マガジンのカバー画像

中沢新一著『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』などを読む

53
中沢新一氏の著作『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』『精霊の王』『アースダイバー神社編』などを読み解きます。
運営しているクリエイター

#神話的思考

超-明るい部屋へ/埋蔵経典を”発掘”する神話的思考 -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(7)

超-明るい部屋へ/埋蔵経典を”発掘”する神話的思考 -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(7)

中沢新一氏の『精神の考古学』を引き続き読む。

精神の考古学。
私たちの「心」は、いったいどうしてこのようであるのか?

私たちが日常的感覚的に経験している分別心(例えば、好き/嫌いを分別したり、自/他を分別したりすることは当たり前だと思っている心)が、発生してくる深みへと発掘を進める中沢氏の「精神の考古学」。

いよいよ第八部「暗闇の部屋」を読んでみようと思う。

ここで中沢氏は、「まったく光の

もっとみる
"相互包摂"であらゆる「項」を両義的で中間的で媒介的にする ー  『今日のアニミズム』を読む

"相互包摂"であらゆる「項」を両義的で中間的で媒介的にする ー 『今日のアニミズム』を読む

奥野克巳氏と清水高志氏の共著『今日のアニミズム』を読む。

(本記事について、twitterにて著者の清水先生に言及いただきました。
ありがとうございます。)

アニミズムアニミズムと総称されるさまざまな思考においては、たとえば「人間」対「動物」であるとか、「人間」対「植物」、あるいは「人間」対「自然(鉱物から気候や天体」、さらには「現世に生きる人間なるもの」対「それ以外のもの(人間や他のさまざま

もっとみる
意味分節理論は「書く」と「読む」の役に立つ

意味分節理論は「書く」と「読む」の役に立つ

意味分節理論などというと、”いかにも抽象的で、現実離れして、とても何かの役に立つとは思えない感じがする”といった印象を持たれることも多い。

ちなみに、意味分節理論というのは意味(意味する)ということの発生を、次のようなモデルで考えるものである。



まず、ある二つのシンボルの二項対立関係を二つ重ね合わせ、そこに第三の二項対立を直交させる。この第三の二項対立を軸にして、最初の二つの二項対立の重

もっとみる
意味分節理論とは(4) 中間的第三項を象徴するモノたち -中沢新一著『アースダイバー神社編』を読む

意味分節理論とは(4) 中間的第三項を象徴するモノたち -中沢新一著『アースダイバー神社編』を読む

(本記事は有料に設定していますが、全文「立ち読み」できます!)



中沢新一氏の『アースダイバー神社編』を引き続き読む。

(前回、前前回の続きですが、今回だけでお楽しみいただけるはずです)

『アースダイバー神社編』には、諏訪大社、大神神社、出雲大社、そして伊勢神宮といった極めて古い歴史を持つ神社が登場する。

中沢氏はこれらの神社に今日にまで伝わる神話や儀礼やシンボル(象徴)たちを媒にして

もっとみる
創造的分節システムとしての"耳"を発生させる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(7-2)

創造的分節システムとしての"耳"を発生させる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(7-2)

(このnoteは有料に設定していますが、最後まで無料でお読み頂けます)



中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note、その7回目の後編である。(前編はこちら↓ですが、前回を読んでいなくても大丈夫です。)



(最初から読みたいという方はこちら↓からご覧ください。)

境界性『精霊の王』、単行本の208ページには、精霊の王=宿神は「境界性」を象徴する、とある。

境界性とはどういう

もっとみる
"現実”の深層へ -中沢新一著『精霊の王』(と『アースダイバー 神社編』)を精読する(7-1)

"現実”の深層へ -中沢新一著『精霊の王』(と『アースダイバー 神社編』)を精読する(7-1)

(このnoteは有料に設定していますが、最後まで無料でお読み頂けます)

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note、その7回目である。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても、今回の話だけでお楽しみいただけます。)



今回は第8章から最後までを一気に読んでみよう。・・・と思っていた所、2021年4月20日に中沢新一氏の新刊が発売されました。その名も『アースダイバー 神社編』

もっとみる
人間の世界が発生する場所にふれる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(6)

人間の世界が発生する場所にふれる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(6)

