まどろみ天使

X (JAPAN)、プラトン、現象学、コーヒー、バッハ、ラヴェル、ミステリを愛する東京…

まどろみ天使

X (JAPAN)、プラトン、現象学、コーヒー、バッハ、ラヴェル、ミステリを愛する東京と沖縄のハーフ。大学院まで古代ギリシア哲学。16から様々な精神的な病気と闘う。セクシュアル・マイノリティ(ややこしくて分類不可能)。個人で行政書士の事務所→体調不良で閉所→甥っ子の家庭教師。

マガジン

  • 自作の詩まとめ

    16歳から30代前半までに書いた詩をまとめたものに、2023年から再び書き始めた詩を混ぜて発表しています。先入観なく読んでいただきたいため、一切の説明を省くようにしました。記事のカテゴリの中では一番マジメです。

  • エッセイ・感想文

    自身のエッセイ(モドキ)、読書感想文・コンサート感想文などをまとめました。

  • テツガクの小部屋

    西洋哲学史の概略を、私見を交えずに、淡々と追うシリーズ。引用に用いる文献のサブタイトルはー理性の運命と可能性ー。哲学は時にとんでもないコトを大真面目に考えたりします。あなたもテツガクしてみませんか。

  • つぶやき・雑記事のまとめ

    まどろみ天使によるつぶやき、雑記事をまとめています。これは、エッセイや詩などに比べて、明るい記事が多い(と思います)。

記事一覧

【詩】夢のあとさき

ひとしずくの中に 果てなき夢を見る まどろみに堕ちてゆく 儚く暗き夢の底で 自ら鳴らす鐘の音が 永遠の涙をわたしに保証した ざわめきに溶けゆく煙と 黒白の奏に戯れて …

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【感想文】ハチャトゥリアンとショスタコーヴィチ@上野東京文化会館5.3(後半)

休憩を挟んで、2曲目は、ショスタコーヴィチの交響曲第5番ニ短調。芸術劇場の時はラヴェル「ラ・ヴァルス」が主目的だったが、この日はこの曲が目的だったと言ってもいい。…

73

【感想文】ハチャトゥリアンとショスタコーヴィチ@上野東京文化会館5.3(前半)

今回は上野の東京文化会館、大ホール。N響、指揮は坂入健司郎氏。 芸術劇場とはまた全く違う座席構成・座席数。私は一階席の中央から少し後ろあたりに落ち着いた。 芸術劇…

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テツガクの小部屋17 プラトン①

・イデア論前半 既述のように、善・正義・勇気・美の定義は、その本性上、善それ自体、正義それ自体などを目指さずにはいない性格を有している。 プラトンもまたこういった…

まどろみ天使
2週間前
101

【エッセイ】感受性を殺してでも生きるべきか 

日課で新聞を取りに行く。冷たい風に当たり、私は過去に引き戻された。 抑うつなどの症状が出たのは16の時だ。原因は「記憶があふれる」。今のこの空気は1年前の何月何日…

まどろみ天使
3週間前
193

【感想文】ドビュッシーとラヴェル@芸術劇場4.13(後半)         

三曲目はサン=サーンスの「ヴァイオリン協奏曲第3番ロ短調作品61」。1881年の作品。 独奏ヴァイオリンが上手だったので感動した。ヴァイオリン協奏曲というと、シベリウ…

まどろみ天使
3週間前
105

【感想文】ドビュッシーとラヴェル@芸術劇場4.13(前半)

先日、久しぶりに、一人でクラシック・コンサートに行ってきた。大学生の頃あたりは、かなり頻繁に様々な芸術に触れていたものだが、大学院に進んだ頃から、勉強で忙しくな…

まどろみ天使
1か月前
134

【詩】In the Morning Air of Spring

In the center of the indistinct transience Lots of winds wander through lots of my selves Gradually my consciousness was spreading over the somber blue sky I my…

まどろみ天使
1か月前
92

テツガクの小部屋16 小ソクラテス学派②

アリスティッポスはソクラテスの「よく生きよ」を「快く生きよ」という意味に解し、そこからこともあろうに極端な快楽主義を唱えた。ソクラテスの「よく生きる」は「善く生…

まどろみ天使
1か月前
105

【詩】春の下

       春の下 朦朧とした儚さの中心で いくつもの風がいくつもの私を渡り歩く 私の意識はくすんだ青空へ拡散していき やがて直立不動のまま倒れた 見開いたままの…

まどろみ天使
1か月前
156

【雑記】入院こぼれ話~後編~

前編の続き。前編はこちら↓ さて、ここからはこぼれ話。 まず、いつものジェルネイルはどうしたのか、という話。 初診の外来に行って、11時半過ぎに一旦帰り、その日の…

まどろみ天使
1か月前
87

【雑記】入院こぼれ話~前編~

以下は、ブログからの抜粋をもとにした、入院前・中・後のあれこれについてである。 発端は2月16日朝方4時くらいから、いつもの激痛が訪れたことだった。胸の下から背中ま…

まどろみ天使
1か月前
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テツガクの小部屋15 小ソクラテス学派①

