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非行

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息子の非行の日々
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2020年5月の記事一覧

私へ

私へ

なるべく淡々と書くつもりだったのに
気持ちが入りすぎて消耗したね。
いったん休憩しよう。

次男の思春期から少年院を出て働き始めたところまで書けたね。

記憶や手帳で辿りながら書いてみたけど思い出すとやっぱり泣きが入ったね…。そりゃ涙でるよね。

それにしても…どんだけあなたメモしてるの…。
次男中心の世界を生きてたんだね。

次男じゃなく早く自分のことに気づけたらよかったね。悲劇のヒロインして忙

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少年院生活の終わり

少年院生活の終わり

ついにこの日が来た。半年間の少年院生活。
社会生活の中では更生が難しいと言われた次男の矯正教育が終わる。

少年院を出たから終わりではなく、継続して保護観察はつづく。今回も前と同じ保護司が担当になり有り難かった。

次男には守らなければいけない遵守事項がある。
仕事をする、帰宅時間を守る、交通違反をしない
といった難しくない内容だった。

少年院を退院した次男は1番に散髪に行きさっぱりとした。

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祖母の面会

祖母の面会

次男の少年院での生活は続いていた。
私は書けるだけ手紙を書き、面会も欠かさなかった。

次男からの手紙には
[前略、拝啓、ご自愛ください]などの文字が強い筆圧で丁寧に書かれていて、こんなに上手に字が書けたんだなと思った。

普段使わない言葉への違和感と次男の学びを感じながら何度も読み返した。

「面会の時、駐車場に停まっているうちの車が見えました。一緒に乗って帰れたらどんなにいいかと思いま

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少年院の運動会

少年院の運動会

小学校の運動会は両祖父母も揃っていつも賑やかだった。
中学校の運動会は遠くから写真を撮っただけで終わった。
中退した高校の運動会では無視された。

少年院の運動会は未経験だ。私は1人で参加した。 写真に残すことも許されない運動会。

北朝鮮の軍隊のように揃った動きで出てきた子どもたちを見た瞬間、涙があふれた。
金髪で暴言を吐きまくっていた子がどうやったらこんなふうになるんだろ

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少年院へ

少年院へ

少年院。
社会生活の中では更生が難しいと判断された子どもたちが行く矯正施設。罰ではなく更生するための教育を受けることを目的としている。

家庭裁判所での審判で次男は県外の少年院へ行くことが決まった。

自宅から遠く離れた静かな場所だった。

はじめて面会に行った日。
大きな建物の中は静かだった。
入り口には卒院生の絵などが飾られている。
独特の雰囲気がある。

我が子に会うために身分証

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イライラを撒き散らす

イライラを撒き散らす

一人暮らしを始めた次男がどのように暮らしていたかは分からない。
寮の近くをわざと通り、干されている洗濯物から生活を想像するしかなかった。

夫は次男のことに触れなかった。

自分が追い出したという責任を感じてないわけではなかったと思うが、夫の心もかたくなだった。

以前被害届を出された事件について家裁から呼び出しの手紙が届いた。

保護司の助言もあり、事件についてしっかり反省し、真

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親子が別々に暮らすということ

親子が別々に暮らすということ

未成年の息子を追い出す夫。
そうなってしまうほど夫も限界だった。

保護観察ということもあり、親の関わりや接し方についてやんわりではあるが助言のようなものもされる。

時には面識のない市の担当の人に子育てについて柔らかく遠回しに言葉をかけられることもある。
過敏になっている夫の心はもう閉じていた。

もう誰かに何か言われることを拒否していた。

親子は一緒に暮らした方がいいのかもしれない。

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怒り

怒り

ピリついた毎日だった。

保護観察中の分際で、遅くまで帰らないこと、仕事に寝坊すること、次男の態度の悪さに夫はイライラしていた。

「やりたいことをやるなら筋を通せ」という夫のまっすぐ過ぎる正論は正しかった。

そして正論では伝わらないことが山ほどあり、言葉でねじ伏せても効果はないように感じた。

次男はあまりしゃべらなかった。
というより、話してもどうせ聞いてもらえないことを感じ

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15歳で社会に出る

15歳で社会に出る

次男は知人の会社で働き始めた。

肉体労働はきつかったと思うが丈夫な身体を生かして働いた。

大人の中で働くことで自分も大人になったような嬉しい気持ちだったのかもしれない。

実年齢より上に見られることを嬉しがっていた。

鏡の前で腰袋を装着し工具を入れたり出したりしていた。

新しいランドセルが届いた時も鏡の前で嬉しそうに、からったり下ろしたりしていたなと思う。

嬉しい時に

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入学と退学

入学と退学

次男は高校に入学した。

制服のブレザーを着崩して少しだけ大人っぽい雰囲気に見えた。

勉強を頑張って欲しいとか、部活で活躍して欲しいとか、どんなところに勤めて欲しいとか、何もなかった。

ただ青春を過ごして欲しかった。

満開になった桜を背にして学校へ行く次男をベランダから見送った。 自転車で学校へ行く。

ただそれだけのことが私には充分すぎる景色だった。

入学してひと

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審判の日

審判の日

たった1人の次男のために。

夫、私、夫の両親、私の両親が次男の未来を祈っていた。

家庭裁判所の小さな部屋で夫と私の間に次男が座る。

裁判官は私と同い年くらいだろうか。

細くて白くて無表情な男性だった。

いろんなやりとりの流れはもう忘れてしまった。

覚えていることは2つだけ。

「今後どのように子どもと関わって行きたいと思いますか。」と裁判官は夫に聞いた。

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はじめての鑑別所

はじめての鑑別所

鑑別所がどんな所なのか知っている人はどのくらいいるのだろう。

鑑別所というのは、罰を与える場所ではなく文字通り子どもの心身を鑑別するところだった。

どんな事件を起こしたかということの調査もされるが、本人の資質や経歴、育った環境などを専門家が詳しく調べていくような施設だ。

親は家庭裁判所へ呼ばれ調査をされる。
小さい時にはどんな子どもだったか、祖父母との関わりなどにも遡り、家族構成、育

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警察が来た

警察が来た

同級生は受験勉強の追い込み時期だがうちには無関係だった。

ある日次男は先生にタバコを注意された。
押し問答で先生の手をつかみ、先生は病院へ行き診断書をもらってきた。

今はそういう時代になったのだ。
体罰も禁止だし生徒から先生への暴力もきちんと対処される。

また別の日にも先生からタバコの臭いを咎められる。

いつもの押し問答の末、次男は先生の服を引っ張っぱったところ先生の首が締

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次男の家出

次男の家出

中学3年生というのは想像以上にストレスを抱えているのだろう。

不安や焦りを言葉で言わないからといって次男が何も感じていないわけではなかったはずなのに。

夫は次男と2人で山登りに行った。

次男にすれば会話も弾まない気まずいだけの山登りだったかもしれない。
2人は山に登り弁当を食べて帰ってきた。

次男との関係を親自身も模索していた。

それでも学校からの電話は続いた。

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