本noteは有料に設定しておりますが、最後まで無料でご覧いただけます。

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。第七章「『明宿集』の深淵」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)



『明宿集』というのは室町時代の能楽師 金春禅竹によって記された書である。善竹はかの世阿弥の娘婿でもあり、「芭蕉」など珠玉の能楽を生み出した人である。

翁とはその善竹が、

もっとみる
鼓のリズムから生じる波紋としての意味分節構造 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(5)

鼓のリズムから生じる波紋としての意味分節構造 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(5)

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。その第六章「後戸に立つ食人王」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)

後戸というのは聞き慣れない言葉かもしれない。また食人王、人を食べる王、などというのもどうにも不気味な感じのする言葉である。

こういう謎めいた、時に不気味な言葉で新たな意味分節を試みることが、既成の思考のプロセスを織り成している言葉たちの分節体系

もっとみる
区別・分節作用それ自体の象徴としての"精霊"へ -中沢新一著『精霊の王』を精読する(4)

区別・分節作用それ自体の象徴としての"精霊"へ -中沢新一著『精霊の王』を精読する(4)

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。その第四章「ユーラシア的精霊」と第五章「縁したたる金春禅竹」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)

精霊の王というのはその名の通り「精霊」の「王」である。

精霊には古今東西色々なものが居り、人類によってさまざまな名で呼ばれてきた。精霊は多種多様でさまざまな名を持っている。

しかし、そうした精霊たちの間には、違い

もっとみる
精霊の王は人界と異界の媒介者である -中沢新一著『精霊の王』を精読する(3)

精霊の王は人界と異界の媒介者である -中沢新一著『精霊の王』を精読する(3)

中沢新一氏の著書『精霊の王』。その第二章「奇跡の書」、第三章「堂々たる胎児」を読んでみる。

第一章「謎の宿神」では、宿神が蹴鞠の精霊、「鞠精」として姿を現した。それが第二章「奇跡の書」では、今度は宿神が能楽の「翁」として姿を現す。

幽玄の世界に入り込むと同時に、それを言葉によって理論化した金春禅竹。その善竹の筆による『明宿集』には「「翁」が宿神であり、宿神とは天体の中心である北極星であり、宇宙

もっとみる
両義的媒介項としての宿神 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(2)

両義的媒介項としての宿神 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(2)

中沢新一氏の『精霊の王』を精読する連続note。

第一章「謎の宿神」を読む。



「侍従成通卿と言えば、比類のない蹴鞠の名手と讃えられ…」(『精霊の王』p.4)

この一節から始まる第一章は「蹴鞠」の話である。

「精霊の王」たるシャグジ−宿神は、日本列島に国家が成立する遥か以前から祀られてきた神である。

その精霊の王の話をするのに、なぜ国家が成立して数百年を経た後の時代の芸能のことから始

もっとみる
中沢新一著『精霊の王』を精読する(1)

中沢新一著『精霊の王』を精読する(1)

これまでしばらくの間、中沢新一氏の『レンマ学』を精読していたのだけれども、ついに読み終えてしまった。

もう一度読めば良いのだけれども、せっかくなので別の本を精読してみることにする。同じ中沢新一氏の『精霊の王』である。

『精霊の王』については前にnoteにまとめたことがあるが、今回は「精読」してみることにする。

『精霊の王』は中沢氏による2003年の著作で、『レンマ学』を遡ること10数年前の話

もっとみる
「異なるが、同じ」と置く等価性の原理が意味分節システムを発生させる -中沢新一著『レンマ学』を精読する(11)

「異なるが、同じ」と置く等価性の原理が意味分節システムを発生させる -中沢新一著『レンマ学』を精読する(11)

中沢新一氏の『レンマ学』を精読する連続note、前回に引き続き、第十一章「レンマ派言語学」の後半「詩的言語とレンマ学」(p.293)から読んでみる。

キーワードは「アーラヤ織」と「喩」である。

アーラヤ識アーラヤ織というのは「レンマ学」の中でも重要な概念の一つである。

アーラヤ織は人間の神経系-脳に生じる二つの動きが絡み合うことよってその姿を現す。

アーラヤ識の第一の動きは「区別をする(分

もっとみる