小ソクラテス学派には、アンティステネスとキュニコス派、アリスティッポスとキュレネ派、エウクレスとメガラ派、パイドンとエリス・エリトリア派がある。 アンティステネ…

まどろみ天使
2か月前
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【詩】極めてプラトニックな性欲

一つの官能が手に入れたいのは その自己愛にもかかわらず 己の官能ではなく また 或るもう一つの官能でもなく ましてや一体化することでもなかった この狂気的凡人である…

まどろみ天使
2か月前
101

【詩】Off Limits

Baby doll, like always, sits on the shelf leaning against the wall with the eyes open wide. S feels a dumb gaze and turns his head towards it. S Do you want to…

まどろみ天使
2か月前
59

テツガクの小部屋14 ソクラテス③

ソクラテスの方法は対話(ディアロゴス)である。これはロゴスが二つに割れることを意味する。二つに割れたロゴスが対立しながら次第に高め合っていき、最終的にものの定義…

まどろみ天使
2か月前
91
【詩】夢のあとさき

【詩】夢のあとさき

ひとしずくの中に
果てなき夢を見る

まどろみに堕ちてゆく
儚く暗き夢の底で
自ら鳴らす鐘の音が
永遠の涙をわたしに保証した

ざわめきに溶けゆく煙と
黒白の奏に戯れて

わたしはしばし
悪魔的な動揺や
虚飾の暗算から解き放たれ

甘美な嘆息の中で
安堵の上に曖昧なほおづえをついていた

夢のあとさきに漂う
このひとしずくとわたしは
美しい合目的性によって結ばれ
その固き絆が
ほんの少しわたしを救

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【感想文】ハチャトゥリアンとショスタコーヴィチ@上野東京文化会館5.3(後半)

【感想文】ハチャトゥリアンとショスタコーヴィチ@上野東京文化会館5.3(後半)

休憩を挟んで、2曲目は、ショスタコーヴィチの交響曲第5番ニ短調。芸術劇場の時はラヴェル「ラ・ヴァルス」が主目的だったが、この日はこの曲が目的だったと言ってもいい。特に、有名な第四楽章。しかし、有名だからというよりは、小さい頃から数えきれないほど聞かされてきたから、というのが本当のところだ。私が小学生当時、父はまだオケに入っておらず(もちろん趣味で、だが)、吹奏楽団に所属していたが、胎教からしてクラ

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【感想文】ハチャトゥリアンとショスタコーヴィチ@上野東京文化会館5.3(前半)

【感想文】ハチャトゥリアンとショスタコーヴィチ@上野東京文化会館5.3(前半)

今回は上野の東京文化会館、大ホール。N響、指揮は坂入健司郎氏。
芸術劇場とはまた全く違う座席構成・座席数。私は一階席の中央から少し後ろあたりに落ち着いた。
芸術劇場の時はだいぶ空席も見えたが、この日は満員御礼だったのではないか。しかも5階席まであり、隣のご婦人方も話していたが、席と席の、前後左右の間隔が狭い。こんな状態も手伝ってか、音響は良いと聞いていたこのホールだが、私にはあまり良好とは感じられ

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テツガクの小部屋17 プラトン①

テツガクの小部屋17 プラトン①

・イデア論前半
既述のように、善・正義・勇気・美の定義は、その本性上、善それ自体、正義それ自体などを目指さずにはいない性格を有している。
プラトンもまたこういった自体的存在を想定し、それをイデアないしは形相と呼んだ。しかも彼は善・正義、美といった倫理的概念のみにそれを限定しないで、あらゆる存在・概念に関してその自体的存在、すなわちイデアを想定した。したがってプラトンによれば、善のイデア、美のイデア

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【エッセイ】感受性を殺してでも生きるべきか 

【エッセイ】感受性を殺してでも生きるべきか 

日課で新聞を取りに行く。冷たい風に当たり、私は過去に引き戻された。

抑うつなどの症状が出たのは16の時だ。原因は「記憶があふれる」。今のこの空気は1年前の何月何日、何をしている時、3年前の…4年前の…7年前の…といった具合だ。空気に限らない。音、におい、見るものなど感覚に訴えてくるものはみな対象だ。記憶は毎日積み重なってゆくから、当然、年を重ねるごと、苦しくなってくる。学校に行くにも、とにかく道

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【感想文】ドビュッシーとラヴェル@芸術劇場4.13(後半)         

【感想文】ドビュッシーとラヴェル@芸術劇場4.13(後半)         

三曲目はサン=サーンスの「ヴァイオリン協奏曲第3番ロ短調作品61」。1881年の作品。

独奏ヴァイオリンが上手だったので感動した。ヴァイオリン協奏曲というと、シベリウスのヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47も有名だが、こちらの演奏を聴きに行った際、独奏ヴァイオリンの高音が耳をつんざくようで、しばらく独奏ヴァイオリンを聴くのが嫌になったことがあるのだ。

ドビュッシーの曲(演奏)に比べると、良い意味で

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【感想文】ドビュッシーとラヴェル@芸術劇場4.13(前半)

