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最近読んだ海外文学と詩
まずはフィリップ・ロス「いつわり」(1990年発表)。200ページそこそこの作品だが、読むのにすごく疲れた。
意欲作っちゃ意欲作で、フィリップ・ロスを思わせる作家の情事の様子を会話文だけで書いた実験的なオート・フィクションなのだが、中身は「ユダヤ人性とは……」云々(と生活に疲れた中産階級女性とのロマンを欠いた情事)であり、貧乏弁当そっくりの国旗を掲げる国に住む筆者には、その重要性がピンとこないの
三島由紀夫「中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃」ほか一篇
前書き
戦前の三島の作品は読むのが難しい。結局は筆者の読みたい方向に寄せているだけに思えて不安にもなる。
そのため、筆者は先に作品の方向性を確かめ読んでいる。もし読み間違っていたとき間違いがどこにあったか明白にするためである。
今回、「中世に(略)」及び「エスガイの狩」を扱うが、両作品に通じるのは極めて明晰な文体である。「花ざかりの森」系列に位置する朦朧とした文体ではなく、鋼の板のような文
フィリップ・ロス「プロット・アゲンスト・アメリカ」
あらすじ:第二次大戦時、元飛行士にして反ユダヤ主義者のリンドバーグが大統領になっていたら歴史はどうなっていたか、ユダヤ人一家の子どもの目線から語る小説。
全体では531ページあるが、様々な補足資料(または訳者の親切心)が加わるので本文は480ページほど。
全九章を使い、リンドバーグが大統領の座に就いてからアメリカに潜在的にあったユダヤ人への憎悪が露わになっていく過程を子どもの目から捉えていく。