を買ったのが最初である。
読書雑感 | 小川未明の「時計のない村」は普遍的であり、教訓も存分にある
「日本児童文学の父」と称される小川未明の作品の一つ「時計のない村」は、私が最初に読んだ小川未明の作品であり、同作者のうちで今のところ最も印象的な作品である。
児童文学ということがあり読みやすいので、子どもは然ることながら、大人が読んでも考えさせられる教訓めいたものを含ませているのが、小川児童文学の作品の最大の持ち味と言えるのであるが、この「時計のない村」はその最たる例ではないだろうかと思う。
読書記録 | 森鴎外を読むなら2作目はスリル溢れる「魚玄機」あたりがいいかもしれない
私の数少ない森鴎外の作品通読から申し上げさせていただくのであれば、最も最初に読むべきで最も感銘を受ける作品は余りにも高名な「高瀬舟」であろう。
この短い作品のうちで嘱託殺人について、状況的に仕方のないものとして受け取るか、殺人は殺人と情状酌量の余地もないものとして受け取るか、その出来事の是非を読者に委ねる部分、それから終盤の作品のすべてを覆いつくすかのような情景が印象深いものである。
では、そ
読書記録 | 夢野久作の幻夢郷より少しミステリー仕立ての短編「けむりを吐かない煙突」に触れてみる
夢野久作の作品といえば、タイトルから漂う特異性と本の表紙画の薄気味悪さから、ホラー小説のイメージが強いのであるが、「ドグラ・マグラ」他いくつかの作品を通読すると、私個人としてはミステリーとホラーの間の子のような存在に思えるのである。
つまりは「夢野久作」というジャンルではないかと思えるのである。
今月は国内短編小説の読み比べが私のトレンドとなっており、先月まであれ程に拘っていたSF小説は何処へ
読書記録 | 私は「銀河ヒッチハイク・ガイド」シリーズに何を読まされていたのか
しばらく置き去りにしている盟友ジャン・ジャック・ルソーの「孤独な散歩の夢想」が私にとって少し難解な読み物だとすると(とは言え訳文によれば読み易いものもあるらしいが)、またそれとは別で終わりまで何を読まされたのか分からないものもある。
たとえばカフカの「城」であるが、これはきっと再読を促すものに違いなく、あの退屈に感じたたらい回しやお内儀とのやり取りも、もう一度読めば少し違ったものに感じるであろう