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非行

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息子の非行の日々
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最近のこと

最近のこと

また春が来た。
私は2年間の学生生活を終え、無事に保育士資格を取得した。
子どもたちが愛されて成長してほしい。
お母さんが幸せでいてほしい。
どの子もどの親もかけがいのない数年を大切に生きられるようにと思う。

その後の次男はというと。
幸せに暮らしたり、不安定になったりを繰り返している。
誰もが幸せに暮らしたいはずなのに、
次男は自分を傷つけ、人を傷つけ、大事なものを手放すような暮らしをしてしま

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ピカピカ

ピカピカ

むかしむかし、あるところにピカピカの可愛い男の子が産まれました。
『いいこと考えた!』が口癖の元気な男の子です。
いたずらばかり思いつく天才でよく怒られました。
少し大きくなった男の子は怒られるのが嫌になりました。
嫌だ嫌だと言っても誰も聞いてくれません。
誰も聞いてくれないから話せなくなった男の子は怒りん坊の暴れん坊になりました。
そうすると『反省しなさい』と閉じ込められて、男の子の心はどんどん

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繋がり

繋がり

次男の彼女から連絡が来た。
『赤ちゃん順調に成長しています。』
次男は緊張しながら彼女の家へ挨拶に行った。
彼女も私たちのところへ挨拶へ来てくれた。
次男を好きになってくれた小柄で可愛い女の子。
彼女のことを何も知らなくてももう大切な人に思う。
若い2人の下に産まれてくる赤ちゃん。
どんなことが好きな子なんだろう。見てもないのにもう愛していて、愛してるのに何も望んでない。
#日記 #私 #家族  

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次男からの電話

次男からの電話

次男の彼女が妊娠していることが分かった。
『お父さんには自分で話すように。』と、伝えていたが次男からはなかなか連絡がなかった。

気になりつつも次男を信じて待った。
しばらくして次男は夫に連絡をしてきた。
夫から聞いた話によると、
次男はとても不安そうだったという。
今の仕事は好きだけど、安定した仕事ではない。
彼女と子どもを養うことへの漠然とした不安。
父さん母さんは両方の親同士と仲がいいけど、

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続 久しぶりの次男のこと

続 久しぶりの次男のこと

次男の家に果物を届けた日。
次男の身体をマッサージしながら、ふと私の目に入ったもの。

テーブルの下に置かれた妊娠検査薬。

うつぶせのままの次男に聞く。

『…この妊娠検査薬なんなん。
どうしたん?彼女赤ちゃんできたん?』

『………』

『赤ちゃんできたん?』

『………』

黙っているので腰をパチパチ叩いて返事を待つ。

『…………。 …そやなぁ…できたなぁ。』

『いつ分かったん。』

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久しぶりの次男のこと

久しぶりの次男のこと

義母から果物が届いた。
私と夫では到底食べきれない量。
きっと次男のところへ持っていく口実にしなさいという優しさが含まれている。

『おばあちゃんが桃くれたけど多いから食べて』
と連絡すると素直な返事がきた。

ここぞとばかりに次男の好きな食べ物や野菜ジュースを持って行った。

力仕事をしている次男。
この信じられない暑さの中、1日中外で働く。
仕事終わりの次男は真っ赤に焼けて目の下もくぼんでいた

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私が分かったこと

私が分かったこと

やっと思い出話が終わった。
現在に追いついた。
次男が非行に走ってから巣立つまでの7年間を一気に振り返った。

次男の非行というのは分かりやすい出来事であって結局は私自身のことを知るために起きたことなのかもしれない。

自分が何を怖がり何を守ろうとしているのか。
本当の自分の本音に気づけるまでに長く時間がかかった。普段感じる感情以外の本当の本音があることにも気づいていなかった。

自分の本音に気づ

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バイバイ

バイバイ

引越しの日。
次男の荷作りはあっという間だ。 
重たい荷物をいくつも運べるようになった次男。
夫が手際よくどんどん車に詰め込んでいく。

とくに会話もないが頼もしく感じた。

あっという間に部屋は空っぽになった。
この部屋での思い出は数え切れない。

何度もベットで乱闘をした。
何度も次男の部屋で言い合いをした。
物を投げられピシャリと目の前でドアを閉められた。

狭い6畳間に友だち、彼女、祖父母

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何度目の別れになるだろう

何度目の別れになるだろう

次男が我が家から独り立ちしようとしていた。
夫から自立を促されたこともあるが本人も考えていたようだった。

夫は18で家を出て働いた。
長男も18で家を出て大学へ行った。
次男は色んなところを出たり入ったり繰り返しながら結局1番長く家にいた。

「一緒に家探しに行こうか?相談に乗るよ。」
と言ったが次男は自分であっという間に決めてきた。次男が何かを始めるときの瞬発力はすばらいものがある。決断力を見

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私の在り方

私の在り方

次男が成人を迎えてから、それをきっかけに私も自分の在り方を意識するようになっていった。

次男が非行に走ったことで母親としての罪悪感からしなくていいことまで尻拭いし、責任を取り続けた。
本人に責任を取らせなかった。
未成年だから子どもだからと逃げられる環境を作り続けた。
逃げられる最後の砦は必要だったが、次男のためではなく私の保身のために動いていたことに気づいた。

そんな私の在り方を変えたかった

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自分の本性

自分の本性

ある日次男の腕にライオンの絵が描かれていた。
とても上手な絵でライオンがガォーと吠えていた。

見た瞬間
「それ……ボールペン?」と聞いた。
次男は返事の代わりに鼻で笑った。

「ボールペン?」
「…」
「ボールペンで書いたの?」
「…」
「ボールペンやろ?」
「…笑」
「えーーーーーーーー!!!」だった。

次男はタトゥーを入れた。
私のことを見もしない次男。ライオンだけは私と目が合う。

銭湯

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子どもから大人へ

子どもから大人へ

少年院を出てから免許を取ったり取り消されたりと相変わらずな次男ももうすぐ二十歳になろうとしていた。あの頃は次男が二十歳を迎えるのを心待ちにしていた。終わりの見えない毎日から解放されたかった。

未成年のしたことは親が責任を負わなければいけないと思っていた。成人するまで私は責任を持ったという証が欲しかったのかもしれない。
二十歳までは、二十歳までは…と指折り数えるようなそんな気持ちだった。

そうし

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悲しい思い出

悲しい思い出

次男の交通違反が続いた頃からまたうまくいかない。
仕事のお弁当の有無を聞いてもちゃんと返事しない、
起きる時間を聞いてもはっきり聞こえない、
夕食の有無を聞いても黙っている、
おはよう、おかえり、おやすみを言ってもすべて無視。

肉体労働でしんどいのかもしれないが目に余る勝手さだった。返事がないなら作らない、起こさない、を宣言し貫けばよかった。

あの頃の私には毅然とした態度が足りなかった。
こう

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理解できない

理解できない

次男は仕事へ行き休みの日は一日中遊んだ。
そしてある日ポストに手紙が届いた。
次男宛の手紙が届くときはいつも胸がぎゅっとなる。

次男がスピード違反をしてオービスに写真を撮られたことを伝える内容だった。
60キロのところを90キロ出していたようで即免停になった。

大きな道路でスピードが出てしまうのは多少理解できるが、免許とりたての初心者が一般道路でこのスピードを出せるのが信じられなかった。

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