【感想文】ドビュッシーとラヴェル@芸術劇場4.13(前半)

先日、久しぶりに、一人でクラシック・コンサートに行ってきた。大学生の頃あたりは、かなり頻繁に様々な芸術に触れていたものだが、大学院に進んだ頃から、勉強で忙しくなり、いつの間にか遠のいてしまった。クラシック音楽だけでなく、クラシックバレエ、現代バレエ、絵画展、彫刻展、演劇など、古典・前衛問わず、場所も、色々な所に行った。
最近、またクラシック音楽を聴きに行きたくなり、詳しい友達から情報を得て、一人で

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【詩】In the Morning Air of Spring

【詩】In the Morning Air of Spring

In the center of the indistinct transience
Lots of winds wander through lots of my selves
Gradually my consciousness was spreading over the somber blue sky
I myself fell down remaining upright immovab

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テツガクの小部屋16 小ソクラテス学派②

テツガクの小部屋16 小ソクラテス学派②

アリスティッポスはソクラテスの「よく生きよ」を「快く生きよ」という意味に解し、そこからこともあろうに極端な快楽主義を唱えた。ソクラテスの「よく生きる」は「善く生きる」こと、すなわち有徳に生きることを意味すると同時に「快く生きる」こと、すなわち幸福に生きることも意味している。アンティステネスは前者の面をとり、ソクラテスの命題をその方向において極端化し、徳を人生唯一の目的として快を捨てたが、アリスティ

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【詩】春の下

【詩】春の下

       春の下

朦朧とした儚さの中心で
いくつもの風がいくつもの私を渡り歩く
私の意識はくすんだ青空へ拡散していき
やがて直立不動のまま倒れた
見開いたままの瞳は 誰からも閉ざされることなく
小鳥のさえずりが 
冷えていく心を蝕み続ける
効かない薬の散らばる無菌室へ逃げ込み
今日もあの日の誓いを守るために
無機体となって闘争をやめる覚悟をする
不断の刻みに唆される静寂の中
あなたにもっと触

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【雑記】入院こぼれ話~後編~

【雑記】入院こぼれ話~後編~

前編の続き。前編はこちら↓

さて、ここからはこぼれ話。
まず、いつものジェルネイルはどうしたのか、という話。

初診の外来に行って、11時半過ぎに一旦帰り、その日の午後14時頃に入院するまでの間、家で、とにかく下着やら荷物を詰め込み、余った30分で、何とか自力で左中指だけオフした。その一本があったからこそ、パルスオキシメーターが使えたのであり、手術も可能となったのだ。ジェルネイルしていると、こう

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【雑記】入院こぼれ話~前編~

【雑記】入院こぼれ話~前編~

以下は、ブログからの抜粋をもとにした、入院前・中・後のあれこれについてである。

発端は2月16日朝方4時くらいから、いつもの激痛が訪れたことだった。胸の下から背中まで一周するように痛く、いつもひたすら脂汗を流してたえる。長くて6時間続く。3年前、渋谷のお医者さん(精神科・心療内科)で身体表現性障害と診察されたものだ。

だがこの日は痛みがひかず、予約なしで受付に頼み込んで、近くのかかりつけ女医先

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テツガクの小部屋15 小ソクラテス学派①

テツガクの小部屋15 小ソクラテス学派①

小ソクラテス学派には、アンティステネスとキュニコス派、アリスティッポスとキュレネ派、エウクレスとメガラ派、パイドンとエリス・エリトリア派がある。

アンティステネスはソクラテスの徳をもっぱら行為において追求し、極端な求道的生活を実践した。彼によれば、人生において求めるはただ徳のみであって、徳の獲得に役立つところのないものは、他の面からはどれほど価値のあるものであっても「どうでもよいもの」(アディア

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【詩】極めてプラトニックな性欲

【詩】極めてプラトニックな性欲

一つの官能が手に入れたいのは
その自己愛にもかかわらず
己の官能ではなく
また 或るもう一つの官能でもなく
ましてや一体化することでもなかった

この狂気的凡人である自己愛者は
狂気的かつ凡人であるという二つの理由により
完全に分離した二つの官能を
第三者としてそれごと手に入れるということだけを
ひたすらに欲していた

決して色あせない二つの美
永久に外気に触れることのない
一つの完璧
それはもは

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【詩】Off Limits

【詩】Off Limits

Baby doll, like always, sits on the shelf leaning against the wall with the eyes open wide.
S feels a dumb gaze and turns his head towards it.

S Do you want to converse with me?
B ……….
S Just it is s

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テツガクの小部屋14 ソクラテス③

テツガクの小部屋14 ソクラテス③

ソクラテスの方法は対話(ディアロゴス)である。これはロゴスが二つに割れることを意味する。二つに割れたロゴスが対立しながら次第に高め合っていき、最終的にものの定義にいたらんとする方法である。

彼は以下のような方法をとる。まず彼自身は無知を装い、相手に定義を与えさせる。そしてその定義を一応受け入れ、それを仮設とし、そこからさらに問い進めていく。例えば「正義とは何か」とソクラテスが問い、相手が「正義と

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