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【読書ノート】団地と共生

「芝園団地では、日本人と外国人のあいだで何かが起きている・・・・。」そんなふうに思い込んでいた「わたし」が、勝手に両者を分けて見ていたのかもしれない。

団地と共生/岡崎広樹著

こんにちは、けいごです。

地域共生社会を実現するために、共生の方法を考える必要があります。その中で、団地に住む高齢者と外国人の共生を実現するために取り組んだ方の物語を描いた本「団地と共生」を発見しました。

団地の自治体運営に限らず、様々な組織運営の参考になるので、悩んでいる方は読んでみてください。


芝園団地とは

プロジェクトの舞台となる芝園団地とは、埼玉県川口市にある団地のことです。
その団地では、高齢の日本人と若い外国人(特に中国系の方)が約半々で居住している団地です。

芝園団地からわかること

芝園団地は日本の未来を表しています。何故なら、現在の日本は少子高齢化、且つ多くの外国人人材を社会に呼び込んでいるためです。
これからもその流れは止まらないでしょう。
そのため、少子高齢化が更に進んだ先の、日本の未来に近い状態であると考えられます。

そして、芝園団地では団地内での共生に悩まされており、ごみの分別問題や、外国人を誹謗するような落書き、騒音の問題等、多くの共存の問題を抱えていました。
共生が難しい中、著者の岡崎広樹さんはその団地の状況を変えようと、様々な取り組みをしていきます。

団地内の「壁」と「3つのない」

団地には高齢の日本人と、若い中国人の半々の構成に伴い、以下の壁がありました。

・理解の壁→言語の理解
・意思疎通の壁→文化の違い等
・世代の壁→高齢の日本人への敬意

また、これらに紐づき「3つのない」が具体的に発生しています。

①認識・理解の不足→日本人と外国人の(生活習慣・文化等)共通項の不足
②量の不足→
自治会の高齢化に伴う、マンパワーとアイデアの不足
③役員の不足→団地自体の若い日本人の不足

著者は、これらを解消していく活動を、地道に行うことになりました。

芝園団地で行われたプロジェクト

芝園団地で行われた取り組みを、以下にまとめます。

①多言語対応・イラスト付きの案内

ゴミの分別方法を多言語化、イラストをつけていくことで、ほとんどの問題は解消していきました。
しかしそこには、以下の中国の方々の生活習慣の壁が発生しており、苦戦をした状況がありました。

・中国でゴミの分別が始まったのは2018年からのため、そもそもの分別の知識が少ない。(日本では1976年から始まっている)
・中国のご高齢の方は、農村育ちで学校に通えなかった方も多く、文字を読めない方もいる。

ここから以下のことが分かります。

異文化を理解するには、根本を知ることが重要

②ボランティア・自治会員集め

著者は様々なセミナーなどに出向き、国際交流に興味がありそうな学生に声をかけていきました。
また、自治会員を集めるために、意識のありそうな住民に人種を問わず声をかけていくと、若い中国の方がすんなりと入会して役員も務めてくださったそうです。

ここから以下のことが分かります。

関係しそうな方に、とにかく声をかけてみること

③芝園にぎわいフェスタ

団地の方々や学生ボランティア、地域のママさんバレーの方々などを呼び、団地で出店するフェスを開催しました。

いざフェスをやってみると意外なにぎわいを見せ、最後の学生さんが主催した企画である、「キャンドルナイト」は特に上手くいったようです。
それは、団地の方々にキャンドルを自作してもらい、イベントが終わったら気に入ったキャンドルを持ち帰れる企画でした。

ここから以下のことが分かります。

交流を促せば意外と盛り上がる

④芝園かけはしプロジェクト

芝園団地にあるベンチ(外国人への誹謗中傷の文字が書かれた)に下地ペイントをして、団地の子供達の手方のペンキをつけていく企画です。
日本人も参加していくことで、誹謗中傷の言葉を書きづらくしていく企画となりました。

ここから以下のことが分かります。

目に映る問題の原因を消していく

⑤多文化交流プログラム

毎月一回、団地内交流の企画を住民同士で話し合い、交流していく企画です。
最初はお互いの文化や生活習慣の違いを教え合う機会を設けていましたが、途中で堅苦しくなり、お互いの国の食事を提供し合う機会など、楽しい企画へシフトしていきました。
食には世界をつなぐ力があります。

ここから以下のことが分かります。

住民同士で一緒に考えることで、主体性が生まれる
皆が楽しいと思える企画をすること

著者が活動を通して気付いたこと

著者が団地内共生の活動を通して、気づいたことは以下の二つです。

①問題は日本人同士でも発生している(外国人だからではない)
②分断を生んでいるのは自分自身

①問題は日本人同士でも発生している

これまで数々の問題を解消してきましたが、これらは日本人と外国人だから発生しているのではないことに気付きました。

例えばごみの分別問題は、日本人同士でも討論になりえます。また、騒音問題もそうです。
つまり、「外国人だから・・・」と考えていることは、偏見でしかないことになります。

②分断を生んでいるのは自分自身

とある中国の方への誹謗中傷的な発言をしている住民がいました。
その住民は活動を進める中で、中国の方と仲良くなっている様子が見られましたが、発言自体は変わらないようでした。
しかし、その発言を生んでいるのは著者自身かもしれないと、ある日気づきます。
何故なら著者自身がその住民に対して、「中国の方への・・・」といった聞き方をしていたからです。
つまり、分断分断、と考えているのは自分自身だったかもしれません。

感想「共生」のために必要なこと

本書の中でも紹介されていますが、共存と共生はそれぞれ違います。

「共存」→複数の者が、一緒に存在すること
「共生」→異なるもの同士が、相互に作用しあう状態で生活すること

ここからわかることは、「共生」の実現の基盤には、「共存」があることです。
また、芝園団地のように、お互いがお互いに対して実際のところはよくわかっていません。
つまり、「共存」以前の問題であることが分かり、その前段階が必要だということになります。

以上から、人々が共生していくために必要なステップは、以下のようになると考えられます。

「①認識」→「②理解」→「③共存」→「④共生」

まずはお互いがいることを知り→「認識」
それぞれの生活習慣や文化を理解して→「理解」
それぞれの生活に介入しすぎず→「共存」
お互いが出来ることを提供し合う→「共生」

というステップとなります。
この学びを活かして、地域活動の参考にしていきたいと思います。

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