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生きるということ

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#ライフスタイル

つるつるとしたサテンのリボンのように

つるつるとしたサテンのリボンのように

趣味の良いインテリアショップで働いていると、色々な家族の形を目にする。

混乱のないように前置きしておくと、私は現在3つの仕事をしている。
通訳ガイドと、ライター、加えてアルバイトのショップ店員だ。

タイムマネジメントが常に課題としてあるのだが、この話について語ると長くなるので、また別の機会にでも話そうと思う。

さて、話題が逸れてしまったが、約半年前に素敵なインテリアショップで働き始めて

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映画 「人間失格〜太宰治と3人の女たち〜」

映画 「人間失格〜太宰治と3人の女たち〜」

なぜだろうか、
日本橋アートアクアリウムの狭い水槽の中を、懸命に生きる金魚の姿が、脳裏に蘇る。

「人間は、恋と革命のために生まれてきた。」

そんな、太宰の愛人、静子の情熱的なセリフが似合う、官能的で艶やかな作品。

太宰の波乱万丈な恋愛模様に、監督である蜷川実花さんの艶やかな世界観が重なった「人間失格」は、映画の垣根を超え、もはや完成されたアート作品と呼ぶに相応しい。

お見合いで結婚し、3人

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ヴィーガンはただの迷惑? ”おもてなし”の行方

ヴィーガンはただの迷惑? ”おもてなし”の行方

「困っちゃうね、そう言うの。アレルギーとかでどうしても食べられない、という訳でもないのに。”郷に入っては郷に従え”と言うしね」

ヴィーガン対応に追われ、鰹だしではなく昆布だしで提供してくれそうな蕎麦屋探しに翻弄していると、母は同情してくれた。

通訳案内士として、訪日外国人案内に携わりはや1年半。

相手の言いなりになってしまうのはやり過ぎだが、せっかく日本という国を選んでくれたのだから、出

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クリスチャン・ボルタンスキー展

クリスチャン・ボルタンスキー展

生きるということは、死に向かって歩むこと。

そんな当たり前の事実を、再び突きつけられたのは、現在国立新美術館で開催中の、クリスチャン・ボルタンスキー展だ。

ボルタンスキーとは、フランス出身、気鋭の現代アーティスト。瀬戸内国際芸術祭(以下瀬戸芸)では、自身の心臓の音を収録した「心臓音のアーカイブ」や、400個の風鈴が涼やかな音を奏でる「ささやきの森」という、独創的なアート作品を発表している。

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清く正しく、たくましく

清く正しく、たくましく

鳩の交尾を見た。

ジョナサンからの帰り道。
それぞれ、溜まっていたタスクを消化し、幾分すっきりした気持ちで店を後にした時だった。

信号待ちで並んでいる間、高架下で人間たちを並んで見下ろす鳩のカップルを、目ざとく見つけた私。

「見て、並んでこっち見てるよ!可愛いね!」

と、彼の腕を掴んではしゃいでいると、片方が翼をバサバサと優雅にはためかせ、もう片方の背へおもむろに足をかけたではない

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「羊をめぐる冒険」 / 村上春樹 解釈

「羊をめぐる冒険」 / 村上春樹 解釈

羊3部作の最終作。
この物語において、”羊”が人間の中に巣食う悪しき”欲”であることは、疑いようも無い明白な事実だ。

“欲”ではなく”根源的な悪”であるとする解釈も数多く見受けられるが、私はあえてここで”欲”であると定義したい。

なぜかというと、現実世界において羊はとても繊細で臆病な生き物であり、ある意味弱さの象徴でもあるからだ。

その羊が、わざわざ人間に憑依してまで「完全にアナーキーな観念

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夢現を抜かす

久しぶりに、夢をみた。
箒に乗って、空を飛ぶ夢だ。

阿呆らしい、と思うかもしれない。

でも、本当に見たのだ。
ほんとうに、私は箒に乗って

空をビューンと飛んでいたのだ。

笑っちゃうぐらい、ハリーポッターさながら。

もちろん最初は、うまくバランスを取ることが出来ず
地面から僅か1、2メートル上昇するのがやっとだった。

その状態で数メートル進み
バランスを崩し、地面に足を着く。

何度繰

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一番星の反対

一番星の反対

曙の空に
三日月と並んで
美しく輝く
一つの星があった

名は何というのだろうか

いちばん最初に光る星は
一番星

では
いちばん最後に光る星は
何というのだろうか

何番なのだろうか

何番だっていいのだろうか

無数に存在するうちの
一つに過ぎない存在であるなら
何だっていいのだろうか

気にも留めないのだろう

ときどき思う
私たちはどうにも
一番を目指した

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